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推しを推す前につながりたい #2


和:「はあっ…遅れた…」


今日は高校の入学式。


私は憧れの乃木高に進学する。


なんで憧れたかっていうと…

ズバリ、弓道部があったから。


私の地元の高校は規模が小さく、

弓道部もなかった。


弓道は未経験だけど、

自分の名前に「和」がある以上、

人生で一度は日本の武道に触れてみたかった。

…こんなシンプルな理由。


そんなこんなで昨日からワクワクしてたら、

寝過ごしてしまった…初日なのに。


和:「もう○○、とっくに駅で
待ってるよなあ…」


幼なじみの○○も、

私と同じく乃木高へ進んだ。

志望校が同じだと知ったときは...


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和:「○○ってさー、もう志望校って
決まってる?」

○○:「なんとなく...乃木高にしようかな...」

和:「へぇ、意外かも。
ここから電車で30分かかるからさ、
通うの大変じゃない...?朝起きれるの...?笑」

○○:「これから頑張るの...!
特に将来やりたいことも決まってないし、
選択肢を広げるためにも、
自分に合ってるかなって...」

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自分で言うのも何だが、

乃木高はまあまあ偏差値が高いこともあり、

賢い○○が狙ってた理由にも納得した。


地元から少し離れるから、

中学の友達はほとんどいない。

不安だけど…○○がいるし、きっと大丈夫。


和:「あっ……いた!」



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○○:「すごい息上がってるじゃん…
大丈夫?」


和:「うん、なんとか…笑 遅れてごめんね」


○○:「いいよいいよ。…じゃあ行きますか」


和とは二週間ぶりの再会。

が、ゆっくりしてる時間もないので、

階段を駆け上がり、

僕らは電車に乗り込んだ。


この辺はド田舎ってほどではないが、

大都会には遠く及ばないので、

これから三年間、毎日座席に座れるだろう。


...ってか一周目もそうだった。



和:「ん…?なんかついてる?」


○○:「いや、髪型が……
おでこ出したんだね」


和:「そうなの…。似合ってない…?」


○○:「いや、似合ってるよ…。
あっ、もしや高校デビューってやつですか?」


和:「もぉ、バカにしてる?
結構気合い入れてきたのに…」


○○:「ごめんごめん笑」



…とまあこのように、

和とは普通に仲が良いと、勝手に思っている。


…これが一周目との大きな違いである。



前回も今回も、僕の性格に違いはなかった。

積極的に喋るのが苦手で、

いつも静かなタイプ…


だけど今回は、一周目での反省を活かし、

色んな人と会話をして、

コミュニケーションに強くなろうと

努力した…自分なりに。


その結果、前回より友達はそこそこ増えた。


でも男友達だけじゃなく、

女性とも仲良くなりたいじゃないですか…

本音は。


というわけで、和と仲良くなっちゃいました。

ごめんね和、こんな人間で…




…失礼。


もともと幼なじみではあったので、

一周目も小3の頃までは仲が良かったのだが...


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(一周目)

男1:「なぁ、○○」

○○:「どした?」

男1:「和のやつ、最近急に
キレイになったよな。同い年とは思えない」

○○:「確かに。女子にも人気だし、
なんか声かけづらいな...。
住んでる世界が違うのかな」

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彼女が10歳を超えたあたりから、

眩しすぎるオーラが出てきて、

小心者の僕は話しかけられなくなり、

遊びに誘うこともできなくなったのだ。


…けど、今回はうまくいきました。


…やったぁ。



とは言え、もちろんいいことばかりではない。


中学時代、僕が和と話していると、

男子の目線が怖いほど集まってたような…


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和:「○○〜。この後予定ある?」

○○:「なんもない」

和:「じゃ、一緒に帰ろ〜。
駐輪場で待ってるね」

○○:「あと5分くらいかかるかも」

和:「少しは急いでよ...?
10分経ったら先帰っちゃうからね」

○○:「はいはい...
(どうせ待ってるくせに...)」


(和、教室から出た後)


男2:「おい、なんであいつなんかが
和ちゃんと...?
いつものクールな感じと違って、
○○といるといつも笑顔だし」

男3:「腑に落ちないよな。
○○地味なやつだし、
俺たちといた方が絶対楽しいのによ...」

○○:「...」

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もう、記憶から消そうとしています。


嫌なことは忘れる。

これは一周目と変わらない、

僕のダメなところの一つ。



もちろん、アルノのことも忘れていない。

今のうちに、

一周目の記憶を駆使して彼女とつながり、

将来の炎上から守る。


つながる方法はまだ固まってはいないが…

この15年間、着々と考えてはいる。


和:「…。○○…?」


○○:「…はっ。 ごめん、どうした?」


和:「次の駅で降りるんだっけ?」


○○:「確かもう一個先だった気がする」


和:「あ、そうだった、ありがと。
やっぱ○○は頼りになるなぁ…」


○○:「そ、そんなことないって…///」


僕の陰キャな部分が惜しみなく出ている間に、

電車は最寄りの一つ前の駅につき、


ドアが開く…



○○:「もうすぐだ……あれ?!」




あの短髪の女の子は……?!




??:「...わかる〜。
テレサってホントよく食べるよね〜」




乗車口には、どこかの制服をまとい、

友達と仲良く話している、

まだ世間にも見つかっていない、

中西アルノの姿が…




アルノ:「…ん、おすすめの映画?
そうだなぁ…ホラーでもいい?」




#3に続く