見出し画像

東南アジア麺食文化を写真と実食で…伊勢うどんと食べ比べも

これまで、東南アジアというくくりで麺文化を考えたことはあまりなかった。巨大な麺文化圏の中国に隠れて目立たない、という「めん」もある。だが、よくよく考えると、現地を旅行してみればすぐわかるように、ここは麺食の王国であり、「米麺が多い」という、地域を貫く共通の特徴もある。「東南アジアの麺」というカテゴリーが、はっきり存在しているような気がしてきた。

と、そんな風に思ったのも、最近、「東南アジアご当地麺紀行」というタイトルの写真展を訪ねたから。撮影した青木ゆり子さんは、e-food.jpという世界の料理紹介サイトの運営者であり、料理研究家でもある。日本とアセアン(東南アジア諸国連合)の友好協力50周年を記念して企画したのだそうだ。

アセアン加盟10か国の、それぞれに特色のある麺が豊富な写真で紹介されていて、ながめているだけで食欲がわいてくる。青木さんにいろいろ解説してもらっていると、むかし、タイやミャンマーやカンボジアでよく味わった麺が無性に恋しくなった。その時、東南アジアの麺が食べられるイベントが近く、このギャラリーである、と青木さんから聞いて、即座に参加する、と答えた。

東南アジア各国の麺がずらり

8月18日開催の「ベトナム・ホイアンのご当地麺『カオラウ』&スペシャルティ・コーヒーを味わう会」というイベント。おととい行ってきた。どんな会だったか、覚えている範囲でリポートしてみたい。

ベトナムご当地麺を味わうイベント
カオラウとは?

伊勢うどん起源説

一見、ベトナム中部ホイアンのご当地麺を食べるイベント。しかし、もう一人の主役が、日本の伊勢うどんだった。ホイアンには江戸時代、日本人町があり、そこの長が、伊勢商人・角屋七郎兵衛で、この人物がホイアンに伊勢うどんを持ち込んだのではないか、というのだ。「伊勢うどん・カオラウ起源説」は、日本人にとって夢のある話だ。

イベントは、青木さんが作るカオラウの試食で始まった。具材は、八角風味の五香粉が入ったチャーシュー、ワンタン揚げ、パクチー、ライムなど。カオラウに使う米麺の入手が難しく、日本で買える風味の似たグルテンフリーの米粉うどんで代用。

青木さん製カオラウ

やはり米で作るワンタン揚げは、日本で市販の小麦のものを使ったそうだ。タレはチャーシューの煮汁。カオラウ自体、食べるのが初めてだったのだが、八角とライムがいかにも東南アジアらしい感じ。
次に、伊勢うどんの試食。本場の三重県伊勢市に行ったことはあるものの、食べたことはなかった。伊勢市出身の青木さんの知人が帰省のついでに買ってきてくれたもので、老舗の「まめや」製。たまり醤油で作るタレをかけて、ネギと一緒に食べる。

まめや(伊勢市)の伊勢うどん

まさに讃岐うどんとは対極のもので、ふわふわした感じの食感に驚くが、なめらかな舌ざわりは独特。相当な時間をかけて作り出された料理という気がした。しいてあげれば、イタリア料理のニョッキに似ていなくもない、という感想。

カオラウの盛り付けの様子

伊勢うどんはコシの弱い小麦麺でカオラウはコシの強い米麺という違いがあるが、太麺であることと、タレの濃さに共通点があるそうだ。確かに、イベントで食べた二つの麺でもそうした共通性が実感できた。

70%の類似性?

二つの類似性については、デイリーポータルというサイトが8年前に、ホイアンでベトナム人の若者に試食とインタビューを試みている。

それによると、試食した2人は、似ている程度を「70%」と答えたそうだ。一人は、「見た目とダシは似ているが、伊勢うどんは柔らかい」「カオラウの麺は一日干すので固さが全然違う」といったコメントもあったという。

ベトナムコーヒーと緑豆菓子

麺2種の試食後は、コーヒー。これもベトナム産でロブスタ種という豆を使用。東京・町田で自家焙煎珈琲を販売する「エモ珈琲」の鳥川健さんが会場でいれてくれた。一緒に、青木さんが作ったベトナム菓子「バイン・ダウ・サイン」もいただいた。

ベトナム菓子「バイン・ダウ・サイン」

ベトナムでは緑豆の粉末を使うが、今回は緑豆のマッシュを使用したそう。黄色は、香料として入れたサフラン。日本のお菓子にたとえるなら芋ようかん、外国のものなら、以前、インド料理店で食べた「ハルヴァ」といった感じだった。

食事とコーヒーの後、青木さんが資料をプロジェクターに映しながらのプレゼン。ホイアンの観光や、行き方などについても教えてくれた。約15人の参加者からはいろいろな質問も飛び出し、ホイアンの魅力に引き込まれていたようだった。
ちなみに会場では、私が参加した8月18日のベトナム・カオラウのほか、8月12日には「ラオス・モン族と麺トークby比呂啓さん」、8月19日には、「サラワク・ラクサ&ボルネオの味覚を楽しむ会」という実食イベントも開かれた。写真展は8月26日まで。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょう?

写真展のポスター

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?