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お冷はお客さんとの架け橋〜セルフにしない理由〜

一人でお店を切り盛りしているので、注文が重なっていて忙しい時にお客さんから「お水くださーい」と言われたら焦ってしまう。

「すみません!すぐ伺いますので少々お待ちくださーい!」と忙しく言ってしまうので、まだまだ修行が足らないなぁ〜といつも思う。もっと堂々とした余裕のある紳士なカフェ店員でありたいものです。


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今まで色んな飲食店を見てきましたが、お店によってそれぞれ違ったスタイルがあります。

よくあるのが入店して席に案内されてからテーブルでオーダーしてもらい帰りにお会計をするのが特にレストランや喫茶店などではよくあるスタイルですが、入店して席につく前にレジ前で注文して先にお会計を済ませておくお店もあります。

実はオープン当初はこの入店してすぐオーダーというスタイルでしたが、3年目ぐらいから前者のスタイルに切り替わりました。

後者のように先にお会計を済ませておけば確かにお客さんの自由なタイミングで自由にお店を出ることができるので、気を使わなくても良かったと言えば良かったのですが、後でお会計のスタイルにした理由はお客さんにゆっくりとメニューを選んでもらえるようにする為です。

すぐにメニューを決められる人はいいのですが、なかなか決められないお客さんもいると思います。次のお客さんが来店して、タイミングが悪ければさらに次のお客さんが来店してくる事によりレジ前でお客さん渋滞が発生してしまうのです。

そうなると、まだメニューを決められていないお客さんを焦らせてしまって、適当に自分の意としていないメニューを選んでしまう可能性もあるのではないかと勝手に想像してしまい、勝手に申し訳なく思ってしまって途中から先にお席に案内して、帰りにお会計するスタイルに切り替えたました。

ゆっくりと時間が流れてゆったりと過ごせる空間を目指しているのに、これではダメだと考え直したのです。

さらに、先にお会計を済ませておくスタイルだと、忙しい時にお客さんが帰っていったことに気付かない時がありました。「ありがとうございました」と言えなかったりしたことも気がかりだったのもあります。

今のスタイルでは店内ご利用後にお会計をしている時に「美味しかったです」「ゆっくりできました」などと声をかけてもらえたりして単純に嬉しいです。

そうです、今のスタイルはお客さんとのコミュニケーションを増やせるというのが最大の目的かもしれません。


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さて、営業中、お会計時以外にもう一つ自然にお客さんとコミュニケーションが取れる仕掛けがあります。

それは、「お冷」です。

お冷大作戦です、はい。


他のお店ではお冷はセルフにしているところもあり、何回かうちもお冷だけセルフにしようかなと考えたこともありました。その理由は、冒頭の話のような事がなくなるからです。

しかし、お冷は“隙”を作るチャンスではないかと思い、今でも変わらずお店側が持っていったり注いだりしています。

その“隙”とはなんぞや。

まず第一に、お水を注ぎ足しにいった際に、お客さんの進捗状況を確認することができます。

例えば食事をしていて、その残り具合を見て次に出すドリンクとスイーツの準備をする事ができます。すでに食べ終わっていれば、お皿を下げる事もできます。席によってどれだけ食べたか判断つかないこともあり、ジロジロと確認しに行くのもお客さんを不快にさせてしまうのではないかと思い、お水を注ぎ足しに行くのなら自然な行為だから良いのではないかと考えたのです。

また、珈琲を飲んでいるお客さんにも、もう飲み終わっていたら「おかわりどうですか?」などと声をかけられる。


そして第二に、お客さんに話しかけてもらえるチャンスを与えることができる。

お客さんにも色んなタイプがいて、お店に来てくれるのには様々な理由があります。

ただゆっくり一人の時間を過ごしたい人、読書だけを楽しみたい人、友達同士で来て喋りたい人。

そんな中、他人と接したい人もいるはずです。

ちょっとでも良いから軽く他人と言葉を交わしたい、話したいという人。

例えば、カフェに興味があって、カフェのことについて聞きたい人、古民家に興味があって「この建物は築何年ですか?」などと聞いてくる人も今まで何人もいました。


このように、お客さんが僕の“隙”をついて話しかけるチャンスを意図的にしかも自然に作り出せるのです。


基本的に、お客さん自身に自分の時間を大切にゆっくりと過ごしてもらうために、こちらから私的な話をしないなど干渉しないようにしているのですが、あくまでもお店なので必要最低限のサービスは心がけないといけません。時にはお声をかけざるおえない場合もあるのですが、お店側からお客さんを誘導しない(誘導しているように見えない自然な形で)、お客さん主体でこの時間を過ごせるお店でありたい。


僕のお店にとってお冷はお客さんとお店の架け橋になってくれる、最低限のサービスを補助してくれる仕掛けなのです。




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