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世界遺産条約と委員会

世界遺産とは、1972年に第17回UNESCO総会(萩原徹が議長を務めた)で採択された「世界遺産条約(世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約)」に基づき「世界遺産リスト」に記載されている、「顕著な普遍的価値:Outstanding Universal Value」を有する自然や生態系保存地域、記念建造物、遺跡である。 1978年に最初の世界遺産12件が世界遺産リストに記載されて以来、2014年にボツワナ共和国の「オカバンゴ・デルタ」が1000件目の世界遺産に、2024年

    • 日本の政治の基本

      なんとなく、政治の仕組みについて復習したい気分になりました。 政治の基本原則三権分立 - 司法・立法・政治が分立することにより、各々が各々の機能を監視し、権利が一箇所に集中しないようにするために制定されている。 1. 立法権:国会 - 憲法第41条によって「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」と定められています。国の法律や予算を定めたり、外国と結んだ条約を承認する機能を持つ。衆議院と参議院に分けられる。 2. 行政権:内閣 - 国会で決められた法律や予算に基づ

      • バイオベンチャー起業の教科書

        バイオベンチャーとは何か、普通の製薬企業とは何が違うのか、について記載します。この記事は主に下記の本を参照していますので、より深く知りたい方は購入されることをお勧め致します。 ベンチャーとは何か起業をする際、基本的に2つのビジネスモデルがあります。一つは「スタートアップ」もう一つは「スモールビジネス」です。日本で言うベンチャー企業とは実は和製英語であり、ここでいうベンチャーとは英語で言うスタートアップになりますが、日本ではベンチャーという言葉が確立している為以下の記載では簡

        • 総損失額$6.5B超、世界初siRNA薬を開発したリーディングカンパニーの財務背景

          バイオベンチャーは一般的なベンチャー企業と異なり、営業利益を生み出すまでには何十年もの年月と何十億という、膨大な先行投資が必要となる。と、言葉で言うのは簡単だが実際にその言葉の意味を外から理解するのは難しい。と言うことで、実在する企業の例をとりその会社が立ち上げから現在に至るまでのビジネス戦略を推考してみる。 今回は特にAlnylam® Pharmaceuticalsを対象としてみた。 Alnylam社概要Alnylam社はRNAi技術を用いた医薬品開発を行うリーディングカ

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        記事

          核酸医薬品とゲノム編集技術

          近年新たに拡大している核酸医薬品・ゲノム編集技術についてまとめる。まず前提として、この2つの用語と混同されやすい遺伝子治療との違いについて明確にしたい。 遺伝子治療とは:遺伝子を標的とした治療の総称を表す。代表的なものとしては2つの手法があり、1つ目は核酸医薬品等を用いることで体内に外部から遺伝子を導入する手法(in vivo)、2つ目は体外において細胞内で遺伝子改変を行いそれを体内に移植する手法(ex vivo)である。現状具体的にどのような医薬品・治療が遺伝子治療にあたる

          核酸医薬品とゲノム編集技術

          アルツハイマー病治療薬開発の現状

          アルツハイマー病治療薬の開発はこれまで2つの側面から非常に大きな注目を集めてきました。 世界中に非常に多くの患者が存在し膨大な市場を抱えているにも関わらず過去20年に渡り新規治療薬が承認に至らなかった(アデュヘルム以前) アミロイド仮説を主軸とした様々な疾患治療薬の開発が行われてきたにも関わらず既存の抗アミロイド薬がことごとく失敗を重ねてきた 2021年6月にBiogen社のアデュヘルム(Aducanumab)に対しFDAが条件付き承認を出したことは大きな話題となりまし

          アルツハイマー病治療薬開発の現状

          医薬品開発のステップと課題

          医薬品が開発され消費者まで届く流れについて、各ステップについての概要と課題についてまとめます。 *この記事はあくまでも一個人の私見に基づいて記載しています。 基礎研究基礎研究と一口に言えど、その目的・手法など様々なものが含まれるが、文部科学省の定義によると「個別具体的な応用、用途を直接的な目標とすることなく、仮説や理論を形成するため又は現象や観察可能な事実に関して新しい知識を得るために行われる理論的又は実験的研究」と記載されている。 生命科学分野で言えば、何かの現象を解明す

          医薬品開発のステップと課題

          IVHQ Ghana: Medical volunteer program

          In May 2023, I participated in the IVHQ Ghana Medical program for two weeks, which proved to be a wonderful, dense, and eye-opening experience. As a physician from Japan, I joined a team that included two experienced registered nurses from

          IVHQ Ghana: Medical volunteer program

          ガーナ2:Medical volunteer詳細

          2023年5月の2週間、IVHQ GhanaのMedical programに参加してきました。なかなか貴重な経験をしたので、下記に概要をまとめます。 IVHQ詳細: https://www.volunteerhq.org 1. プログラム概要今回参加したのはIVHQ GhanaのMedical programです。ガーナの首都アクラから車で3時間程の場所にあるVolta riverの周辺はVolta regionと呼ばれ、ガーナの中でも比較的歴史があり、ガーナ全土をカバー

          ガーナ2:Medical volunteer詳細

          ガーナ1: 国の概要

          ガーナについての基本情報等を下記にまとめます。2023年5月時点での情報です。 アフリカというと、貧しい・紛争 というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、ガーナもといアフリカはもはや決して貧しい国ではありません。報道や雑誌等では人目を引くため貧困地域の写真が掲載されがちで、そのようなイメージが先行していますが、ガーナの首都アクラにおいては舗装された道路と近代的なショッピングモールもあり、レストランでは日本とさほど変わらない値段で料理が提供されています。ガーナ

          ガーナ1: 国の概要

          なぜ動物を用いて実験をするのか

          ネズミを用いた神経科学の研究をしていると、こんな質問をされることがあります。 「動物の脳を研究して意味があるの?」 神経科学の研究には、多くのモデル動物が使用されます。代表的な種としては、ヒト、サル、ラット、ネズミ、ゼブラフィッシュ、ハエ、線虫などがあり、こういった疑問は主に、研究に携わったことがないか、ヒトを使った研究をしている人が思うことであろうと思います。ヒトにおける研究で、”ファンシー”と思われがちな手法として、fMRI(functional magnetic r

          なぜ動物を用いて実験をするのか