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気をつけろ! その怪異はディープフェイクを使う!(レビュー:『ベイビー・キャッチャー』)

オススメ度:★★★☆☆

赤ん坊を連れ去る魔女の呪い。逃れる方法は、生贄を差し出すのみ-。「グレイヴ・エンカウンターズ」のクリエイターが放つ発狂必至ショッキング・ホラー!!人間の赤ん坊を連れ去る、恐ろしい魔女“ラマシュトゥ”。我が子を狙う“その声”を聴いてしまった、母親のメアリー。呪縛から解放される、唯一かつ禁断の方法。母の愛は尊く、そして残酷なのか-。わたしの赤ちゃんを返して-。各国映画祭を戦慄させた衝撃の結末!!

https://twitter.com/cagamiincage/status/1764029213374664716


 本作だが、ホラーとしての出来は良いと思うが、個人的にはあまり好きな作品ではない。終わり方がじめっとしているのだ。いや、それはホラーとしては一つの手法ではあるし、その方向性としては大変によくできているのだが、私はスカッとした終わり方が好きなのだ……。

 例えば、私の大好きな映画『貞子vs伽椰子』のラストは極めて絶望的だが、しかし、スカッとしている。アッパー絶望とでも言うべきラストだ。「よっしゃ! 人類絶滅!」「やったぜ!」とガッツポーズしたくなる絶望感だ。それに対して本作は「は~、もうやっとれんわ~」とガックリ肩を落とす感じのダウナー絶望である。

 さて、本作の怪異だが、これが非常に戦術的だ。ごく僅かな幻聴で夫婦間の信頼関係を崩そうとするなど、ちょっとした怪奇現象により最大の悲劇効果を生むように効果的に怪奇現象を繰り出してくる。省エネ怪異、コスパ重視怪異とでも言おうか。さらに特徴的なのはディープフェイクを用いてくることで、怪異は証拠映像すら捻じ曲げるのだ。

「昨今の怪異にはITリテラシーが求められる」と言われて久しいが、本作の怪異もかなり最新テクノロジーに精通している。人類社会が開発する新しいテクノロジーに即座に対応し、どうすればそれを活用して生者に恐怖を与えられるか怪異側も日々勉強して精進せねばならない。きっと意識の高い怪異たちは勉強会とか開いている。フレディなどは「未だに夢とか使ってるロートルwww」と馬鹿にされていることだろう。

 閑話休題。本作では「子供をさらう悪魔」が脅威として登場する。主人公である母親は悪魔の声を聞き、悪魔から子供を守ろうとする。突然に窓ガラスが割れるし、勝手に鍵が閉まって開かなくなる。子供を守ろうと悪戦苦闘するが誰からも信じてもらえず、セラピーを受けることになる。カメラに残された証拠は怪異により改竄され、まるで母親が子供を殺そうとしているかのように偽装される。そして、母親は子供を守る最後の手段として(以下ネタバレ)

 隣家の赤ちゃんを代わりに手に掛けようとして、それを警官に射殺される。本作はそういった悲劇で終わるのだが……。

 この映画の問題点というか、冒頭で書いた「私好みでない」点なのだが、どうやら本作は

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