どうしてラインは素敵なの?
部屋に積まれた楽譜の山を整理していると、数年前に編曲した楽譜が出てきました。
《Warum ist es am Rhein so schön》というドイツの民謡。ある舞台のアンコールの楽曲として編曲したものでした。
編曲していた当時は考えられないぐらいの案件を抱えていたため、「2〜3番くらいまで編曲してね!」と言われて何も気にすることなく、というか忙しすぎて考える暇もなく編曲したのですが、改めて調べてみるとこの曲の歌詞は17番くらいまであるそうです。
ところで、《Warum ist es am Rhein so schön》というタイトルを日本語にすると「どうしてライン川沿いはこんなに素敵なの?」となります。そのうちの3番までを翻訳してみると次のような内容です。
《Warum ist es am Rhein so schön》についてもう少し調べてみると、曲の説明の中に「Trinklieder」と書かれていました。「Trinklieder」とは「飲み屋の曲」といった意味。居酒屋でみんなで楽しく歌うようなイメージなのでしょうか。
さらに、「ハイノ」という歌手が歌っている録音が見つかりました。この歌手のことは知らなかったのですが、バリトンのいい声で歌っています。全体的に古き良き時代といった感じです。
ちなみにライン川はドイツの西側に縦に流れている大きな川で、デュッセルドルフやケルンなどの町に流れています。よく「父なるライン」と呼ばれて、ドイツの精神的な故郷のように語られることもあります。
私自身はドイツに滞在していた頃に住んでいたのは東ドイツであったため、ライン川が流れる町には旅行でしか行ったことがありません。その地方には2回行きました。1回目は大学院の修了試験が終わって、卒業式に出る代わりに初めての海外旅行としてドイツを一周した時。2回目はライプツィヒに住んでいた頃に気分転換で行った時。
ライプツィヒに住んでいる頃、ホームシックを感じてデュッセルドルフに行ったのです。「どうしてデュッセルドルフ?」と思う方もいるかもしれない。デュッセルドルフには「リトル・トーキョー」と呼ばれている地区があって、そこには日系の企業やレストランがたくさんあります。というか、町を歩いているともれなく日本人らしき人々に出くわすので、日本に戻ってきたんじゃないかと思ってしまいます。日本に戻るためには多くのお金が必要なため、少しでも日本を感じたいと思ってデュッセルドルフに行ったわけです。
リトル・トーキョーとは言っても、現代の東京ではありません。タイムカプセルのように、ある時期の日本が切り取られて異国の中で保存されているような印象を受けたことを覚えています。デュッセルドルフでは桜を見ることもできました。ひらひらと咲く桜。そこから受けるノスタルジーに近い、そんな印象。
そして、この旅の中でライン川にも寄りました。ゆったりと流れているライン川を眺めながら、いろいろと感じるものがありました。
私には実感がないけれどドイツのいくつかの人はライン川にノスタルジーのようなものを感じるのかもしれない。同じように、他の人には実感がないだろうけどデュッセルドルフの桜の風景から私が感じたノスタルジーのようなもの。
そんなお互いのノスタルジーの姿を少しだけでも共有することで、社会のこととか、文化のこととか、もっと身近な、近しい人同士のこととか、そんなことを少しずつ理解し合えるような気がしました。ライン川を眺めながらそう感じたデュッセルドルフへの旅は意味があったんだと思います。
「Warum ist es am Rhein so schön-どうしてライン川沿いは素敵なの?-」と問われたら、私だったらどのように答えるだろう。さまざまな思い出があるから、まだ一言で答えることはできない。また別の機会にいろいろな思い出を書きたいと思います。
そんなデュッセルドルフの思い出。今日はここまで。
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