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廃車宣告をうける@沖縄

2013年11月8日 自転車日本一周の旅 53目 沖縄

前日、縁石に勢いよく突っ込んで前輪が手前にめり込んだ。

その影響で前輪がフレームに干渉し、ハンドルが右を向いたまま動かなくなってしまった。
つまり自転車を押して歩くにも、延々と右回りをし続けて前に進まない。

仕方なく前輪を持ち上げて左斜め前に向け、半円を描きながら押して進む。
2メートルほど進んだ所でまた前輪を持ち上げ、左斜め前に向けて半円を描くことを繰り返して歩く。

荷物満載の自転車を持ち上げることを繰り返すのがとてもチマチマした重労働で苦痛だった。
「とりあえず、2km先の自転車屋さんに持ち込めば、、、」

力を振り絞ってホームセンター内にある自転車屋さんにたどり着いた。
事情を話して返ってきた答えは、
「うちじゃ直せませんね。たぶん、沖縄県内で直せる所はないと思います。」

「どうしようか、、、」

とりあえず、夜に泊めていただく事になっていた先輩の知り合い宅までどうにか辿り着こうと自転車を押す。

その方の家があると思われる所までは10km以上ある。
目的地まで前輪を持ち上げては、チマチマと半円を描きながら歩き続ける。

だがお昼が過ぎた頃には、手のひらにはマメができ、腕も足もパンパンだった。
たまらず何度目かの休憩をする。

少しずだが、チマチマと進む。
時おり自転車を放り投げたくなりながらも、チマチマと進む。

夕方6時が過ぎ、辺りも暗くなってきた。
いったい何時間半円を描いてきたのだろうか。

すると前方にオレンジ色の看板が見えた。
「バイク・自転車 販売・修理」

「バイクも自転車も扱ってるなら、フレーム修理もできるかも、、、」

店のおじさんに一縷の望みをかけてたずねてみた。
「自転車のフレームが曲がったんですけど、修理できませんか、、、」

自転車をおじさんに見せると「これはもう直らないな。新しいの買うしかないよ。」と言った。

その一言を聞いて、全身から力が抜けていくのがわかった。
旅用自転車を2ヶ月足らずというあまりにも早い期間で修理不能の廃車にしてしまった。

店を出て再び歩きはじめたのだが、もう二度と直らない自転車を押してきたのだと思うと虚しく思えてくる。

心配してくれていた先輩の知り合いのKさんから連絡をもらい、詳しい家の位置を聞くと、まだあと5kmも離れていた。
少し歩いたが結局タクシーを止め、自転車を無理やりトランクに乗せてもらいKさん宅に向かった。

家主さんが暖かく迎えてくださって、到着と同時に晩御飯も作ってくださった。
その晩にいただいた豚キムチがしみる美味しさで、うちのめされた心身にしみた。

つづく

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