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【コラム】"愛玩" で飼えなくなった特定動物⑧シンリンガラガラヘビ

"ガラガラヘビ" と一口に言っても、さまざまな亜種がいます。"東西" のダイヤモンドガラガラヘビ(Crotalus adamanteusCrotalus atrox)や、ミナミガラガラヘビ(Crotalus durissus)のようにかなり大きくなる種がいる一方、コビトガラガラヘビSistrurus miliariusのように小さな種類もいます。
また、カリフォルニアのサンタカタリナ島に住むサンタカタリナガラガラヘビCrotalus catalinensisは、ガラガラのないガラガラヘビ(もはやただのヘビ、ということになりますが笑)として知られています。

身体のサイズが大きくなる種はスピード、パワーに加え、長い牙を持っていますので、かなり危険な種だと言えます。
こうした特徴を鑑みると、イメージとしては毒牙を持ったボア、あるいはニシキヘビといったところでしょうか。

このように見ようによっては危険な種も多いガラガラヘビですが、基本的には大人しく、気の荒い個体は少ない印象です。
これはクサリヘビ全般に言えることですが、運動量は極端に少なく、先の通り動けば素早い動きができるのですが、ほとんど動きません笑
ボアやニシキヘビと比べて格段に性能の高いピットを持ち合わせていることも含め(両者は全く別の進化過程を経てピットを獲得したとされています。いわゆる "収斂" )、典型的な待ち伏せ型の毒ヘビだと言えるでしょう。

多くの亜種がいるガラガラヘビの中でも、比較的飼育がしやすく、ペット流通に乗る機会も多いのがアメリカ東部を原産とするシンリンガラガラヘビCrotalus horridusです。黒ずんだ体色とそこに配置された美しい紋様、縦に割れた瞳孔、そして強いキールのある粗目の鱗……どれも "The 毒ヘビ" という感じ、デザインセンスの高いヘビだと思います。

飼育については先に記したように "毒牙をもつニシキヘビ" というイメージがぴったりで、いくらガラガラヘビの中では比較的小さいといっても150㎝程度にまで成長する個体もいるようですし、それ相応に大きなケージが必要なのはいうまでもありません。
できれば200㎝近い横幅、奥行きも100㎝以上は欲しいですが、ガラガラヘビ全般に上下方向の動きはあまりしない印象ですので(決してできないわけではありません、アメリカに住む知人の飼育しているイワガラガラヘビCrotalus lepidus klauberiなどは器用にケージの壁面を登る様子が見られます)、高さは80㎝もあれば良いのではないかと思います。

シンリンガラガラヘビの飼育でポイントとなるのは床材で、これについては他のガラガラヘビと一線を画します。
すなわち、ナミヘビの多くと同様、枯葉かチモシーを床材として使用するのが適しています。これらを深めに敷いてあげることで、その下に潜って過ごすことが多いことでしょう。

こうした床材の選択はシンリンガラガラヘビの原産地での環境から考えると当たり前ですが、では他の種(亜種)のガラガラヘビはどうかというと全く異なります。

他のガラガラヘビではシンリンガラガラヘビとは異なり、あまり床材の中に穴を掘って潜る、といようなことはありません。
穴は掘らないのですが、一方で砂礫の中に身体を ”埋めて” 過ごすことを好む個体が多いようです。
したがって、床材に使用する素材は鉱物系や、比較的粒の小さな礫、砂などが適しています。ただし鹿沼土(細粒ならOK)のように粒が大きい素材ではうまく下に潜れないことが多いようなので、小粒の赤玉土やパーミキュライト、川砂などをブレンドしたものを使用するのが良いでしょう。

これはシンリンガラガラに限りませんが、ガラガラヘビはどの亜種でも高湿には非常に弱い傾向があります。したがって、ケージ内は常時30-40%程度に湿度を保ちますが、1カ月に1度程度はしっかりと水を撒いて一時的には高湿状態を作り出してあげることも必要なようです。
おそらくそれにより自然の環境に比較的近い "ケージ内の気候環境" を作り出してあげることができるのでしょう。

シンリンガラガラヘビだけでなく多くのガラガラヘビについて言えることですが、餌についてもボアやニシキヘビと同じような考え方が基本となります。具体的には鳥類、これにげっ歯類を補足的に与えるという考え方が良いでしょう。
例えばヒヨコやハトを餌のローテーションの軸に、サイズが大きくなってきたらウサギのほか、ラット(脂肪が多く付着している場合には切除して与える)を与えるというようなイメージです。

ちなみに彼らはかなり絶食に強く、なおかつ飼育下では先の通り極端に運動量が少なくなります。したがって給餌間隔としては成蛇では1カ月に1度以上は餌を与えないこと。これが大切です(与えても食べないケースも少なくありません)。


今回はガラガラヘビ、 中でも比較的飼育の容易なシンリンガラガラヘビを中心にご紹介して参りました。
ここまで書いておいて大変恐れ入りますが、実は僕はガラガラヘビの仲間を飼育したことはありません。知人に飼育環境を見せてもらうと同時に、飼育方法をレクチャーしてもらい原稿に起こした次第です。

彼の話しを聞くと、"コブラ党" である私も飼ってみたいなと思いました。特に、ニューメキシコ州のイワガラガラヘビはある種の鉱石のように美しいグリーンと黒、白のバンドからなる非常に素晴らしいヘビです。
イメージほど凶暴というわけでもないようですし、先日のトウブサンゴヘビ(https://note.com/calliophis/n/n4539f8345083)と同様、アメリカに移住するようなことがあれば、ぜひとも飼育に挑戦してみたいヘビの1つです。

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