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おらおらでひとりいぐも

若竹千佐子著

ずっと読みたいと思いつつ六年ほど経ってしまった
著者は史上最年長となる63歳で文藝賞を本作で受賞
読後感は爽やかであり、孫の登場で救われる

学者が、孫の面倒を見る女性は若々しく幸福度の
高い人生を送れるとかなんとか以前に言っていた

この小説を読むとまんざら嘘でもないような気が
してくるような終わり方である

伴侶の死とは人生で起こる三大ストレスの一つらしい
他の二つは何だったか忘れたが、とにかくそれまで人生を
共にしてきた人と死に別れるのは想像以上に辛いことだろう

八角山という山が出てくる 架空の山らしいが東北のどこかに
モデルとなる山があるのかもしれない 

玄冬小説を書きたかったと著者は言う たしかに、青春小説は
多いが、玄冬小説というジャンルはあまり聞いたことがない

人生を季節に例えた言葉がある
青春・朱夏・白秋・玄冬である
春・夏・秋・冬の季節を人生と年代に当てはめた考え方だ
・青春(せいしゅん)…「春」 ・朱夏(しゅか) …「夏」 ・白秋(はくしゅう)…「秋」 ・玄冬(げんとう) …「冬」
4つの言葉のうち、「青春」は文学では良く使われている 敢えて「玄冬」にフォーカスしたところが新しい

超高齢化社会が待ったなしですすむ、現代日本の人口ピラミッドはまるで八角山のようだ 上が丸い不思議な形をしている 玄冬小説が必要な老人のはずが、青春を求め続ける人も多い
若さだけに価値を置いた社会が、見た目だけはなぜか若い、いびつな老人を量産している 

だからこそ、美しく枯れていくこんな玄冬小説があってもいい
決して美しくはないと主人公は思っているかもしれないが、私から見ると
夫をあれだけ愛していたのは、美しいとしか言いようがない

方言をラップのように、ジャズのように語り、リズムに乗りながら踊る主人公が愛しい








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