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[#シロクマ文芸部]卒業の日のこと

卒業の日 優香は友達との別れを済ませ 祖母の居る老人ホームに向かった、両親は共に働いていた為小さい時から祖母の元で育てられた。 その祖母も優香が高校二年の頃から認知症がみられ今はホームに入っている。優香は 卒業証書を見せに祖母に会いに来たのだ。ドアをノックして部屋の中をうかがうと 祖母は昼食後のお昼寝の最中だった。優香は優しく「ばあちゃん」と声をかけた。祖母は薄目を開け暫く
優香を不思議そうに見ていたが目を輝かせて「さっちゃん!」と優香をよんだ。
「さっちゃん 会いたかった!いつ帰って来たんなら」そう言って優香に手を伸ばした。優香は戸惑たけれども手を伸ばすと今度はぴしゃりと 手を叩かれた「さっちゃん あんたは私に意地悪したじゃろうが 遊ぼうゆうて行ったら さっちゃん隠れて出てこんじゃった 隠れとるのはしっとたんじや」といって泣き出した。優香が困っていると スタッフの方がきてくれてばあちゃんの背中をさすりながら「違うよ お孫さんの優香さんじゃよ 分かる?」
「優香?孫…あぁ優香じゃったんか」
今度は満面の笑みを浮かべ優香を見上げた
それからは正気を取り戻し 卒業証書を見せたり 進路先の話をしたりして過ごした。
「ばあちゃん しばらく会えんようになるけど元気でいてよね」そう言葉を交わし祖母はホームの玄関に見送りに出てきてくれた。 
お互いに手を振り合っていると 急にばあちゃんが真顔になり「清美 弁当を忘れとらんか」と優香に向かって叫んだ 優香は今度は私を母とまちがえてると一瞬思ったが「弁当持ったよー」と返した。「遅刻したらいけんよ」と優香を送り出した。
優香は帰り道 小さかった頃を思い出していた 学校から帰って来ると先ずばあちゃんにしがみついて匂いを嗅いだ ご飯の炊きたての匂いがした 手作りのお菓子を作り私を待っていてくれた 昔話もよくしてくれた ただそこに居てくれるたけで良かった 
今のばあちゃんを見ると涙がにじんでくるけれど ばあちゃんは過去を行ったり来たりして案外幸せなのかもしれない 時には死んだじいちゃんが会いに来て「はるさん 久しぶりじゃの~」なんて会話しているのかと思うと可笑しくなってくる。
いつか「おじいさん お待たせしました やっとこちらに来ましたよ」と言う日が来るのだろう 優香はその日のことを思うと今から涙ぐんでしまう。

両親との夕食中 老人ホームでの話をした
「ばあちゃんねー 私のことお母さんと間違えて 清美ー!弁当持ったかーって私に叫んだのよ」
「持ったよー! っておもわず返したんよ」母はそれを聞いて 涙を流しながら笑った 一ヶ月もすれば 私もこの家を出て行く 祖母と母の顔が交錯する 私はこの卒業式の日の出来事を忘れないでおこうと思った。


始めての投稿です シロクマさんよろしくお願いします💓

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