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エフェクチュエーション実践講座⑩上手くいかない理由と対策

はじめに

 エフェクチュエーションは、現在の資源を活用して未来を創造する一連の原則に基づく思考法です。しかし、実際にこれをビジネスや新規事業に適用しようとすると、さまざまな理由で上手くいかないことがあります。

 本文では、エフェクチュエーションがうまくいかない主な理由と、それに対する具体的な対策を探っていきます。

エフェクチュエーションがうまくいかない理由

①自己の資源の認識不足

 自分が持っている資源(知識、技能、人脈など)の完全な認識が欠けていると、エフェクチュエーションの基本である「Bird in Hand Principle」を実践することができません。これは、有効な資源を見過ごしてしまう原因となります。

 例えば、ある起業家は新しいアプリ開発プロジェクトを始めたいと考えています。しかし、彼は自分のプログラミングスキルが中級レベルであること、かつての同僚がモバイルアプリ開発の専門家であることを見過ごしています。

 代わりに、外部の開発者を探し、高額な費用を支払ってしまいます。後になって、既に彼のネットワーク内に必要なスキルと経験を持つ人物がいたことに気づきますが、既に多額の資金を無駄にしてしまっていました。などが該当します。

②リスク許容度の違い

 「Affordable Loss Principle」において、個人やチームによって許容できる損失の度合いが異なるため、必要以上に保守的な行動を取ってしまうことがあります。

 例えば、ある起業家は、新しいテクノロジーを用いた環境に優しい製品を市場に出す計画を立てています。彼は自己資金で事業を始めることができ、個人的には最大$10,000の損失を許容できると考えています。

 しかし、彼は将来の不確実性を恐れ、最初の製品開発にたった$3,000しか投じないことを決定します。この結果、製品開発は資金不足のために遅れ、市場投入のチャンスを逃してしまいました。このようなケースです。

③協力の不足

  「Crazy Quilt Principle」を適切に実行するためには、他者との協力が不可欠ですが、相互の利益に基づくパートナーシップを築くことが困難な場合があります。

 例えば、あるスタートアップは、持続可能なファッションを推進する新しいプラットフォームを開発しています。

 彼らは、大手ファッションブランドとのパートナーシップを目指していましたが、そのブランドは環境への配慮よりも短期的な利益を優先していました。

 このスタートアップは、自社の持続可能なビジョンと大手ブランドのビジネスモデルの間で価値観の相違があり、協力関係を築くことが困難であると感じました。

 その結果、このスタートアップは別の小規模ながら環境に配慮したブランドとのパートナーシップを模索することにしました。このようなケースです。

④柔軟性の欠如

 「Lemonade Principle」に従って予期せぬ出来事を機会に変えるには、高い柔軟性が求められます。しかし、変化に対して柔軟に対応できない場合、有利な状況を生み出すことができません。

 例えば、あるレストランは、高級ダイニングを提供する都市の中心部に位置していました。ある時、突然の道路工事により、レストランの前の通りが数ヶ月間閉鎖されることになりました。

 レストランのオーナーはこの変化に対して非常に固執し、既存のビジネスモデルのみに頼り続けました。

 彼は、テイクアウトやデリバリーサービスの導入、オンラインでの料理教室の開催など、状況を利用するいくつかの機会を見逃しました。その結果、客足が大きく減少し、大きな収益損失を被りました。このようにことが該当します。

⑤未来創造の視点不足

 「Pilot in the Plane Principle」に基づく未来創造の姿勢が不足していると、現状維持や過去の成功モデルに固執してしまうことがあります。

 例えば、ある企業は、長年にわたり一貫して利益を生み出してきた伝統的な製造業でした。市場の変化と新しい技術の台頭に直面しても、経営陣は過去の成功モデルに固執し、製品ラインの更新やデジタル変革の必要性を無視し続けました。

 彼らは未来を自分たちの行動で形作るという「Pilot in the Plane Principle」を念頭に置くことなく、外部の変化を単なる一時的なトレンドと見なしました。

 その結果、競合他社に市場シェアを奪われ、最終的には業績が大幅に低下しました。このようなケースです。

この問題の対策として考えられるもの

 対策として以下を実施すべきです。

①自己の資源を再評価する

 自分自身やチームの持つ資源を定期的に見直し、新たな可能性を探ることが重要です。

②許容できる損失の範囲を明確にする

 事前にリスクの範囲を決め、その範囲内で積極的に新しいことに挑戦することが大切です。

③協力とパートナーシップを積極的に築く

 他の組織や個人との協力関係を積極的に模索し、共に価値を創造する機会を追求します。

④柔軟性を養う

 困難や予期せぬ出来事が発生した際には、それを新たなチャンスと捉える柔軟な思考が必要です。

⑤未来を創造する姿勢を育む

 自分の行動が未来を形作るという意識を持ち、積極的に新たな道を切り開く姿勢が求められます。


まとめ


 エフェクチュエーションは、新規事業やビジネスの革新に有効なアプローチですが、その実践には多くの挑戦が伴います。上述した理由と対策を理解し、適用することで、より効果的なエフェクチュエーションの実践が可能になるでしょう。

 成功への道は決して容易ではありませんが、これらの原則に沿って行動することで、未来を自らの手で切り拓く力を養うことができます。

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