見える力を持つ私と不良少年 鬼神と人間ポイントに支配される世界で 第一話

あらすじ
 我が国に人間ポイントカード制度ができた。これは、人間の能力や優劣をポイント化して、より、劣悪なものを排除する。そうすれば、この世の中はいい人であふれるということから作成されているらしい。 この世界は古代より鬼神と呼ばれるものに支配されているらしい。 私には殺人を犯す人がわかる。殺人を犯すであろう人のオーラが見える。 黒いオーラに包まれた同級生。百戦錬磨はこの時代、絶滅危惧種である不良だ。その男が私の友人の夏希に手紙を渡してほしいと頼んできた。代わりに代筆して交換手紙をすることになったのだが。

本文
 神話に支配される世界。この世界は鬼神と呼ばれるものに支配されているらしい。人類にとっての天敵である鬼であり、逆らうことのできない絶対的な神。その鬼神は人を食べると言われている。人食種だ。人以外のものを食べることができないわけではないが、一定期間食べないと、能力が激減するらしい。定期的に人間を摂取するために鬼神は人類へ危害を加える。そこで、協定を結ぶことにした。生贄を差し出す代わりに、人類へは危害を加えないこと。有名な神話が残っている。

 しかし、これを国は公にはしていない。あくまで想像や噂の域だ。でも、実際に最近この国で作成されたのが人間ポイントカードだ。そして、ポイントが低い人間が行方不明になっているのも事実だ。

 生贄になる者の基準は人間ポイントだ。人間の能力や優劣をポイント化して、より、劣悪なものを排除する。そうすれば、この世の中はいい人であふれる。悪い人間は体よく排除できる。そんな噂が世の中に流れている。あくまで噂だが、実際行方不明者は毎年数えきれないほどいると言われている。多分、その人たちは鬼神への生贄だろうと皆が思っている。だから、なるべく悪いことをせずいいことをして生きようと世の中は善人であふれていた。それは、人間ポイントカードというものができてからだと思う。それ以前に比べると犯罪数は格段に減少し、ボランティア活動をするものが格段に増えた。芸術やスポーツや学問で秀でた能力を持つ者は将来有望だと人間ポイントが高くなることを知った親たちは率先して、習い事や資格取得に取り組ませた。

 しかし、そんな親ばかりでもない。子供は親を選べない。私の中学校には絶滅危惧種が存在している。

 絶滅危惧種とは――絶滅の危機にある生物のことだ。一般的に絶滅の恐れがある野生生物のことを「レッドリスト」と呼ばれている。しかしながら、多分、彼らが絶滅してもこの世界に何の弊害もなく、むしろ絶滅してくれた方が治安が良くなると考える人間が多いのが実情だろう。ある意味、試合でいうレッドカードに近いことをしでかす者をレッドリストと呼んでもいいかもしれない。それが令和の時代絶滅しているはずの不良だ。しかし、そんな世の中にも未だに不良が存在しているらしい。

 絶滅危惧種と囁かれている不良。今時、ダサい、ありえない、時代錯誤と言われようと、この男は、不良という己のスタイルを確立している。ある種のこだわりを持って生きているのだろう。髪の毛は長めのぼさぼさした感じであり、制服の着こなし方は校則違反。ワイシャツの裾はスラックスの中に入れずに、スラックスに関しては裾が長く地べたについているため、裾がぼろぼろになっている。

 ため息が出るほど重い漆黒のもやに包まれた絶滅危惧種がクラスに存在している。深くて重くて息苦しい。何度か見たことはあるけれど、身近な人間にはいなかった。逆に言えば、それ以外の何かが見えるわけではない。それを見た瞬間、私は体が凍てつき凝視するが、刹那視線を逸らす。こんなに近くに漆黒人間がいたとは想定外だ。安堵とは逆の不安と恐怖に苛まれる。足のつかないプールから出られないような感じに似ている。自分の身の安全を確保できる術のない私は、漆黒のプールの中でもがき苦しむ。手を伸ばしても水面に指先すら届かない。もどかしくも焦る気持ちが沸き上がる。はじめて身近な人間に漆黒を感じた時に描いたイメージだ。

 私にだけ見える力――。漆黒の人間、薄黒の人間――。彼らは殺人者になるであろう人間だ。

 私には殺人を犯す人がわかる。未来予知とは若干違うが、殺人に特化した未来予知なのかもしれない。殺人を犯すであろう人のオーラが見える。これからするであろう人の殺気は黒色が体中に纏わりついている。

 その力に気づいたのは、幼少期に近所で殺人事件があった時だ。以前から黒色のもやに包まれた人が殺人時間を起こした。しかし、テレビやネットで見る写真や映像の殺人犯の色は見えない。でも、実際に会えば人間に纏わりつく色でわかる。

 私の同級生に漆黒を纏った男子がいる。つまり、これから殺人を犯すつもりなのだろう。命を奪う殺人者は嫌いだが、怖い。だから、ずっと見て見ぬふりをするつもりだ。名探偵のように証拠を見つけられる能力もなく、腕力で勝つ自信もない。つまり、ただの傍観者であるしかない私に無用な力だ。

 漆黒の男の名前は百戦練磨《ひゃくせんれんま》。名前の通り、狂暴で野蛮な印象が強い。性格も粗暴で制服を着崩している。今時珍しい不良のような同級生だ。鋭い目つきにいつも傷やあざだらけ。本人曰くケンカ三昧らしく、ケンカでは負けないと豪語する。ビックマウスなのかもしれないが、毎日色々な人からケンカを売られているらしい。今時ありえないような話だと思う。でも、彼ならばケンカ三昧でもおかしくはない。

 しかし、ある日事態は急変する。関わらずに卒業したい男子ナンバーワンと一気に関係が近づく日が来てしまった。この日、私は百戦錬磨という男と初めて会話をしてしまった。というより、せざるおえなかったと言ったほうがいいかもしれない。

「これ、川嶋夏希に渡してもらいたい」
 漆黒の男がまさか私に頼みごとをしてくるなんて――。ありえないと思っていた事実を目の前に私は立ち尽くしてしまった。鋭い目つきの男は、あざのある顔で丁寧に手書きした手紙を持っている。不良と手紙というアンバランスな状態に私の口は開きっぱなしだ。口調は思ったより優しいのが意外だった。

「これは……?」
「俺の想いを何日もかけて書いた。でも、直接渡す勇気がないからさ。おまえは、川嶋夏希と仲がいいだろ」
「仲はいいけれど……」
「頼む。直接渡す勇気がない」

 こんなにケンカばっかりの人でも勇気がないのか。
 少しばかり意外だった。

「わかりました」
 深くは関わらないように最低限の事務的な返事をする。

「よろしくな」
 少しばかり笑みが見えた。というか照れている? 意外だ。

 こんな凶悪そうな人に巻き込まれるなんて……困ったなぁ。
 きっと夏希は断るだろう。こんなことを頼まれるなんて。ため息が出る。
 でも、夏希を殺そうとしているのならば、私が何としてでも止めなければいけない。変な正義感が沸いてしまう。

「夏希。さっき、これを百戦錬磨君に渡されたんだけど」
「何?」
「ラブレターじゃないかな」
「はぁ? 今時、ラブレター? きもっ。断っておいて」
 怪訝そうな顔をする夏希。
 夏希は今時のおしゃれな女子で、好みの男子は優しくておしゃれで知的なタイプだ。つまり、百戦錬磨とは全く逆のタイプが好きだということだ。

 私が断るのは面倒なことに巻き込まれそうで、できるならば避けたい。
 やんわり夏希に振る。
「夏希が直接言ったほうがいいんじゃない?」
「だって、あの人、なんか怖いじゃん。断ったら何か脅されそう」
「たしかに……」

 でも、断るのが私っていうことならば、私が何かひどい言葉を投げかけられるとかキレられる可能性もなくはない。全部私に押し付けるなんて、夏希はひどい。まがりなりにも人が一生懸命書いた手紙をキモイという一言で片づけてしまうのもどうかと思ってしまった。夏希は顔立ちがきれいだから、自分から誰かに告白する機会がなかったのだろう。たしかに、今時手紙は引くだろうと思うけれど、百戦錬磨の感覚が少しばかりズレているのかもしれない。恋愛には疎そうだ。

「じゃあ、彼氏と会うから」
 何事もなかったように夏希は帰宅する。
 夏希は最近、他校のイケメン男子と付き合うことになった。彼氏がいる。断る理由は充分だ。夏希には逆らえない。私自身この学校に他に仲のいい女子がいないからだ。夏希を通して女友達と繋がっているだけの関係だ。多分、今、家庭の事情と成績が低いことがあって、人間ポイントがかなり低い。ポイントが低い者は相手にされない。というより元々人と接することが苦手というだけ。半ば負け惜しみだ。ただ、高ポイントの人同士は仲がいいことが多い。

 でも、手紙を返すタイミングがない。百戦錬磨と接点は全くないのだから。こちらから話しかける勇気もないし、何よりも殺人を犯しそうな男子と関わりたくないのが本音だ。ため息の放課後。夏希は楽しいデートを満喫しているのであろう。でも、私は彼氏がいたこともないし、顔立ちだって夏希に負けている。どうして、こんな面倒なことばかり私に回ってくるのだろう。私自身の気持ちが漆黒に覆われそうになる。

 放課後、中学の帰り道の公園に百戦錬磨がいる。これは、伝えるチャンスだ。これで未来の殺人犯と縁を切れる。勇気を出そう。これで最後だ。

 ベンチに座っている百戦錬磨はそんなに怖い人には思えなかった。ごく普通の男子中学生だ。とても人を殺してしれっと生きる人間とは思えない。しかも公園で遊ぶ子供を見ながら微笑んでいる。誘拐する気じゃないでしょうね? じっと見つめていると――

「にーちゃん、遊ぼうよ」
「このボールで遊んでろ、今大事な話するんだ」

 幼稚園くらいの子供から小学生まで5人の子供たちが公園で遊んでいる。近所の子供だろうか? 怖そうな百戦錬磨と小さな子供の接点が思いつかない。

「よう」
 声をかけられた。無視はできない。
「何をしているの?」

 子供たちを見つめながら百戦錬磨は話を始めた。
「あの子たちは俺の兄弟なんだ」
「今時6人兄弟って珍しいね」
「貧乏なのに、子だくさんでさ。父親と母親代わりしてるんだ」

 ケンカばっかりの百戦錬磨がなんで子守りをしているのかも謎だ。

「俺、中学卒業したら、就職だな。金ないし、本当の父親は行方知れず。母親は働かないし、子どもを養育する気がないんだ。そればかりか新たな男を作っている。結婚もしていないのに、父親と呼べなんて言われてるけどな。ただ、家にいるだけの無職男だよ。義理の父親面されてな。親の愛情だなんて言って、殴って来ることもあるんだよ。残り少ない学生生活に少しばかり恋愛っていうものをしてみたいなって。ガラにもない手紙なんて書いてしまった。ちょっと徹夜気味」

 目の下にクマがうっすら見える。殴られたあとが生々しいあざとなっている。貧しいならば、自宅で内職でもしているのかもしれないし、本当にラブレターを書いていたのかもしれない。ケンカじゃなく父親が殴っている? もしかして、制服のスラックスの裾が長いのは誰かのおさがりだから? サイズがあっていなくてダボついて見えている? 不良っぽいけど、彼には心安らぐ居場所がないから、こんな目をしている?

 やっぱりこの人は、複雑な事情を抱えているんだな。

「でも、なんで夏希なの?」

「彼女は分け隔てなくなくこんな俺にも接してくれたんだ。それで、女友達がいない俺は勝手に恋愛感情に変換してしまった。申し訳ないよな。彼女はお嬢様系だし、俺なんか好きじゃないだろうけど」

 一抹の同情が沸いてしまう。私が夏希に感謝しているものと同じだ。横顔をみていると、せつなくてさびしい人間だということが伝わってきた。だから、口からでたらめが出てしまった。
 
「錬磨君。夏希は友達としてこっそり手紙を交換するならばいいって言ってたよ。でも、このことは友達の私以外には秘密にしてほしいって。そして、手紙以外では会話はしないっていう条件つきだけど」

「交換手紙ってやつか? 今時じゃねーよな。でも、スマホも俺、持ってないからさ、少しずつ俺のことを知ってもらいたいから、俺はOKだ」

 なぜだろう。殺気に満ちた漆黒を纏った男に同情してしまった。一生懸命書いたであろう手紙を読まずに返すのは心苦い気持ちになった。夏希の返事を素直に言ってしまうのは、彼の瞳がもっと悲しむことが目に見えていた。哀れな男に対する一抹の同情と慈愛の精神だったのかもしれない。

 中身を見てから返事の内容を決めようと思っていた。もし、夏希に対する殺意が感じられるようならば、警察や学校に相談しようという理由もあった。同級生の命が奪われるなんて、知っている人が死んでしまうなんてこれ以上悲しいことはない。

「返事書いたら、手紙は私経由で渡すって言ってた。返事も必ず私経由で渡してほしいという条件付きだけど」

 交換手紙は、私が代筆してもコミュニケーションが成り立つ手段だからとっさに出たことだった。そして、会話を本人同士がしなければ百戦錬磨は夏希とやりとりしていると勘違いしてくれるだろう。少しでも彼の殺気が消えてくれればと思っていたのと、兄弟を見守る表情が悪人に見えなかったからかもしれない。善人であってほしいというクラスメイトとしての気持ちも沸いた。

 無下にここで夏希の返事をしてしまえば、殺気が満タンになり漆黒が増幅する可能性も高い。少しでも、殺人のストッパーになりたいと同級生として思ってしまったのかもしれない。そうそう近くに殺人者がいるわけじゃないので、殺人犯とは、はじめての関わりかもしれない。この能力はもしかしたら、事前に殺人を止めることができる力になるかもしれない。そんなことを思いながら、嘘の手紙のやりとりが始まろうとしていた。

 自宅に帰ってラブレターというものを読んでみる。今の時代にラブレターなんて、ましてや絶滅危惧種なの不良が書いたラブレターを読む機会なんて滅多にない。汚い字で書きなぐっているが、本人としては丁寧に書いたらしい。もしや殺害予告なんてないよね? 不安がよぎる。呼び出して何か悪だくみしようとしているとか、不健全な交際を目論んでいるとか――悪い想像しか浮かばない。

『俺は、青春とか楽しい時間を過ごしてみたい。少しばかりの時間を俺に分けてほしい。恋愛もいつかはしてみたいと思っている。』

 何これ。徹夜したと聞いていたので、もう少し長い甘い文章なのかと思ったのだが、思いのほか短い。しかも、好きだとも付き合ってほしいとも書いていない。変な手紙だ。メモ用紙にただ書いただけの手紙だった。ただの茶封筒。味気ないにも程がある。この封筒でやりとりする分には他人にはばれない。中身も適当なメモ用紙やノートの切れ端で特定できないものを選ぶ。

 仕方がない。夏希に変わって私が書いてあげよう。いつのまにかペンを握っていた。私がこんなことをすることは珍しい。傍観者でありたいのがモットーだ。でも、今回はある意味傍観者なのかもしれないと思う。
 殺気が見える力はもしかしたら、今回役に立つかもしれない。それに、思ったよりも百戦錬磨は普通の人間のようだった。狂気や殺気は感じられない。雰囲気だけがそう見えるだけで、話してみると普通だ。

『付き合うとか恋愛という気持ちはないけれど、友達として名前からあなたのことを知っていきたいと思います。この手紙の交換のことは友達の有住愛花《ありずみあいか》以外には秘密にしてください。手紙は愛花経由でおねがいします。そして、私には絶対に手紙のことで話しかけないでください。もし、話しかけたらこの手紙交換は終わりにします。あなたの名前、珍しいですね。』

 念のため、付き合うとか恋愛という気持ちがないということを書き添える。そして、手紙についての規則を書く。私、有住愛花経由のみのやり取りと、夏希に手紙のことで話しかけたら終わりにするという忠告を書く。そうでなければ、なりすましがわかってしまう。それに、無下に断ったら百戦錬磨は最後の良心を失うのではないかという心配があるのは本当だった。こんなにお人好しだったかもわからないが、身近な同級生がこれから殺人を犯すであろう殺気を感じ取れる故の同情なのかもしれない。

『百戦錬磨っていう名前は四字熟語になるから、珍しいだろ。名は体を表すっていうだろ。親としては負けない男になれ、名字と相まって響きがカッコいいという理由でつけたらしい。名付けたという本当の父親は行方知らずだけどな。もしかして、鬼神に食べられてしまったのかもしれないな。夏希さんの名前の由来は?』

 メモ用紙に書いたものを最初の封筒に入れてやりとりをする。それは、ほとんどが放課後の公園で行われた。百戦錬磨は子守りをしており、私はただの郵便屋さん。そして、世間話を少しばかりする。鬼神に食べられてしまったかもしれない行方不明の父親。義理の父親面をする赤の他人の男が同居している彼の立場は相当辛いだろう。少しでも、彼の心に彩を添えられたらいいのに。

「よう」
 百戦錬磨は軽く私に向かって手を振る。親しい間柄になっていた。

「今日も子守り?」

 放課後帰宅途中に百戦錬磨は公園でたいてい兄弟の面倒を見ていた。3回目くらいになると、買い物をして夕食の準備をするからと言って、代わりに私に見ていてほしいと言ってくることもあった。百戦家の子供たちに罪はない。なんとなく、同じ服を何日も着ているとか薄汚れているとか、サイズアウトしているのに無理して着ているとかそういうことが目に付いた。中学三年生で受験生。でも、百戦錬磨は受験しないのだろうか。

 返事には以下の文章を書いた。でも、私はただの郵便屋さん。中身のことは知らない設定だ。ついうっかり内容を話してしまうとまずいなと気を遣う。

『夏希という名前の由来は、夏生まれで希望に満ちてほしいっていう話。錬磨君は受験高校は決めたの?』

 さりげなく受験について聞いてみる。毎日手紙だけのやりとりをする。でも、私は受け渡しの時に、さりげなく、直接本人に受験について聞いてみた。

「高校受験はしないの?」

「親っていうのは自分じゃ選べねーからな。実際損な人生を送っていると思う。でも、俺が働かねーとこの先、生きていけねーのは見えてるからな」
 百戦練磨はため息をつきながら前髪をくしゃりと握りしめる。少し髪の毛が乱れると憂いを帯びた印象に変化した。

「でも、今時中卒じゃ就職先ないらしいよ」
「だったら働きながら定時制とか通信制とか公立のところを探すさ。でも、今は目の前の食べていくための食料が必要だ」
 切実な言葉だ。

「そんなに大変だったら、児童相談所とか、学校の先生に相談してみたら。ちゃんと保護される権利があるんだよ」
 一般的なことをアドバイスしてみる。

 百戦錬磨は遠くを見つめながら、ため息をつきながら話し始めた。諦め顔とはこのことだろう。
「親っていうのは絶対的な権限がある。事件が起きないと警察は手を出せないんだ。そして、グレーゾーンは児童相談所も手を出せねー。あんたは恵まれた育ちだから困ったら大人が手を差し伸べてくれるって思ってるんだろ。現実は甘くねーよ。気づいていて何もしない大人はたくさんいる。できないっていうほうが正しいかもしれないな」

 彼は、かわいそうな人なんだ。同情が沸く。とは言っても私は彼と人間ポイントとしての価値は変わらない。少し高いかどうか、そんな程度の差だろう。でも、この人は確実に殺人を犯そうとしている。何度か殺人を犯した人間を見たことがある。それと同じ漆黒の色を纏っている。これは私だけが持つ特殊だ。

第二話→見える力を持つ私と不良少年 鬼神と人間ポイントに支配される世界で 第二話|響ぴあの (note.com)

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