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【こんな上司がいい】ヒロシの話

ヒロシは課長
本名ではなく、理由は俳優の舘ひろしに似ているから
さすがに本人に向かってヒロシとは言えるはずもなく、表面では「課長」
だけど裏面では「ヒロシ」と親しみを込めて言っていた部下たち
「あれ?ヒロシどこ行ったの?」
「やっぱヒロシはシュッとしてイケオジだよね」

そんな田舎に似つかわしくないヒロシが、家では首にタオルをかけ軽トラも運転する気さくな人だと知ると、そのギャップにまた萌える部下たち

窓口に来た人が制度の内容に納得がいかず、理不尽に若い職員に怒鳴っていた時、クレーマーをなだめつつも「職員は一生懸命やっていますので」とかばう一言を当然のように入れたヒロシ

監査の日が近づく中でもバタバタすることなく普段通り仕事をしている部下たちに「準備、大丈夫なの?」と聞いてきたヒロシ
「大丈夫です」と一人が答え、それに続いて周りのみんなが黙ってうなづくとそれ以降は一切口出しせず信じてくれたヒロシ
監査が終わった後、向かいの部署の課長に「え?もう終わったの?何か言われた?」と聞かれ「なんにも。うちは優秀なもんで」と、ちょっと得意気に少年のように笑って返したヒロシ

職員の急な欠勤が続き、期限が遅れるなんて前代未聞、袋叩きにあうこと必死の仕事のタイムリミットが迫っていた時、「補充をお願いしたが間に合わないので、忙しい中申し訳ないが協力してほしい」と職員に伝え、自らもその業務に参戦したヒロシ
机が10個ほど連なるシマの係員全員が職種関係なく書類を広げ、一心不乱にPCに向かう様子を見た向かいの部署の人がびっくりしていたっけ

それから・・・
緊急案件で水分をたっぷり含んだ雪が降る外に行った保健師がなかなか戻ってこれず、心配した心優しい係長が応援兼迎えに行こうとしていた時、係長にさっと近づいて「何かあったかい物でも持って行ってあげて」とそっとお金を右手に渡していたヒロシ

部下をモノみたいに扱わない、それぞれの仕事ぶりを見ていないようで見ている、そんなスマートなところがある課長だった

『何かミスして、この人に頭を下げさせるわけにはいかないな』
そう思わせた唯一の上司
忙しい部署だったけど、落ち着いていてみんな仲が良かったのは、親分がヒロシだったこともあるからじゃないかな

そんなヒロシは2年で異動になり、その後も順当に出世していった
私も異動になってその後会うこともなくなったけれど、10年以上経った今でも思い出す、懐かしい時代の話


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