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修士1年目を終えて

こんにちは。
というか,あけましておめでとうございます。
気づいたら何ヶ月ぶりの投稿です。

1月に秋学期15回目の講義を終え,2月から春休みになりました。修士課程1年目を終えたわけですが,本当にいろいろあった1年間でした。今日はその中でも印象に残った出来事と,今後の展望について書きたいと思います。


1.自分で研究テーマを決めることの大変さ

学部の頃は博士課程の先輩から研究テーマをいただいて,実験等のサポートを受けながら卒論の執筆は学部生が担当するというスタイルでした。
多くの理系ラボでは大きなプロジェクトが動いていて,その一部を学部生や修士の学生が分担して研究しているといった研究室も多いのではないかと思います(自分の周りの理系学生さんはそのようです)。

一方で今年度僕が新しく入ったラボでは,自分で研究テーマを考えてきて,週1回のミーティングで先輩や指導教員の先生からフィードバックを頂き,実験や調査を計画するといったスタイルで,極めて自由度の高い研究室です。

自分の研究室には「アスリート育成」という大きな枠組みはあるものの,何をどのような方法で研究するのかは学生本人の選択に委ねられています。

学部生の時は心理学の中でもかなりLab-basedの基礎心理学の領域で,脳内の神経伝達物質の操作による学習効果の違いを動物実験で検証していたような人です。「アスリート育成」について研究したいという目標を持って入学してきたものの,あまりにテーマが壮大すぎて何から始めたら良いのかわからないまま,最初の半年くらいを過ごしていました。

「実験を完遂して論文に仕上げる」これは学部でも修士でも共通のゴールなわけですが,修士に上がった途端に「まず何を実験するの?」「どういう目的で?」「仮説ってどうやって作るの?」,スタートラインから何もかも謎だらけです笑

アスリート育成/心理学/メンタルトレーニング/フィギュアスケート…
興味のあるボキャブラリーを並べるだけでは何も始まりませんでした。

まずは,どういった背景のもとで何が現状の課題なのか,それを明らかにしなければいけない…夏休みあたりにようやくそこまでたどり着いて,一冊の本を手にします。

この本を読んでだいぶアイデアがまとまってきました。
・本質的な課題は何なのか,
・その課題が解決されることによってどういったアウトカムを生み出すことができるのか

論文が仕上がってないので,最終的にたどり着いた自分のアイデアはお伝え出来ないのですが,この2つの視点から考えることで頭の中がだいぶクリアになっていった気がします。この本は先行研究を批判的に読む視点として今も役に立っています。研究テーマやレポートの題材が決まらず悩む方におすすめの一冊です,是非。

研究テーマを考えるのに本当に時間がかかりましたが,大学院生としてひとつの研究を仕上げるにあたって,課題を発見するスキルや問題解決のスキルがどれだけ大事なのかということを学べました。

2.スポーツ心理学との出会い

学部生の頃から「スポーツ心理学」という用語は知っていましたが(心理学部だったので当たり前ですが),本格的に勉強したのは修士に上がってからでした。授業で海外大学のスポーツ心理学の研究者が来日して講義をしてくださる機会がきっかけで,日本だけでなく海外のスポーツ心理学領域にも視野を広げることができました。

日本でスポーツ心理学を学ぶとなると,通常は「スポーツ科学部」のようなスポーツ系の学部・大学院で勉強をすることになると思います。ですが,海外(主に北米やオセアニア)ではDepartment of Psychology,つまり心理学部の中にConcentration in Sports Psychologyのように,スポーツ心理学を専攻できる独立したプログラムが存在する大学が存在するということを学部生の時には知りませんでした。

ラグビー日本代表のメンタルコーチとして活躍された荒木先生も北米のスポーツ心理学に基盤のある方です。

こういった学位プログラムの背景には北米を拠点にする応用スポーツ心理学会がとても活動的にアスリートの心理支援に力を入れているということがあると考えます。僕もこの学会のConferenceにいつか行きたい(発表したい)というのが当面の目標です。

一方で日本にはスポーツ心理学を学位プログラムとして持っている大学はほとんどありませんが,スポーツ心理学会が認定する「スポーツメンタルトレーニング指導士」と呼ばれる資格があります。学会の認定資格ではありますが,資格取得にはかなりの労力とアカデミックなバックグラウンドが必要で,日本のスポーツの現場でアスリートのメンタルサポートをするための専門家としてのひとつの道すじになっています。

心理学の測面からみた時に選手の育成に関する研究がさらなるアスリートのパフォーマンス向上に役立つ可能性は大きいし,こうした資格を持った方々が現場で活動されることによって日本にもEvidence-Based Aprroachという考え方が浸透していくのかな,と感じています。

海外の学位プログラムや先行研究を調べていくと,日本では何が足りていないのか,どういった研究・実践が行われることに意義があるのか,深く考える機会にもなりました。

3.これからの一年でしたいこと

1年間,スポーツ心理学(Sports and Exercise Psychology)と向き合ってきたことで自分の中で大切にしたい研究の指針や将来のことについてたくさん考えてきました。

今年度が始まる前と後では,僕の「研究」というものの捉え方やスポーツを見る視点,将来のビジョンなど,全く異なる視点をいくつも発見できたと思います。

今年一年は主に大学のキャンパスに引きこもって先行研究と睨めっこ,といった日々でしたが,修士2年目はいろんな学会に参加してみたり,海外に勉強しにいったり,いろんなフィールドで,いろんな新しいことを知ることができたらいいな,と思っています。

今日も長い文章になりました。
ここまで目を通してくださった方,ありがとうございます。



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