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《写真の保存修復を考えてみた vol.18》~写真の保存修復3~ by タケウチリョウコ

今日10月12日の誕生花は「ガーベラ」です。花言葉は「希望」「前進」だそうです。

緊急事態宣言が解除され、希望へ繋がる変化が社会そして生活に起こる事を願うばかりです。まだ油断を許さない状況ですが、少しづつ良い方向へ前進して行きたいですね。
こんにちは。タケウチリョウコです。

本日も前回記事の続き、実際の写真資料を見ながら「写真の保存修復」について考える第3弾です。「写真資料の状態(劣化)」に注目します。


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劣化した写真資料が目の前にあり「どうしたら良いか分からない!!でも何とかしたい!!」っといった場面に遭遇したら、まずは前々回の記事でも書かせて頂きました4つのポイントを考えてみてください。

1. まず保存修復の必要性を考える

2. 写真資料の技法を調べる

3. 写真資料の状態(劣化)を確認する

4. どのような処置をすべきか検討する


本日は3番目の「写真資料の状態(劣化)を確認する」です。

画像1(Photo.1)

もうお馴染みのこちらの写真は曽祖父の遺品の一部であるポストカードです。
ご覧の通り、このポストカードは劣化が著しく、決して良い状態とは言えません。
どのような劣化が生じているのか詳しく観察をしてみます。

[状態]
「化学的劣化」:黄変、退色
「物理的劣化」:欠損、擦れ、亀裂、剥離
「生物的劣化」:カビ
そして写真右側に水損の跡があります。部分的に汚染され、茶褐色に変化しています。

名称未設定(Photo.2)

保存状態が良ければ、はっきりとした黒と白の色調だったはずです。画面中央の水平線もしっかりと見えた事でしょう。


そしてポストカードの裏も確認をしてみます。
画像3(Photo.3)

水損した箇所(写真左側)に沿ってカビの跡がぎっしりと確認できます。
カビはすで成仏され不活性の状態です。しかし匂いは埃臭く、できれば除去したいところです。

また台紙の紙も全体的に茶褐色になり汚染されています。
このままでは紙の組織が脆弱になり、欠損部分からボロボロと破損する恐れがあります。

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この劣化状況を踏まえて次回は「どのような処置が可能なのか?」検討したいと思います。
またnoteでお会いしましょう。


タケウチ蛇足memo

トップの写真は曽祖父のポストカードシリーズの1枚です。

画像4

画像5

裏のデザインが、今回保存処置を考えるきっかけとなった写真(Photo.1~3)と同じものなので、同時期に制作されたものではないかと思います。
こちらも黄変や退色、そして左上に虫の糞のような付着物があり、保存状態がかなり良くなかったのだと想像します。

これらのポストカードは家の大掃除の際に発見したものですが、押入れの奥深くにA4サイズほどの木箱があり、その中で写真がむき出しのまま重ねて納められていました。
ご存知の通り、日本は高温多湿です。湿度の影響は間違いなくあったでしょう。
そして水没や欠損もあることから、今日まで保管されてきた以前に家族や友人と沢山、見て、触って、を繰り返していたことが感じられます。
劣化は嫌なイメージがありますが、曽祖父の温もりを感じ、何とも感慨深いです。

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