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【句集紹介】彩 桂信子句集を読んで

・紹介

 もう、とにかくすごい。17音でよくぞこれだけ妖しげで、淫靡で、しかしどこか悲しい世界を描き出せるものである。

 桂信子の句は「間接照明」のようだ。暖色系の照明に柔らかく照らされ、中心以外の景はぼやける。そしてその光の当たらぬ余白より、仄かに甘美なにおいが漂ってくる。誤解を恐れずに言うと、全男子が一度は夢見る、妖しげな世界が描き出される。

 あとがきにおいて「私は幼ないときから、原色よりも間色を好んだ」と言っている。もしかしたら、そういった趣向も、句に反映されていたのかもしれない。

 全男子が虜にされること間違いなしの、桂信子の俳句を厳選10句より感じていただけたら幸いである。

・厳選10句

ひとづまにゑんどうやはらかく煮えぬ
剃りあとの青き夫なり夏木立
湯上りの肌の匂へり夕ざくら
ゆるやかに着てひとと逢ふ蛍の夜
藤の昼膝やはらかくひとに逢ふ
月の中透きとほる身をもたずして
窓の雪女体にて湯をあふれしむ
平らかに畳に居るや春のくれ
花びらのときに入りこむ布団部屋
雨はじく傘過ぎゆけり草餅屋


・作者略歴

 大正3年11月1日生まれ。日野草城に師事。「まるめろ」「青玄」同人などをへて、昭和45年兵庫県伊丹市で「草苑」を創刊、主宰。52年「新緑」で現代俳句女流賞。平成4年「樹影」で蛇笏賞。11年現代俳句協会大賞。16年「草影」で毎日芸術賞。新興俳句から出発し、叙情的で平明かつ奥行きのある作風で知られた。平成16年12月16日死去。90歳。大阪出身。大手前高女卒。本名は丹羽信子。句集はほかに「月光抄」「女身」など。(デジタル版 日本人名大辞典+Plus引用)


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