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星に願いを

夜も更けてすっかり部屋を暗くして休んでいると、娘が部屋の入り口に立っている。
眠れないから話をしてくれという。
ベッドに招き入れて何の話が聴きたいのだと尋ねると、ユニコーン、と応える。

ユニコーンはね、虹色の花しか喰べないんだ、知ってた?
娘はクスクスと笑う。
虹色の花はね、とても柔らかくてね。君の大好きな綿あめみたいにフワフワなのさ。
食べてしまっても大丈夫。五分でまたポロンポロンと音を立てて咲くからね。
あと、知ってたかな。
虹色の花はね。あまーいけどね、お砂糖じゃないからたくさん食べても太らないよ、というと、いつもお菓子を手のひらいっぱい食べたい娘はちょっとワクワクしている。

虹色の花は柔らかいけど、茎も葉っぱもクリスタルで出来ているからね。
硬くて鋭いから触れてはいけないよ。
いいかい。
みだりに他の生き物を傷つけてはならないよ。
お花を食べさせてもらえるからと手折るのは間違っているんだ、分かるかな。
娘はうつらうつらしながら頷く。

ユニコーンに会いたいならね。
まずは虹を探しなさい。
虹を見つけたらハジから登っていくんだ、落ちないように気をつけてね。
あと小雨が降ってるだろうし、傘も忘れずに。
てっぺんまで登ったらね、ドアが見えるはずだから開けてごらん。
そうしたら一面に虹色の花が咲いた野原に出るからね。

ユニコーンはね、ちゃんといるんだよ。
犬や猫とはちょっと違った世界に住んでるから中々逢えないし、逢っても触れることも出来ないからもね。
だからね、ちゃんとドアをくぐって世界を合わせないとダメだ。分かるかい?

虹が出ていないからって悲しまないで。
とっておきの秘密を教えてあげよう。
今、眠たいだろう?
その時にね。
たくさんたくさん、ユニコーンを思い描いてごらん。
どんな色で、どんな手触りで。
どんな匂いでどんな声で鳴くんだろう、って。
今想像しながら触れてしまえるくらい、一生懸命にユニコーンのこと、考えてみて。
必ず逢えるよ。
ユニコーンにとっておきのハグをしておいで。
信じればね、全て本当になるんだ。
知っていたかい?

娘は半分寝ぼけながら自分の頭の中のユニコーンについてしばらく説明していたが、それも程なく穏やかな寝息に変わる。
そっと額にキスをすると、私も寝ようかな、と思う。
待てよ、noteに記録するか、と思いとどまりスマホを開く。

星に願いを。全てに愛を。
どうかあなたに届きますように。


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