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「進撃の巨人」と中世絵画

遅ればせながら、アニメ「進撃の巨人」にハマりました!




私、アニメや漫画には疎く、最後に観た地上波放送アニメは「スラムダンク」あたりで終わっているほど化石化しています。


映画アニメはジブリをはじめ、主要なものは観てはいますが、深夜アニメで放送しているものには全く興味がなく。オタクの世界でしょ位に思っていました。


保育園時から仲の良いパパ友が「進撃の巨人」のアニメ制作に携わっていたと聞き、どれどれ、と観てみたところ。


なにこれ面白すぎる!!!!!



あれよあれよという間に、全話一気見してしまいました。

これは国宝です、重要文化財です、日本が誇るべき文化遺産です!!

何よりもびっくりしたのが、話のスケールの大きさ。
とにかく壮大でした。よくぞここまでの世界観を作り上げたなと。

単純に時間計算しても、映画よりもドラマよりも、スケールの大きいものが作れる地上波放送アニメ。


映画は一作2時間前後。
「ロード・オブ・ザ・リング」などの3部作大作で、9時間ほど。

海外ドラマは分かりやすく「24」で例えると、1シーズン24時間ほど。

「進撃の巨人」は現在88話まで放送(2023年の秋にフィナーレ予定)。
1話を25分と換算すると2200分=36時間ほどです。


たくさんある時間を使って描かれる、じっくりと練り込まれた世界観とストーリーが素晴らしかったです。


人間描写もものすごく緻密に描かれていて、なんとも深い。

それぞれのキャラクターの葛藤が切実に描かれていて、誰一人として乱雑な描き方をしていません。


例を挙げると、第一話で主人公エレンのお母さんが巨人に殺されてしまうシーン。

殺される瞬間にエレンと目が合うのですが、すぐに逸らし、その瞬間に身体が引きちぎられます。

息子をずっと見ていたいけど、目が合いながら殺されるのは息子にとって忘れられないトラウマを与えてしまうという親心を、最後まで丁寧に描いています。


個人的には、リヴァイ兵長に完全にノックアウトです。

ドラゴンボールに出てくる、未来から来たトランクスの登場を彷彿とさせるような。ベジータと足して割ったような強さと哀愁さがあり、、ミーハー心炸裂です。 

プロマイドでもクリアファイルでもアクリルキーホルダーでも、何でも買いたいくらいです。


あとは、戦闘シーンがすごい。
特に、立体機動装置での空中戦の描き方がものすごくかっこいいです。


とにかくストーリーが壮大すぎて、もはやこのブログにざっとあらすじを書くことすら難しいので割愛します。機会があったら是非観ることをお勧めします。

原作者の諫山創さんはなんと24歳で「進撃の巨人」の連載を描きはじめたそうです。

諫山さん、歴史が相当お好きなんだなと感じました。
ヨーロッパの歴史にだいぶ沿ったストーリー背景でした。

物語の時代設定は20世紀前半の第一次世界大戦頃らしいのですが(シーズン3までは19世紀前半のイメージ)、所々にもっと古い中世っぽい雰囲気が漂っていて。


特に、シーズン2のエンディングが個人的にはツボで。

「進撃の巨人」の全貌が描かれているこのエンドロール。
(ネタバレになるので言いません!)

諫山さんご本人がストーリーボードを作成されているくらい、気合いの入ったエンドロール。

まさしく、The 中世ヨーロッパ。
当時の歴史書物を見ているかのよう。

おぞましくて不気味な中に、神聖かまってちゃんが歌う「夕暮れの鳥」の讃美歌的な雰囲気と相まって、類を見ないクオリティの高さとセンスを感じました。

これはナウシカを超えたのではないでしょうか。

中世って独特な魅力がありますよね。

キリスト教による強固な信仰心と、不安定な世の中で絵師たちが描く中世絵画は、とにかくファンタジー性がすごい。


私も去年の夏に、ちょうど中世絵画の魅力にはまりまして。
カモコラージュ絵画でも、中世絵画をコラージュした連作が完成しました。

「進撃の巨人」熱が冷める前に、その作品解説をできればなと思います。


古代ギリシャ・ローマ帝国の衰退後に始まった、中世ヨーロッパ時代。

チマブーエ[聖母と天使たち] 

中世ヨーロッパ時代は「暗黒の中世」と呼ばれ、5世紀~15世紀の約1000年間続きます。

ローマ帝国時代の栄光とはかけ離れており、中世後の「再生・復興」を意味するルネサンスのような輝かしさもありません。

キリスト教の台頭による、規律を重視した厳格な時代でした。

ゲルマン民族の侵入、十字軍によるイスラム教国からの聖地エルサレムの奪還、ペストの流行。

戦争、疫病、飢餓によりたくさんの人が亡くなり、激少する人口。
かつて都市だった地域も荒れ果て、数百人が暮らす程度に。
まさに「風の谷のナウシカ」のような世界だったようです。


また、中世ヨーロッパ時代は、文化的発展が停滞したと言われています。
絵画を見るとルネサンス期と比べて、遠近法はまだ確立されておらず、平面的で人々の表情も乏しい。
フレスコ画とペンテラ画が主流で、油絵が発明されたのも15世紀の初頭です。

また、キリスト教による支配のため、厳格な宗教画がほとんど。

そんな中世絵画ですが、コラージュアートとして絵画を失礼ながらも「素材」として一つ一つ見ていく中で、荘厳としたビジュアルから見える、当時の人間のユニークさが垣間見れるのです。


こちらがその中世ヨーロッパ絵画をモチーフにした、カモコラージュの連作絵画。


モチーフの一部に使わせていただいた、こちらの絵画(絵画というよりは、挿絵でしょうか)。
イエスの誕生を祝福する、『東方三博士の礼拝』を描いたものだと思うのですが(何故か女性?)

絵師の愛嬌があると思いませんか?

遠い目を見た女性、ちびまる子ちゃんのような赤いほっぺに困った太陽。

小さな家を持っているなんて、メルヘンチックで絵本の世界のよう。
この中から何か出てきたら面白いな。

愛くるしい子イエス様らしきお方、可愛いですね。


作者名は分からないのですが、今現在イラストレータとしても活躍していそうな今時感がありますよね。

これが1000年ほど前に描かれているなんて、さくらももこが見たら何と思うのでしょうか。



1414年から1423年にフランスで書かれた書物「ベッドフォード時祷書」の1ページ。

おそらく十字軍の出陣を描いたシーンでしょうか。

ひとりひとりのストーリが垣間見れて面白い。

細かい所もものすごく行き届いていて、違う種類の花が咲いていたり、動物たちの姿が見えたり。

出陣する王子、どことなく嫌そうな。
「ママ、実は行きたくないんだよなーー」なんて言ってそう。
ペットの犬も出陣を見守っている様子。



こちらは1482年に描かれた「キリスト降誕」

中世絵画の後期にはいると、立体感と遠近法がルネサンスに向けて近づいてきます。

それでも、なんでしょう、この平坦っぽい大変味のある絵画は。

こちらの部分なんて、拡大してみると秀逸です。


一点集中の目力が面白く、さらには広いおでこがエイリアンっぽい!
この子もコラージュ採用決定。


コラージュ脳は絵画の意味を全く考えずに、素材として見ていくので、ものすごく恐れ多い事しているなと、この文章を書いていて改めて思います。汗


こちらはルネサンス初期にフラ・バルトロメオが描いた「降誕」

この中央の赤ちゃんも、なんとも味が。。。

宗教画ならではの、祈りのポーズはいつの時代でも重厚な威厳を放ちます。
そのような中「コラージュ」という概念から細部にまで図柄を見ていくと、当時の画家たちの様々なメッセージが隠れているのが見えてきます。


当時の人たちは今よりも天と繋がっている事が多く、見えない何かに委ねられて絵画を描いていたのだと思います。
過酷な時代の中でも懸命に生き、絵師としての天命を全うしていたのが感じ取れます。
また厳格な宗教画の中に、自分の個性を入れることも忘れなかったようです。


そんな中世絵画に、すっかり取り憑かれました。


中世の人々の思いを、作品として今に甦らせられないものか。
向き合えば向き合うほど、その素晴らしいその魅力を、どうしたら伝えられるのか。


と、思いながら制作した作品がこちら。

人類の根源である「祈り」をテーマに

真実を語る「目」
祈りの中心となる「手」

それらをフォーカスして制作した、連作になります。


「Soul prayer」(魂の祈り)

当時の様々な祈り中から見えてくる思いを、一つの願いとなって現したものになります。祈りながらも、それぞれの個性が垣間見れる作品に仕上がっています。


こちらの本の挿絵からインスパイアを受けました。
祈りの舞台をカモコラージュなりにしっかりと描きたく。
中世絵画を活かしつつ、天空の宮殿にいるような感じにしました。


「Our utopia」(私たちの楽園)

母なる大地(聖母マリア)を中心に、楽園に住む木苺の住人たちが作品の中を駆けずり回っています。


この木苺はとてもお気に入りです。
1500年代のボタニカルアートで、残っている中でも古い方です。

昔の絵画の方が技術的に下手なんですけど、ものすごく味があるんですよね。


中央のマリアに仕立てた女性もとはこちら。
絵の中央に入っているサインを見ると1832年のものです。
おそらくフランスで描かれた自画像をお借りしました。

時代も国も超えて、一枚の絵画に仕上げていくのも、コラージュの面白さです。

サイズはA3の絵画になります。エディションは9。
中世の思いを馳せながら作品を楽しんでいただけたら嬉しいです。


ここからは告知になるのですが、久々にカモコラージュの催事を開催します!


5/1(月)~5/8(月)
場所:恵比寿アトレ有隣堂
アトレ営業時間:10時~21時

今回記事になった中世絵画のお披露目と、T シャツも残りわずかですが販売します。

新作絵画も多数ご用意。詳細は追ってまた記事を書かせていただきます!


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