晴れの日のお赤飯
出来立てで湯気の立つお赤飯。
口に入れると、塩味と小豆の甘さが入り混じり、もちもちとした柔らかさと、ホカホカの温かさに包まれる。
今では、お誕生日などのお祝いにケーキを食べる人は多いと思うが、お赤飯を食べる人はどれくらいいるのだろう?
子どもの頃、お正月や誕生日などの良き日には、必ずお赤飯を作って持って来てくれるおばさんがいた。
大正生まれだったおばさんにとって、晴れの日にお赤飯を炊くことは当たり前のこととして体に染みついていたのかも知れない。
……………
日曜劇場で放送されていた『VIVANT』というドラマの文庫本を読み始めたら、一気に最後まで駆け抜けてしまった。
選ばれたエリートたちの世界。
命がけの旅。
誰を信用したら良いか分からない恐怖。
自分以外に誰も頼れない。
とてつもなく追い詰められていく精神。
そこでは、強く賢く正直な者だけが生き残れる。
過酷な状況の中にあって、復讐に燃える人。
一方で、人助けを続ける人。
ピンと張りつめた緊張感を解すように、作中に数回登場するお赤飯。
ふっくらと炊きあがった小豆色の優しさと、お米の甘味に不思議な歯ごたえ。
頑なな心までが溶かされていくかのような食べ物。
物語にアクセントを加えるかのように、お赤飯が重要な小道具の役を果たす。
……………
最後にお赤飯を食べたのはいつだったか…?
数日経つと、硬くなってしまうお赤飯。
先が読めない展開に最後まで振り回され、充実した時間を与えてくれたこの作品は、子どもの頃に口にした、出来たて熱々のお赤飯をも思い出させてくれた。
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