MuseScore4を触ってみた (9)

【第9章】ヒンデミットとオスカー・ピーターソン

あ;
これはオスカー・ピーターソンがヒンデミットの楽曲を取り上げてる、というお話ではありません。

<『作曲家の世界』パウル・ヒンデミット>

ヒンデミットという名前を知ったのはかれこれ60年ほど前のこと。初めて手にした音楽書が『作曲家の世界』(佐藤浩訳 / 音楽之友社 / 1955年) という彼の著作でした。
第一章「哲学的考察」から始まり「音楽における知的作用」「音楽における情的反応」・・・と第十一章まで続いて行く、ドイツ人(*1)(実際はユダヤ人)らしい几帳面な論考を重ねる労作ですが、難解な書物です。
当時はLPレコードがえらく高価だったことと、日本ではあまりポピュラーではない作曲家だったので、本は読んでも実際の音楽に触れる機会はなかったのです。
ありがたいことにYoutubeにはそんな彼の作品を取り上げるアーティストが沢山いて、かなり良質の演奏を聴くことができました。
取り上げたのは『小室内楽 作品24第2番』という木管五重奏のための作品です。(*2)
MuseScore4で小アンサンブルを再現するという試みですが、それを通じて「調性でありながら非ダイアトニック」という彼の理論を理解するための作業でもあります。
第一楽章のみを公開しました(*3)が、いずれ第四楽章までコンプしたいと考えています。

<ヒンデミットの難しさ>

取り掛かってみて、これまで自分が培ってきた音楽理論では処理しきれない音楽だと感じました。
II-Vに代表されるようなコード進行はひとつも出てきません。調性も明確ではないように感じますが、本人が言っているのですから、あるのでしょう。「非ダイアトニック」というのはメロディを聞けばなんとなく分かります。
打ち込みに先立っていくつかの実演を聴きました。どのグループも美しいサウンドを実現していました。
しかしMuseScoreで実際に打ち込んでみると、まるでサウンドしないのです。
何が問題なのでしょうか?
有料の音源には一切手を出さない(正確には、出せない><;)方針なので、MuseScore4で使えるようになったMuseSound、以前のヴァージョンからあるSoundFont、そしてフリー音源のBBC Symphony Orchestraの中から、木管楽器を選択するしかないのですが、どれもピタっと来ません。要はそれぞれの音源の使い方が未熟なせいでしょう。
かろうじて妥協できそうな音源をチョイスしたわけですが、それでも納得の行くものになりませんでした。

<平均律と純正律>

鍵盤楽器が含まれるアンサンブルでは、調律は必然的に平均律になります。
しかし木管五重奏などの室内楽編成では、平均律で合わせる必要はありません。純正律でやった方が美しい響きを得られるでしょう。古典的なクラシック音楽なら、そういういことで多少サウンドを改善できるのかもしれませんが、現代音楽ではそもそもいわゆる三和音などはめったに出てきません。調性もはっきりしていないのですからどこを基準にするのか、というところから考えないといけないわけです。
純正律表を眺めながら四苦八苦してみましたがうまく行かず、「習作なので勘弁してね」ということで第一楽章のみをアップしました。
気分を変えて、第二楽章以降は室内楽曲を小オーケストラアレンジでやったらどうかという試みで取り掛かりましたが、これも挫折・・・オケだとどうしても譜面にかかれていない音を付け加える必要が出てくるのですが、その取捨選択がとても難しいのです。

余談ですが、ヒンデミットの譜面には拍子記号も調合も書いてありません。移調楽器にも調合はなく、シレっと移調音が書かれています。4/4がメインですが、これまたシレっと2/4,3/4,5/4,6/4が好き勝手に入り組んでいます。
はぁ~・・・

<オスカー・ピーターソンのピアノ>

ちょっと煮詰まったので、ネットを漁っていたらオスカー・ピーターソンの「ナイト・アンド・デイ」がアップされていました。
好きなピアニスト、尊敬するピアニストの一人です。
軽くていい感じの演奏でした。いわゆるスイングジャズですね。
気分転換にはもってこいだと思ったので、ピアノ・トリオをオーケストラアレンジしたらどうなるかという課題で取り組みました。
動画を参考にしながら打ち込んだのですが、ピアノ・トリオ部分はまずまず収まりました。ピーターソンのリリカルな音使いは、アレンジの余地のないほど完璧でした。強弱とアーティキュレーションの調整に集中すれば、そこそこそれっぽく聞こえます。
問題は原演奏にないオーケストラ部。サウンド的なマッチングが物凄く難しかったです。
またアドリブパートのアーティキュレーションがさらに難題でした。なにせピアノが弾けないし、アドリブそのものが苦手だし。
結局自分の耳しか判断基準はないのです。
でもとにかくYoutubeにはアップできる(と思える)ものを作りました。(*4)

<あと一年ほどは勉強と思って>

MuseScore4を触り始めたのが2023年の7月の終わりころ。
何ができるか、どこまでできるか、を確かめたくってこのシリーズを初めました。
MuseScoreというツールに精通することを目標にしていますが、実は音楽を再び勉強し直すとても良い機会になっています。まあ、この歳で勉強してどうするんだということはあるのですが、楽しいことに違いはありません。
今までの自分だと、ある程度新しいツールに慣れてくると、すぐに次のことをやりたくなる性格なので、例えば手持ちのDAWソフト(Ability 4 Pro)で本格的にオリジナル作品の制作に取り掛かるとか
したくなるのですが、今回はじっくりとMuseScore4の習作を作り続けようと思っています。
解禁は来年の夏ですかね。

これからもとうしゅうチャンネル、よろしくお願いいたします。
コメントもお待ちしております。

(*1) 実際はドイツ在住のユダヤ人。ナチスの迫害を避けてアメリカに移住した。
(*2) Paul Hindemith Kleine Kammermusik op 24 No 2
(*3) https://youtu.be/2SkY_w70Lfc
(*4) 当方の再生環境に問題があったため再マスター化しました。
MuseScore 4 による習作#10bをご視聴ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?