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祭り街道あなん

私たちが親子山村留学に来ている阿南町は祭り街道と呼ばれるメインの国道が通っていて重要文化財の祭りが点在している場所です。地元の方々の力で伝承されてきた民族芸能はユネスコの登録も期待され、毎年楽しみに訪れる方も少なくありません。近年はコロナ禍で外部の人々を訪問を制限されてきましたが、今年も対策をしたうえでいくつかのお盆のお祭りが実施されました。こうした民族芸能の灯を絶やさないためにも、コロナ禍とはいえ実施できたことは良かったです。

私たちの住む和合では、お盆に「念仏踊り」という国重要無形文化財の行事があります。地元の保存会が中心となって継承されてきましたが、人口流出のために近年は移住者の割合が多くなってきました。地元の人、移住の人と分け隔てなく参加させてもらえるのがとてもありがたい行事。山村留学に来ている子どもたちも立派に役を務めます。古くからの行事に参加させていただく貴重な機会を得られることも山村留学の醍醐味です。

和合の念仏踊り
和讃

念仏踊りの前には盆踊りがあります。こちらの地方の盆踊りは太鼓に合わせて唄や踊りをするのではなく、音頭取りが盆唄の上の句を唄い、それを受けて輪になった踊り手が下の句を唄いながら踊るというもので、盆踊りの原型となったものと言われたものです。太鼓がない分、静かで厳かな雰囲気で行われますが、盆唄は洒落やひねりがあるものが多く、昔の人の知的な楽しみであったのだろうと想像されます。盆唄は種類が多くなかなか覚えられないのですが4年目にしてやっと下の句を真似して後について歌えるようになってきました。踊りも体に定着してきたので、これからやっと面白くなるというところで卒業は寂しいです。耳に身体に染み付いた和合の念仏と盆踊りは、ふるさとの祭りとして私たち親子に馴染んできたと感じています。毎年楽しみな行事になりました。

さて、和合の隣の新野には全国的にも有名な盆踊りがあります。今まで行ったことはなかったのですが、4年目にしてやっと尋ねることができました。本来ならば三日三晩夜通し徹夜で行われるお祭りですが、コロナ禍のため最終日のみ明け方までの開催とのことで、最終日深夜11時前から6年生2人を連れて参加してきました。

新野の盆踊り

唄や踊りは新野から和合へと口伝えで伝わったとのこともあり、ところどころ似ていてその違いや同じところを発見するのが面白く、みなすぐに踊りの中に入っていきました。ちょうど和合小学校の先生が新野在住で丁寧に教えてくれました。昨年の担任で産休でお休みに入っていた先生も赤ちゃん地一緒に来ていて嬉しい再会!お祭りは人と人とをつなぐ大切な場になっているとの言葉にうなずく嬉しいサプライズでした。一時間も踊るともう「疲れと眠気でふらふらになった子どもたち。日付が変わると踊りの輪を一旦抜けて駐車場に止めてある車内で仮眠をとりました。その間も踊りは続いています。

明け方の灯篭行列

4時半に目覚ましをセットするも眠たい子どもたちは起きず・・・30分後にアラームを再び鳴らしてなんとか5時に会場に出向くと、もう灯篭行列が出発していて最後の踊りに!ぎりぎり滑り込んで雨の降る中フィニッシュまで参加できました。本来は踊りの最後は小さな踊りの輪がいくつもできてスクラム組んで灯篭行列を邪魔する名残を惜しむ場面があったと言います。しかしながらコロナ禍ではその場面は省略され、静かにお寺へと行列が向かいました。今まで伝承されてきた大切な行事がコロナのために形を変えてしまうのは悔しいですが、いつの日か今まで通りの盆踊りが出来ますことを祈り、この伝統を繋いでいってほしいと願います。

地域に根差すこうした行事は、都市化とともに年々消えていく傾向があるように思えます。さらにコロナ禍で祭りという祭りが自粛され、その傾向に拍車がかかっているように感じます。でも実際に祭りに参加してみて、祭りには地域の人々のきずなや思いがいまでも息づいていて、これは消してはいけないあったかい灯なのだと、よそ者ながらに強く感じました。私自身は地元に伝統的なお祭りはない地域で育ったのですが、子ども会で大きな太鼓を引っ張ったり、やぐらを囲んだ盆踊りの記憶は今でも鮮明に残っています。皆で祭りを作り上げる共同作業は地域の共同体の土台となっているはず。いつまでもこの伝統が続いてほしい、地域が存続してほしいと願って、山村留学の活動もその灯のひと火となれるように、今まで以上に頑張っていきたいと思いました。山村留学をきっかけに移住して地域を支えて下さる方もでてくるかもしれません。定住しなくても、山村留学を通じて地域と繋がり、祭りのたびに訪れてくれる人もあるかもしれません。そんなつなぎ役になれたらいいと思います。

和合では現1~5年生を対象に親子山村留学生を募集しています。現在、和合小学校では3年生が在籍していません。そのため、来年度のクラス編成は学級数が減らされる可能性が出てきています。山村留学では学年を問わず募集を行っておりますが、特に現3年生、新4年生に来ていただけることを希望しています。また、来年の新入生や低学年からの親子留学も歓迎しています。数年に渡って、和合小学校に通い支えて下さるご家族との出会いを心待ちにしております。


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