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自治体こそカルチャーデッキを公開するべきだと思う理由

今年は小説を書くと決めて年末年始はひたすら執筆作業に打ち込んでおりました。やってみてわかったことですが、noteを一本書くのと違って小説は文庫本1冊で約10万~12万字というアウトプット量になります。ジャンルによって変わるとは思いますが、自分の作品は行政の組織マネジメントをテーマにしているため、必然的にマネジメント関連の膨大なインプットが要求されます。品川区役所で5年7か月、サイボウズで4年1か月(うち3ヶ月は鎌倉市役所)と10年近くの時間行政に関わってきましたが、とても自分の経験だけでは10万字というアウトプットを書ききれない現実に直面することになりました。そのため、kindleで組織マネジメントに関する本を買い漁り(といっても数えてみたら18冊でしたが)、読み倒して新しい気付きを得ては小説の構成をぐしゃぐしゃに書き換えるの繰り返しをしてたらあっという間に仕事初めとなりました。

これまで読書習慣があったわけではないのですが、アウトプットの目標を先に決めてしまうとインプットが捗るなと改めて感じた次第です。

2021年の個人的なミッションについて

今年は昨年から引き続き、地方公務員カタリスト事業の立ち上げに邁進していきます。カタリスト事業の概要については、こちらの記事に書いているのでご関心のある方はご覧いただければ幸いです。

当然のことではありますが、あくまで事業は目的を達成するための手段の一つ。では私にとっての目的(ミッション)は何かと言うと、「自治体職員が心から仕事を楽しめるようにする」ということです。それが実現出来たら、何が役所から生まれるのか。何も生まれないのか。正直なところわかりません。わからないからこそ見てみたいという好奇心で活動しています。

小説を書くというのも、この目的に繋がっています。「自治体職員が心から仕事を楽しんでいる未来」に辿り着くまでの道のりを描いてみることによって、ビジョンを共有したり、議論の土台になればという思いで取り組んでいます。

選挙でリーダーが変わる自治体で、組織文化を作るには?

本題です。リーダーである首長が定期的に選挙で変わる自治体において、どのように組織文化を作っていけばよいか。これは多くの人が頭を悩ませる課題ではないでしょうか。

これに対し、私自身は「組織文化を言語化し、対外的に公開する」ことが有効ではないかと考えています。

例えばNetflixは会社の企業哲学、経営理念、社員に期待する行動などをまとめた「カルチャーデッキ」を公開しています。このカルチャーデッキについてFacebook COO(最高執行責任者)のシェリル・サンドバーグが「シリコンバレーから生まれた最高の文書の一つ」と評したことで話題になりました。

全社を巻き込んで議論し、目指すカルチャー(ビジョン・ミッション・バリュー)を言語化する。さらにはそれを対外的に公開する。これによって、Netflixのカルチャーに合う人材の採用ができ、外部のパートナーにもNetflixが大事にしているものが伝わっているようです。

この辺りの詳細は「NETFLIXの最強人事戦略~自由と責任の文化を築く~」に記載されていますのでそちらに譲ります。

組織文化の中には2つの種類があります。①組織の歴史の中で自然と醸成されてきた雰囲気的なもの、②明確な意図をもって言語化し、全社的に作り上げたもの。Netflixのカルチャーデッキの取組はまさに後者ですね。

前者の雰囲気的な組織文化は、言語化されていなかったり、言語化されていても有名無実化しており、全く異なる実態があったりします。例えば、「若手職員の挑戦を歓迎する」的な美辞麗句を並べておきながら、実際には出る杭が叩かれるような空気が蔓延しているような職場ですね。

自然と醸成される組織文化は、時のリーダーに大きく依存します。自治体においては、市長が変わるごとに大きくカルチャーに関する方向性が変わるケースも多いです。組織のリーダーがビジョンを示して変革を推進することは市民から期待されていることであり、これ自体はむしろ歓迎すべきことです。

しかし、言語化されていないが故に「カルチャーに関する継続的な対話ができない」状態があるのだとすれば、それは問題となりえます。今や組織文化は個人が働く場所を選ぶ上で非常に大きなポイントになっていますので、カルチャーが明示され、しっかりと根付いている役所が今後の採用競争で優位に立っていくことは間違いありません。

先日もnoteで紹介した四條畷市の東市長は「日本一前向きな市役所」というビジョンを提示し、大きな成果を出しています。

東市長のリーダーシップのもと、職員の方々が努力して積み上げてきたカルチャーを次の世代に引き継ぐにはどうすればよいでしょうか?私の関心はここにあります。組織においてリーダーの影響力は極めて大きいです。首長がいつか変わる宿命にある自治体においては、これまで積み上げてきたカルチャーが一瞬で有名無実化される危険性があります。

だからこそ、自治体において「カルチャーデッキを公開する」ことには大きな効果があると言えます。全庁を巻き込んで大切にしたいビジョン・ミッション・バリューを作り、対外的に公開する。カルチャーデッキを職員のあらゆる活動に関する憲法のように位置付けて、市民への約束として発表する。カルチャーに基づいた人事制度を作り、日々の活動においてもバリューに即しているかを評価基準にする。

20210104_カルチャーモデル

こうしたプロセスを経ることによって、選挙によってリーダーが変わったとしても、新リーダーとカルチャーデッキに立脚した対話が可能になるのではないでしょうか。新たな市長がカルチャーの変革を進めたいと思った際にも、対話の出発点・基準点があることによって職員とのコミュニケーションは円滑になるはずです。また、市民との約束であるカルチャーデッキですから、当然変更する際にも市民への説明責任が伴います。「トップの気分で変える」ようなことは抑止されそうです。

そもそも、自治体にどうやってカルチャーを作るの?

既にハイレベルな状況にある四條畷市を引き合いに出しましたが、実際には「そもそもどのように自治体でカルチャーを作ったらいいの?」という疑問をお持ちの方が多いかと思います。この点について、noteに今後綴っていきますのでぜひご関心のある方はお付き合いいただければ幸いです。

私のノートをお読みいただき、ありがとうございます!