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成田正人『なぜこれまでからこれからがわかるのか デイヴィッド・ヒュームと哲学する』(青土社)の読書メモ③:第七章から第八章まで(終わり)
キーワード:未来向きの帰納、経験への的中、未来の経験、「グルー」、帰納の形而上学、道徳的運(状況の運と結果の運)、「どうして、これまでがそうであると、これからもそうであるのか?」、認識論的な懐疑論と存在論的な懐疑論、超越論的な自然(本性)主義 「経験への的中」の問題 ここから著者は、これまで見てきたヒュームの「帰納の問題」を「過去・現在・未来」の時制を含む知覚の向きの問題、あるいは「帰納の向き」の問題として細かく見直します。帰納的な信念には「想像上の基準」(174p)とは
成田正人『なぜこれまでからこれからがわかるのか デイヴィッド・ヒュームと哲学する』(青土社)の読書メモ②:第四章から第六章まで
(2024/4/20: 一部加筆修正) キーワード:一般的な帰納と個別的な帰納、観念の自然な連合(類似、隣接、因果)、必然的結合、蓋然的に確信できる信念、自然の斉一性と不斉一性、蓋然性、一般化の正当性、帰納の認識論的な問題の「懐疑論的な解決」、習慣的な自発性、「懐疑論的な解決」以後の正当な帰納、「現実の存在」と「想像上の基準」。 帰納の二区分と前提 私たちは自分が直接は経験していないことを推論します。直接経験したことを帰納的に推論することは、まずありません。今わたしがこ
成田正人『なぜこれまでからこれからがわかるのか デイヴィッド・ヒュームと哲学する』(青土社)の読書メモ①:第一章から第三章まで
キーワード:印象と観念、活気の程度の差、単純と複雑、第一原理、類似性テーゼと因果性テーゼ、「青の欠けた色合い」、観念の関係と事実の問題、思考可能性 まず基本的な情報を手短に。本書はデイヴィッド・ヒュームの哲学に関する研究書です。この本は成田正人が自身の博士論文「帰納をめぐる一般化と未来の問題――ヒュームを手がかりとして」(2017)を基にして、大幅な加筆修正を行って2022年に上梓されました。ヒューム哲学の易しい入門書ではないと著者は冒頭に述べていますが入門書レベルのことは