花は、あふれんばかりに咲き乱れて
掌に咲いた花を握り潰す。
「見えない」
「聞こえない」
言葉が、そこにあるのに。
(読み上げる呪文は死者を呼び出すためのもの)
印象が、そこにあるのに。
(横たわる身体は海底にて朽ち果てている)
≪神殿にて≫
時を待つ乙女が、羽衣を纏いながら踊っている。
≪深淵にて≫
門を守る魔物が、書物を開きながら呟いている。
“Aperi”
死に絶えた植物。飢え乾いた街並み。
薬を飲んで声を失う。
足を手に入れ、地を歩む。
「ここには何もない、だから創るしかないのだ」
泉にて喉を潤す。
声の代わりに、紙とペンを持つ。
そして語り始める。
私とは何者か、汝とは何者か、
どこから来たのか、どこへ行くのか、
何を知り、何を知らないのか、
いつ生まれて、いつ死んでいくのか、
それは読み上げられる。
人々の前で、磔にされた。
流れていく赤い雫。
剣、は確かに突き立てられた。
喧騒が巻き起こった。
ついに砕け散ったのだ!
掌に刻まれた十字架が熱く焼けた。
心臓には鎖を、頭の上には冠を、
そして書物を抱えながら人々に語りかける。
”De lumine”
あふれ咲く花の数々に、
蝶が寄って集って啄ばんでいる。
蜜、は疾うに熟していた。
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