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愛は心臓を交換すること。わたしは祈るみたいに呪った。あなたの髪を一本包んで心を畳み、鶴を折った。長生きしようねって約束。死んじゃうなんて裏切りだよ。わたしの心臓と心中したあなたはひとりじゃないよと笑うけれど、あなたの心臓は止まってしまったので、わたしはもうひとつ心臓をこしらえた。誰にもあげないと決めた。失われた心臓は今でも血を流していて時々痛む。季節の変わり目に思い出す。いろんな果実があるね、どれも美味しいけれど、心臓の味はたまらないね。書くことは病だ。失われた心臓の血がインクになっている。あなたのために筆を折ることができたらどんなによかったか。心臓は書くことに支配されていた。インクを注がれてあなたに支配されていた。呪ったはずが呪われている。生き長らえさせられている。あなたの祈りなのか、わたしの祈りなのか、わたしがあなたを殺したのか。書くことは罪だ。わたしはわたしの有罪を証明している。書くことは罰だ。だから愛を証明するために。

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