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小さな地殻変動

旅へ出た。それはあてのない旅ではなく、「芸術と建築を体感する」というテーマを携えた、計画的かつ少しのリフレッシュを目的とした旅だった。無粋にも結論からいってしまうと、自分という小さな惑星に地殻変動が起きたかのようで、これを書き認めている今も、その動きは収まることを知らない。

まず、本当に美しいものを目にすると、それらを表現するありとあらゆる言葉が儚くも砕け散る。その破片を集めて、どうにか言語化を試みようとしても、辿々しくそのものの輪郭をしっかり掴み取ることができない。自分が持つ言葉の無力さを痛切に感じながら途方に暮れるのだが、「まあそれもそうだな」という納得感すら覚えてしまう。
自然や世界と対峙し、人生を懸けてつくりあげた芸術・建築家の作品から、新しい世界の見方を受け取る。それは、昨日まで丸に見えていたものが、四角に見えるように。取るに足らない雑音から、価値観を一変させるメッセージだけがクリアに聴こえてくるかのように。「巨人の肩の上にのる矮人」というニュートンの言葉がやけに脳裏から離れないのは決して気のせいではないだろう。

ふと、大型連休という社会生活のインセンティブに乗っかって、せっかくならばと踏み入れたことのない地へ訪ねてみたわけだが、これまでの自分の経験、生まれ持った価値観が、すべてここに辿り着くための布石だったのではなかろうか、と人生の妙を感じている。
今回の旅で、自分に起きた地殻変動は、よい意味で自分の人生や価値観を変形させる動きになった。ずっとパソコンを目の前に、用意された答えを見て理解した気に陥りがちだが、自分の内側から溢れる好奇心をエネルギーに耳目を広めることで、これからも小さな地殻変動への補助線を辿ってゆきたい。
終わり

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