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【備忘録】〜小さな嘘と大きな嘘〜どちらにも騙されないために

霊感商法、フェイクニュース、詐欺そして陰謀論…様々な嘘が跋扈するこの社会で騙されないための備忘録。「小さな嘘」と「大きな嘘」に分けてあります。


小さな嘘(詐欺、イカサマ)


参考文献↓

「催眠奇術師」として、十数年にわたって催眠やマジックを披露してきた筆者がお金や財産、人間関係、心などを脅かす心理テクニックのカラクリを公開。悪質なテクニックから身を守る方法が書いてあります。

この世の全ては催眠術である

筆者は述べます。「催眠術など存在しないともいえるが、見方を変えればこの世の全ては催眠術で成り立っているともいえる」と。

自分が今欲しているもの、恋人であったり、地位であったり、詐欺に対する防衛知識であったり、営業成績に至るまで、催眠術という考え方をもってすれば、ある程度コントロールできる、と筆者は主張します。「この世のすべてが催眠術」とも言えるし、逆に言えば、「催眠術などというものは存在しない」とも言えるようになると筆者は主張します。

催眠を知るということは、この世のすべてを知るということでもあり、すなわち催眠は存在しないということにもなります。

「非科学的なことを信じない」人ほど騙しやすい

「科学的な根拠がなければ信じない!」と豪語する人ほど騙されやすい、と筆者は述べます。そのような人達は逆に言えば、科学的な根拠を示してあげれば信じてしまう、ということだからです。そもそも「科学的な根拠」といっても一般の人々の中で本当に科学に精通している人は多くはありません。科学っぽいことや学問的なことを信仰している人がほとんどです。

例えば、「超能力により、あなたの持っているカードを透視します」というカードマジックがあったとします。それを間に受ける人はいないでしょう。しかし、「私は心理学を学んでいます。あなたの持っているカードの数字を、あなたの仕草や目の動きでを当てます」となると、「本当にそんなことができるのですか? 」と間に受ける人は多少なりとも出てきます。これは「心理学」というものをぼんやりと知っているからこそ、ありえるかもしれないと思ってしまうからです。

人は「統計」「医療」「権威」「学問」というお墨付きに弱いのです。“科学的な根拠がなければ信じない人”も例に漏れず、いやもしかしたら普通の人以上に弱いのかもしれません。上で書いたように、それらしい根拠を提示されれば信じてしまうのですから。

催眠術師がよくペンライトを持って、「じーっと見ていると、意識が朦朧としてきます」なんていう暗示を入れるわけですが、「全然、大丈夫!」と言う人には少し根拠を提示してやるだけでいいわけです。「少しズルいんですが、このペンライトの光線は最近研究された……」といった具合です。

『世の中で悪用されている心理テクニック』Birdie著 p.63


「思い込ませる」という行為は、話術を凌駕する。

「ラポール形成」という言葉があります。心理テクニックにおいては「信頼関係を形成する」という意味です。

例えばあなたが自在に数値を変えられる体温計を持っていたとします。目の前に暗示をかける対象がいたとして、体温計の数値を37度にして相手に提示したとします。しかし相手が平熱で、気分も悪くなければそれを信じる事はないでしょう。しかし、あなたが白衣を着て「医者である」と事前に相手に信じ込ませ、なおかつ「これは非常に精度が高い体温計です」と嘘の説明していれば、相手は「そう言えば体が少しダルい...」と感じる可能性は(プラシーボ効果も相まって)高くなります。

これが「催眠術」であり、相手に自分を医者であると信じ込ませることが「ラポールの形成」と言うわけです。

そして実際の詐欺においては、上の例におけるあなたが提示する嘘の体温が、詐欺師が売るべき商品の価格になります。そして、相手の購買意欲が実際の体温となります。いくら前述した下準備を入念にしても、いきなり「あなたは今40度の高熱があります」と言っても、相手は信じないでしょう。

それは預金が 10万円の相手に対して「 1000万円の家を買いましょう」と言うに等しい。と筆者は述べます

受け入れられる催眠現象と起こそうとする催眠現象の間に差がありすぎるといくらラポールが形成されていようと、相手に受け入れられないのです。

相手を操るというテクニックにおいて重要な「メリット・デメリット」

全勝で、ラポールの形成が大事とは述べました。しかし、いくら深い催眠状態に入ろうともできないことがあります。それが筆者の提唱する「メリット・デメリット」です。早い話が、相手にとってそれをすることが得になるか、といいことです。例えば「裸になって踊ってください」といっても、いくら相手が深い催眠状態であっても も、それを実行することはないでしょう。それが相手に得にならないからです。

逆に言えば、相手に得だと思わせれば暗示はかかります。筆者が地元で有名になってきた頃は、マジックのお店に「俺に催眠術をかけられたら 1万円やる」という客が来たそうです。1万円をあげるというのは、先ほどの「メリット・デメリット」から考えれば、それはあきらかなデメリットです。さらに大口を叩いた結果催眠術にかかってしまうのは恥であり、もし連れがいたのなら恥の上塗りです。

しかし、もしこの人が1人で店に来ていてさらに数億の資産を持っていなのであればどうでしょう。先ほどの「催眠術にかかっのなら1万円をやる」の意味合いが変わってきます(まあこれは極端な例ですが)。その人にとってかかることが得であるかどうかはその都度、見極める必要があるのです。

例えば、女性をデートに誘うときに、相手にとってメリットたりえるか否かということを考えれば、結果は自ずと見えてきます。 自分が汚い身なりで異臭を放っていれば、デメリットです。でも、大金持ちならメリットです。

詐欺師が心得ている「不思議の谷」

「不気味の谷」という表現があります。ロボットを人間に近づけていくと、ある一定のリアルさを超えた部分で、なぜか「不気味さ」を感じてしまう心理現象です。筆者はマジックを続けていくうちに、マジックや詐欺にも「谷」があることに気づいたそうです。これを筆者は本書の中で「不思議の谷」と名づけます。

マジックで、あまりにも不思議な事(高層ビルを消すなど)をしてしまうと、観客は何かタネがあるのだとすぐに勘づいてしまいます。当然、消えたビルの中の人々の安否を気にすることはありません。これがマジックにおける「谷に落ちた」状態です。むしろ、手元でコインを消すほうがはるかに"魔法"だと思われるのです。

次に詐欺の「不思議な谷」。
還付金詐欺を例にすると、「数十万をお返しします」だとまだリアリティがありますが、1兆円だと笑うしかありません。あまりにも非現実的な金額はカモを現実に戻すのです。

詐欺師はリアルさの限界である「谷」の位置をよく知ってさらに、人それぞれ感じるリアリティーの限界には差があることも熟知しています。資産が多い人に「 1000万あげます」と言えば「ありえるかも」となりますが、預金残高が 少ない人に同じことを言ったとしても、「詐欺だ」という判断をされてしまうからです。

貯蓄が多い高齢者がカモにされるのは、これも原因の1つかもしれません。

プロのマジシャンは最初からすごいマジックをしないそうです。
簡単なマジックから始めて段階を踏みつつ、さらに緩急もつけることによって「これは本当の超能力かもしれない」と観客に思わせるのがプロのテクニックらしいです。
観客に、「この人ならこのくらい不思議な事はできるだろう...」と。

そして、これは私の私的な見解になりますが...。

個人的には、SNSにおいて、詐欺師にとっての「不思議の谷の底上げ」が意図せず行われたのが、前澤社長による100万円配布だったと思います。

一昔前であれば、「フォローするだけで100万円あげます」なんて、すぐに詐欺だと分かったでしょうから(まあ勿論、前澤社長は善意で実施したのだとは思いますが)。

詐欺やイカサマから身を守る、たった1つのキーワード「そもそも」

騙されない為には「そもそも」という考え方が重要だと筆者は述べます。

例えば、スプーン曲げのショーの際に客から、「そもそもそんなことができるのであれば、金属加工会社で働けますよね?」と言われると困ってしまう、と筆者はいいます(実際筆者は客に本気で「この力を世の中の為に役立てる話をしませんか?」と迫られたことがあるそうです)。

マジシャンからすれば、嫌な客ではありますが、この「そもそも」と言う考えこそが、詐欺やイカサマから身を守るためには必要だと筆者は述べます。

経済学の権威であれば、株に投資するだけでよく、学生に教えるなんて面倒な仕事はしなくていいでしょう。  集客のノウハウがあるなら、「集客セミナー」で定員割れが起こりうるわけがないですし、競馬で絶対勝てるシステムがあれば、「そもそも」売らなくても、大もうけできるはずです。経営コンサルタントは、自分で店をやればいいのです。

『世の中で悪用されている心理テクニック』Birdie著  p.22


大きな嘘(陰謀論)

参考文献↓


筆者はマーク・カーランスキー。アメリカのジャーナリスト兼作家であり、フィクションとノンフィクションの本を数多く書いています。スターリン、ヒトラー、トランプなどの「大きな嘘」を活用する為政者から身を守り、正しい判断をするための一冊となります。

嘘をつきたがる独裁者


古代ギリシャの哲学者プラトンが著書「国家」の中で「高貴な嘘」と呼ぶものがあります。プラトンの言う高貴な嘘とは、国家や市民に存在意義を与えるための嘘を指します。国家はその存在意義を確立するために、たとえ嘘でも作り話を広めるべきだ、とプラトンは考えていました。『国家』の中で、プラトンは、高貴さを育てるのは、国家の義務だと論じ、その義務の進化を理解できない人々には嘘をつくしかないと説いています。

しかし、民衆に嘘を吹き込む歴史が繰り返されたことで、プラトンが定義する高貴な嘘でも、そうでない嘘でも、嘘は嘘でしかないと、この本の著者は述べます。

嘘は、繰り返せば真実となる(ウラジミール・レーニン) 

嘘は大きければ大きいほど大勢の人を惹きつける(アドルフ・ヒトラー)

政治的な嘘の歴史をひもとくと、2つの原則が浮かび上がります。

1つ目.「嘘は大きければ大きいほど、大勢の人を惹きつける」
些細な嘘は見向きもされませんが、あまりにも突拍子もない大嘘は信じる人が大勢出てきます。これはアドルフ・ヒトラーが、自著『わが闘争の中』で創作したものだそうです。ヒトラーによると、突拍子もない嘘が成功するのは、「真実をそこまでひどく歪曲できるはずがない」と、誰もが思い込むせいなのです。

2つ目.「嘘は繰り返せば繰り返すほど、信じる人が増える」
フランスのアンリ2世の王妃となったカトリーヌは、「嘘の報告でも、もし3日以内に信用されれば政府の役に立つ」と言ったとされています。嘘は短期間に何度も繰り返されると、だんだん真実のように聞こえてくると言うわけです(もっともこの逸話は、皮肉なことにそれ自体が嘘の可能性があるそうです)。
しかし、「嘘は繰り返せば繰り返すほど、真実とみなされやすい」のは本当であり、インターネットの威力はまさにそこにあります。ソーシャルメディアを通して嘘を1億回繰り返したときの影響力は測り知れないでしょう。

自分の勢力拡大のチャンスを虎視眈々と狙うオポチュニスト(ご都合主義者)は「社会的・経済的に圧迫され、政府に不満を持つ人々」に「諸君を陥れる陰謀が目下進行中だ」などと様々な陰謀論を吹き込んできた、と筆者は主張します。

過激な投資を支持する政治家の大部分は、党首の言い分などまず信じていません。自分の支持層や大口の資金提供者の機嫌を損ねるのが怖いだけかもしれないし、自分の支持率が上がれば、票や利益につながると信じているのかもしれません。デマゴーグ(煽動者)自身、自分の言ってることを信じていない可能性があります。

デマゴーグが信じているのは、「今日の自分に有利に働くことだけ」かもしれません。

過去、様々な独裁者が民衆を煽動するために、大きな嘘をついてきました。しかし、続けて筆者は、独裁者ヒトラーが支配するドイツから逃亡し、20世紀を代表する哲学者となったハンナ・アーレントの言葉を取り上げます。

「(個人の自由と権利が無視され、国家と民族が優先する)全体主義を忠実に実行したのは、全体主義を信奉したナチ党でも熱心な共産主義者でもない。事実と捏造、真実と距離を区別しなくなった民衆だ」

科学と直感

直感的に正しいとわかる事はすぐに理解できます。例えば、腐った食べ物が体に悪いというのは、見た目や匂いからわかります。難しく考えなくてもすっと頭に入ってきます。しかし、16世紀、科学に直面した人々は、科学に反発を覚えました。科学は大抵直感ではわからないし、それまでの常識が覆されることもあるので、直感と矛盾するからなのです。

教育を受けておらず、科学の知識がない人ならば、周りを見渡して地球は平らだと結論付けるでしょう。もちろんまっすぐに延々と旅していけば、いずれスタート地点に戻り、地球は平らではなく丸いと実感できるでしょうかそこまでする人はまずいません。自分が今いる地点からだと確かに地球は平らに見えます。多くの人はそれ以上求めません。

宗教は信仰と言う概念を受け入れ、神を信じよと解くものですが、科学はそれとは正反対のことをします。科学では、ある仮説が生まれると、すぐに受け入れ信じるのではなく、まず検証し、さらに検証を重ね、正しいかどうかを確かめます。だからこそ、ある理論が証明されたと発表された途端、別の科学者たちが一斉に反証に乗り出すのです。

科学的発見のうち、間違っていると証明されるものは多く、度重なる検証でも崩れなかった説だけが生き残ります。

宗教の前提は信じることだが、科学の前提は疑うことなのです。

科学を敵視する人たちは、テレビを使い、コンピューターでSNSに書き込みを行い、車を運転し、病気にならない為に抗生物質を服用します。科学反対と言いながら、その恩恵を受けているのです。

科学を否定し、軽蔑する人の大多数は、「無視する科学」と「利用する科学」を使い分けています。

なぜ、現代までアトランティスを信じる人々がいるのか

この本によれば、世界最古の嘘であり現代も信じる人が多数いる事例として「アトランティス島」を挙げています。高度な文化をもっていましたが地震により沈んだとされる島で、古代ギリシャの哲学者、プラトンの作品にも登場します。ただし、プラトンは、「正当な理由があれば、嘘も役に立つ」と信じていた人物です。弟子であるアリストテレスはプラトンが嘘をついていて、アトランティス島など存在しなかったということを、ほのめかしております。

「西洋の学問はすべてプラトン哲学の脚注にすぎない」という言い方があります。簡単にいうと、西洋思想成り立ちにはプラトンの与えた影響が大きい、という意味です。今だにアトランティスを信じている人が欧米に多数いるのはプラトンの権威の影響ではないでしょうか?

陰謀論に騙されない為に

結論からいうと、自分の頭で考え、何を信じるか、自分で決めることだと筆者は述べます。真実を突き止める努力を惜しんではならない。何が真実かを問い続けなければ、全世界の人々が秩序ある健全な社会で暮らすことなどできないと筆者は主張します。

人は、誰しも面倒な変化を伴う不都合な真実より魅力的な嘘の方を選びたくなるものです。嘘が心を癒し、慰めとなり、望みを叶える言い訳や理由となるなら、全てを疑えと言うのは難しいのです。人生を歩む時、一体何が真実なのか、自分に常に問いかけてほしいと筆者は述べています。

最後に

私が子供の頃読んだ漫画に『いる?いない?のひみつ』というものがあります。宇宙人や幽霊やUMA、超常現象等は実在するのか?ということを博士と子供達(男の子と女の子)の対話というかたちで検証していく学研漫画です。この中に印象深い場面があります。

女の子は「幽霊は実在するのよ!」と主張し男の子は「いるわけない!」と反論します。すると、博士はどちらも諫めるのです。「そうやって決めつけるのはどちらもよくないよ。まずはその不可解な現象を詳しく調べることが大事なのじゃ」と。子供ながらに疑問に思ったものです。「幽霊なんていないと決めつけても良いのでは?」と。

しかし、上記の2つの本を読んでからは、直感で何かをすぐに決めつけることは陰謀論にはまる下地になってしまう、ということをこの場面で伝えたかったのではないか?と考えるようになりました。

「幽霊はいない」という一見科学的に見えることであってもすぐ直感で決めつけてしまうのは危険だと思います。上で書いたように、一般の人々の中での“科学”とは、科学っぽいことや学問的なことの信仰がほとんどです。自分が信じたくない事に対して“科学”という護符を貼り付けて否定しているだけでは、それは、盲目的に幽霊を信じている事と一緒ではないでしょうか?逆に信じたい事に対してはそれらしい根拠を探し出して正当化する恐れがあります。

自分にとって気持ちの良い事、信じたい事であっても、客観的な立場からじっくり検証を重ねることが大事なのだと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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