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スタートアップの『経営企画』って何するの? ~激動のシリーズB調達前後のリアルをギリギリまで見せます~

こんにちは!
株式会社カンリーで、社長室をしている石地です。
私は、シリーズA調達直後にカンリーにジョインし、経営企画や事業開発の役割を担う独立部署として「社長室」を立ち上げ、その推進をしています。
今回シリーズBの資金調達を完了したので、これまでにやってきたことや、スタートアップの経営企画/事業開発の役割として感じたことを、noteに書いていきたいと思います!
よろしければ最後までお付き合い頂けると嬉しいです!

<調達にあたり採用サイトもリニューアルしました>


「社長室」の立ち上げ経緯

少し私の経歴について触れさせて頂くと、
早稲田大学大学院を修了して、新卒で経営共創基盤(IGPI)という経営コンサルティングファームに入社し、企業再生のプロジェクトを中心に、経営戦略とその実行、及び中期経営計画策定やM&Aのための財務/会計など幅広い経験を積ませてもらいました。
(前職の環境には、今でも本当に感謝しています!)

そこから縁あってカンリーにジョインすることになったのですが、カンリーが到達したいレベルと当時のギャップから解決すべき課題を挙げていくと、
 ・年間予算が作れていない
 ・財務会計・管理会計が整備されていない
 ・ビジネスプロセスやKPIの可視化ができていない
 ・事業戦略が決まっていない
 ・採用が追い付いていない
 …等
と多岐の領域に渡っていました。
そして、これらの課題を解決するためには、テーマごとに関係各部署を巻き込んでタスクフォース的な動きをする必要があるため、『その時々で重要な経営課題に対して遊軍的に関わる独立組織』として社長室を一人で立ち上げることになりました!

カンリーへの入社と、社長室の立ち上げ経緯はこちらにも記載しています!

「社長室」立ち上げ当初の会社の状況

当初を思い返すと、シリーズAの資金調達直後とはいえ、なかなか壮絶な状況でした。。
一言で言うと、現状把握ができる状況ではなかったという感じです。

『売上高の正確な数字が見当たらない?!』

当初は、財務数値も事業のKPIについても、正確な数字を把握できるものが存在しておらず、誰も正確な数値を掴めていませんでした。
(もちろん、会計システムはありましたが、当時は専任の経理担当がいなかったこともあり実態とズレたものになっていました。)

原因は明確で、事業の成長スピードが早すぎて、組織/仕組みの構築が間に合っていなかったためです。

一番最初にやったこと

そこで、社長室として最初にやったのは、①全社の予算作成②ビジネスプロセスの整備 の2つです。

①全社の予算作成(1ヶ月目)
予算作成のためには、事業のKPI分解と直近の実績を把握することが必要なので、各部署の主要メンバーとそれぞれ膝詰めで業務理解とKGI/KPI分解をしていきました。

KPIツリー例(全体)
KPIツリー例(営業)

実績の把握では、超泥臭く契約書を全件確認して正確な売上管理表を作るところからやったりもしました。汗

②ビジネスプロセス整備(2ヶ月目~)
SaaSではビジネスモデル的にパイプライン管理(≒案件管理)が非常に重要なのですが、当時は部署ごと/個人ごとに独立した作業シートがいくつも出来ており、誰も全体像を把握できない状態でした。
そのため、まずはスプレッドシート上でパイプライン管理ができる枠組みを整備して、プロセスKPIが把握できる状態を作ることを優先しました。

プロセス管理シートのイメージ

シリーズB調達までに実現してきたこと

シリーズB調達となると、シリーズA調達の時から求められるレベル感が一気に上がるので、企業運営のステージを引き上げるところが一番大変です。

シリーズA・シリーズBそれぞれのポイントは下記です。
 ・シリーズA: PMF(Product Market Fit)していることが大事
 ・シリーズB: "継続的な"事業成長が見込めることが大事

この"継続的な"という点が結構大変で、過去の成長実績はもちろんですが、今後の成長性を説明するためにも下記のような内容を論理的に整理できている必要があります。
 ・なぜこれまで事業成長できてきたか?
 ・市場性はあるのか?
 ・競合優位性がどこにあるのか?
 ・これからどんな戦略で事業成長させていくか?
 ・その実行施策としてどのようことをやっていくのか?
 ・その結果として、どんなPL/BS/CFの状況になるか?

そのためにやったこととして、大きく3つを以下に書いています。

①ビジネスプロセスの見える化

嬉しいことにスピード感をもって事業成長できているので、前述のスプレッドシートでのパイプライン管理も早々に限界を迎えることになりました。(完全に嬉しい悲鳴です…)
そこで、SFAツールの導入と併せてオペレーションの再設計をプロジェクト化して推進することにしまして、各部署のマネージャー陣を集めてチームアップし、自身が推進役となってビジネスプロセスを一から再設計していきました。
実装までの苦労は数え切れないですが、ここでは割愛してアウトプットの一部紹介に留めます。

▶カスタマーダイナミクスの概念導入
SaaS企業で一般的な、リード→商談→顧客という単純なプロセス管理ではなく、TAMとなる企業群全体に横串を刺してステータス分布を動的に把握できるようにした概念となります。

ビジネスプロセス整備にあたり導入したカスタマーダイナミクスの概念

これにより、例えば業界ごとの導入率や、アプローチできている比率、余白の具合などが分かるようになります。

▶業務フロー整備
従来のオペレーションをただツールに移すだけでは根本解決にならないので、SFAツールの導入に伴い業務オペレーションも一から再設計しました!
実際には、SFAの設計と業務オペレーション設計は行ったり来たりしながら作り上げるものですが、SaaSのビジネスプロセスはマーケ~CSまで繋がっている必要があるので、これをチャンクごとに区切って整理しやすくしていきました。

チャンクごとに分割した業務フローの繋がり
業務フロー例(インバウンドリード獲得からの業務フロー)
※各チャンクにつき1枚以上の業務フローを整備していきました

ビジネスプロセスの見える化をすることで、KPIを把握することが出来るようになり、初めてクリアに戦略・戦術を立てられるようになりますので、事業運営の土台作りをしたというイメージです!

②中期経営計画の策定

中期経営計画策定というと、何となく分かりそうで分からないという方もいらっしゃるかもしれませんが、要素に分けると、
 中期経営計画の策定 = 経営戦略策定 + 数値計画作成 + 計画書作成
だと捉えていて、それぞれに必要な要素は下記のようなイメージを持っています。

中期経営計画策定に必要な要素

事業・財務・会計を横断した知識なども含めて、総合的なスキルや思考力が求められつつも、実は様々なレイヤーの方々を縦横無尽に巻き込むことが何よりも大事だったりします。

この中期経営計画を基にシリーズBの資金調達を進めることになるので、特に事業成長シナリオについては侃々諤々の議論がありましたが、投資家からは非常にご評価頂ける計画を作ることができました!

③予実管理体制の構築

予実管理を実現するためには、実績数値を早く・正確に把握できる必要があるのですが、そのためにやらなければならないのが財務会計と管理会計の整備です。

▶財務会計の整備
特にスタートアップのシード~アーリーフェーズにおいて、財務会計でありがちなのは、
 ・売上高が正確な数字と完全一致していなかったり
 ・本来使うべき科目が正確に使われていなかったり
 ・そもそも原価と販管費の区分をしていなかったり
 ・財務会計上のキャッシュ残高と実際のキャッシュ残高がズレていたり
 …等
ですが、カンリーでもこれらは全部を整備していきました…!汗

▶管理会計の整備
管理会計では、財務三表とKPIをそれぞれどの粒度でモニタリングしていくべきかを設定して、それを実現するために仕組みを整備していきました。
 ・売上高の内訳区分
   - 事業/商品区分の整理
   - SaaS収益かNon-SaaS収益かどうかの整理(→SaaS企業特有の整理)
 ・費用科目の集約
   - 販管費をR&D/S&M/G&Aの3つに区分(→SaaS企業特有の整理)
   - 主要な費用科目に集約してコスト構造を簡素化
   (例:給与/賞与などを「人件費」として括って把握する、等)
   (例:ノンコアな費用科目は「その他経費」で括る、等)
 ・プロセスKPIの設定と月次の数値把握の仕組み化
   - 収益面では、顧客数や導入店舗数の新規獲得数・累計数、等
   - マーケティング面では、リードソース別のCPAやCVR、等

上記の会計周りの整備では、設計は社長室で主導したものの、実際に整備・運用して頂いたのは経理チームなので、経理チームのオペレーションスキルの重大さを実感しました!(本当に助かりました…!)

財務会計と管理会計の整備は中期経営計画策定前から着手していましたが、会計周りの整備と予算(もしくは数値計画)が揃って初めて予実管理体制が構築できますので、やっとこのフェーズにたどり着いたという感覚です!

▶予実管理体制の構築
予算や計画が作れたら、実績の進捗状況をモニタリングできる体制を作り、経営のPDCAを回していく必要がありますが、予実管理体制を構築する上で重要なのが、モニタリングシートの作成予実管理の運用整備です。

モニタリングシートの例(FS)
モニタリングシートの例(KPI)

モニタリングシートは、会計システムから出力した総勘定元帳を貼り付けるだけで、簡単に毎月の実績更新ができるようにしています。
予実管理はいかに運用を回し続けられるかがキモなので、作業負荷は最小化して、且つ視覚的に分かるアウトプットを作るのが大事!
運用面も以下のように設定して月次のサイクルを作りました。

予実管理の月次サイクルイメージ

これによって、これまでクリアに見えていなかった数字が見えるようになったため、経営体制に安心感を持って頂き、投資家とのコミュニケーションも非常にスムーズになりました!

ここまでたどり着くのに、丸々1年間かかってしまいました。。

シリーズB調達後の役割

今回シリーズBの調達が完了しましたが、これまで社長室の役割としてやってきたことはどちらかというと「土台作り」の意味合いが大きかったので、これからはより事業成長・企業成長にコミットしていかなければなりません。

①既存事業のグロース

嬉しいことに、これまでは市場の拡大にも乗じてかなり好調に事業を成長させることが出来てきました!
他方で、成長市場だからこそ競合サービスも出てきており、今後はより戦略的に戦い方を見直していく必要も出てきます。

そもそもSaaS事業の特性として、様々な企業が汎用的に使える機能をプロダクト化して提供するものであるので、どうしても機能面はコモディティ化しがちです。
そうすると、機能面での差別化はその瞬間でしか意味をなさないので、中長期的にどこで自社なりの勝ち筋を見出してMission/Vision実現のためのポジショニングを築くかが大事!
それに向けた足元の動きとして、
 1.マーケ・営業戦略を立て、スピーディーに実行~改善サイクルを回す
 2.オペレーショナルエクセレンスで戦える状態にする
 3.新規ソリューションの開発で独自性を創出する
を推進していくことが経営企画/事業開発として必要になります。

②新規事業開発

カンリーが成長して屋台骨となる事業ができてきたので、会社の成長を加速させるためにも早くから新規事業に着手することになりました。
今回のシリーズBで調達した資金も一部使って、社内で事業投資をしていくようなイメージです!
なので、位置づけとしては既存事業からは切り離した独立チームで1から新規事業を開発するというものになります。

ざっくりとやることを記載するとこんな感じです。
 1.社内での事業投資における判断基準を作る
 2.新規事業の方向性を定め、スモール且つクイックに検証を行う
  (サラッと書いてますが、産みの苦しみでめちゃくちゃ大変です…)
 3.新規事業の事業計画を作成し、モニタリングしながら事業作りをする
  (≒会社はシリーズBのフェーズなので、ノリと勢いだけではやらない)

実際のところ、新規事業チームの立ち上げに際して、『既存事業にリソースを集中させて確固たるポジショニングを築くことの方が優先ではないか?』といった議論もありました。
どちらが正解ということはないので、その中で意思決定をして自分たちでその意思決定を正解にしていくというのがスタートアップ経営のリアルだと常々感じています!

今後の成長を支えるために

企業のフェーズから考えると時期尚早かもしれませんが、深化×探索の両利きの経営を小さいながらに実践するとして、
 ・深化: 既存事業のグロース
 ・探索: 新規事業開発
を両輪で回していくことにチャレンジしていきます!

カンリーでの両利きの経営へのチャレンジ

また、新規事業を1つの事業として確立できた先では、
 ・事業ポートフォリオを踏まえた経営戦略の策定、及び組織設計
 ・非連続な成長戦略の手段としてのM&Aのような飛び道具の検討
 ・さらに新しい領域での新規事業開発
といった役割を担っていく必要があり、これから先にもワクワクする要素が存分に詰まっていて楽しみでもあります!

経営企画/事業開発の人員強化

これまで記載の通り、企業の成長フェーズに応じて、やりたいことがいっぱいあり、ワクワク感の宝庫のような環境です!
一方で、私一人のリソースでは限界があるのも事実です。
現に、実はシリーズBの調達以降、私は新規事業の立ち上げに100%コミットしています。(個人のWillを大事にしてくれる会社には本当に感謝です!)

社長室にジョインしてくれたメンバーもいますが、それでも全社目線での経営企画機能や事業戦略立案機能、事業開発機能など、やりたいことに対して人手がボトルネックになっているのは実情ですので、強い会社を作るためにも経営企画/事業開発の人員を強化をしていかなければならないと思っています!

ここまで読んでいただいた皆様ありがとうございます!!
この記事で少しでも興味が湧いた方にとっては、自分次第で何にでもチャレンジできる環境です!
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