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カメムシ・・・怖い

先日、行きつけのマッサージ店に行った時のこと。
予約時間の5分前に店へ着くと、いつものように顔馴染みの担当者の女性が
「こちらへどうぞ」
と、カーテンで間仕切りされたベッドの方へ案内してくれた。

普段なら荷物とポケットの中身を所定のカゴに入れて、すぐうつ伏せになるのだが、一歩引いた場所に立っていた彼女が、指先でベッドの下をさし示している。
そこを見てくれ、と私を促しているのだ。
彼女の指先が示している先に視線をやると、スーパーなどのサッカー台にロール状で置いてある、薄っぺらいナイロン袋が風に飛ばされたゴミのようにふわっと落ちている。

ナイロン袋?
と怪訝に思い、少し近づいて凝視すると、鮮やかな黄緑の点のようなものが袋にくっついている。
振り返って彼女の顔を見ると、
「カメムシ・・・・」
訴えかけるように小声で呟いた。
カーテン越しには、他のお客さんがいるのだ。

声をひそめながら話を聞いてみると、ベッドの下にカメムシがいるのに気づいた彼女は、店にあったナイロン袋で捕獲を試みたが失敗に終わったらしい。
そんな状態の時に、私の前に予約していたお客さんが来てしまったので、打ち明けることもできずにそのままの状態で施術したらしい。

彼女は、カメムシは刺激すると臭いということだけは知っていたようで、
カメムシは臭い、だから怖い、そこへお客さんが来てしまった、言えない、言えないから何事もないように振る舞い施術した、ずっと足元に怯えながら・・・。
何も知らないお客さんはマッサージを受けながらスヤスヤ眠っていたそうだ。

そして、なんとか前のお客さんには気づかれずにやり過ごして、次にやってきた顔馴染みの私に打ち明けたと言うことだった。


私は、カメムシを刺激しないようにその袋に丸め込んで輪ゴムで止め、ゴミ箱に捨てるように彼女に渡した。
その後はいつものように施術してもらったのだが、私はうつ伏せになってから前のお客さんが施術されている時の絵面が頭に浮かんで、可笑しさが込み上げてきた。

逃げ腰気味に施術している彼女、何も知らずにベッドで睡魔に包まれているお客さん、そしてその下には黄緑のカメムシ。
カメムシは、もしかしたら床を這い出すかもしれない。
そんな恐怖と闘いながら、落ち着かない視線で施術を続ける担当者。

まるで、ドリフのコントにありそうな設定だ。
笑いを堪えるのが大変だった。

カメムシ臭い、カメムシ怖い・・・・・・(笑)


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