OpenAIのアルトマンCEOが共同設立した「World Coin」とは何か Vol.1
OpenAI社が開発したChatGPTによってAIが新時代へと突入し、世界中を巻き込んで大変な騒動になっていますが、同社CEOのアルトマン氏が共同設立者に名を連ねる仮想通貨プロジェクト「World Coin」もまた、世界中で物議を醸しています。
World Coinが対象としているのは「デジタルアイデンティティ」つまりは個人情報(身分証明)です。これまでの仮想通貨とは違ったアプローチであり、規模間もめちゃくちゃデカいです。
このWorld Coinと名付けられた大規模なプロジェクトと、それが世界中で引き起こしている議論について詳しく見ていきましょう。
Worldcoinのビジョン
世界中のすべての個人に検証済みのデジタルアイデンティティ(デジタル上の身分証明書)を作成することを目的として設立されたWorldcoinは、ニューヨークから東京までの都市に印象的な金属製のオーブを展開しています。
このオーブという装置は、ユーザーの網膜をスキャンする装置で、網膜スキャンによる認証を行ったユーザーには仮想通貨(WLD)が付与されます。
このプロジェクトには既に1億ドル以上の資金が集まっていて、資金提供者にはCoinbaseなどの暗号通貨界のビッグネームも含まれます。
仕組み:World IDとプライバシー
ユーザーがWorld Coinのアプリに登録すると、「The Orb」という独自の技術を使用して網膜がスキャンされるスキャンステーションを訪れるように指示されます。網膜スキャンを行うことによって、「World ID」というデジタルで分散型のパスポート(身分証明書)が作成されます。
World Coinは、氏名や生年月日、住所などのプライバシーを犠牲にせずに、人間の存在を認証する手段となることを目指しています。
技術的なことに言及すると、World Coinは「ゼロ知識証明」という暗号技術を使用して、実際のWorld IDから生体認証データを分離すると強調しています。開発者たちは、これによってユーザーの個人情報を保護する堅牢な方法であると主張しています。
ただし、みんなが納得しているわけではありません。例えば、エドワード・スノーデンは生体認証を使用しないよう警告していて、私たちの物理的属性(網膜)を単なる個人特定検証器として使うべきではないと話しています。
より広い意味での影響と目標
Worldcoinの目標は、デジタルな個人認証に限定されていません。このプロジェクトはまた、そのネイティブな暗号通貨であるWLDを使用して、ユニバーサルベーシックインカムを配布することも検討しています。さらに、World Coinは、個人情報を公開することなく、World IDをウェブプラットフォームへの単一のサインインとして使用するアイディアも推進しています。
つまり、オンライン上での様々な活動の個人認証に、World IDを使用するように普及させようとしています。
しかし、World Coinがユーザーを引き付けるために採用した方法は懐疑的に受け取られています。例えば、米国以外の国々でWorld Coinに登録したユーザーには60ドル相当の暗号通貨がインセンティブとして提供されており、これに関して一部の批評家は、これを酷い戦略だと批判しています。
世界的な反応
World Coinの運営に対する世界的な反応は様々です。
ケニア政府はWorld Coinの技術を完全に禁止し、フランス、ドイツ、イギリスなどの国々はそのビジネスモデルを詳しく調査しています。さらに、World Coinのグローバルな情報発信と現地で実際に行われていることとの間に乖離があることで、さまざまな憶測が飛び交っています。
World Coinは現在、これまでよりもアプローチを洗練させ、プライバシーへの取り組みを強調するために、積極的に各国の政府との連携を進めています。
結論として
World Coinプロジェクトは、革新性が注目を集める一方で、激しい論争の渦中にあります。今後ますますデジタル化される世界になる中で、個人情報、アイデンティティ、プライバシー、分散化に関する議論が最も重要となります。
World Coinの網膜スキャンの提案は、現代の時代において、どのようにしてデジタルな自己を理解し、定義するかに関する広範な議論の始まりに過ぎません。
これからのWorld Coinの展開に注目しましょう。
こちらからサポートいただいたお金は、書籍購入やリサーチなどの費用に充て、さらに内容の充実したnoteでの情報発信を行うことに活用させていただきます。