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新曲MV「Graphene Night」


 この曲を作るに当たってまず意識したのは、現代の、或いは令和のシティポップにしようということでした。
 高層ビルに囲まれた広々とした公園で、夜な夜な遊ぶZ世代の男女達を度々目にすることがありまして、彼らのメンタリティに思いを馳せたのが曲想が浮かぶきっかけとなりました。
 スケートボードだったり、Bluetoothスピーカーで音楽を鳴らして、だべったり踊ったり、都市の夜遊びと言っても、彼らのそれには盛り場のギラギラした要素が感じられず、僕の目には恋愛模様すらも希薄に映り、爽やかにしなやかにお金をあまり掛けずに楽しんでいるように感じられました。
 ただ、それでも漠然とした、或いは具体的な不安はあるのだろうとも思います。そこを上手にいなして今を謳歌しているようなそんな、印象を持ちました。

 タイトルの"Graphene”ですが、炭素原子がシート状に六角形に結合した物質で、柔軟さと強靭さを兼ね備え、電気伝導率は銀より高く、熱伝導率は銅の約10倍という、最強のナノカーボン系素材と言われています。
彼らのしなやかさをGrapheneのイメージに重ね合わせたというわけです。

 思うに、70~80年代前半のシティポップは、その時代の都市生活のイメージが反映されているように思います。なので、今の都市生活の一端を曲にするならば、当時と同じような詞世界にはならないわけで、音楽性の面でもより複雑化せざるを得ないと考えました。

 故に、コード進行もメロディラインもアンサンブルも、わりと複雑怪奇かつ挑戦的なアプローチを幾つも行いました。
 冒険が過ぎるという批判を受けることもありますが、音楽的に新しい(と僕が思う)試みを幾つも、従来のシティポップのフレームに重ね合わせてインサートしているのですから、当然のことと思います。一方、これらの冒険を肯定的に評価していただけることもあり、リスナーの皆様それぞれの感性、鑑賞の解像度、聴き方の方向性などがレスポンスに如実に顕れているように思います。

 長々と理屈っぽいようなことを書きましたが、皆様の耳に心地良く、或いは刺激的に、また或いは何らかの良いヴァイブスが伝われば、それ以上の幸いはありません。

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