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MV「De noir à bleu」 /セルフレビュー

【歌ってみた】とありますが、自作のボカロヴァージョンを自分で歌ってみたという意味です。いわゆる「セルフ歌ってみた」ですね。

"De noir à bleu" とはフランス語で「黒から青へ」という意味です。
曲想を思い立ったのは、フランス映画のような曲を作ってみたいと思ったのがきっかけなのですが、出来上がった曲はJ-POPの域内に収まりつつコンテンポラリー要素の濃いものになったような気がします(笑)。

ラブソングのようで、失恋ソングのようで、抒情歌のようで、そのどれでもなく、どれでもあるような、そんな気がしています。

「黒から青へ」の「黒」は夜であり、闇であり、その情景であり、心象でもあります。「青」は朝であり、昼であり、青空であり、光であり、その情景と心象なのです。
未明から朝になって行く時の移り変わる全て、午後から日が暮れて宵闇に包まれて夜になって行く時の変化する全て。そこに別れ行く恋人との関係性や、今とこれから、人生の浮き沈み、などを重ね合わせています。

サウンドも、詞の世界と同じく重層的です。
最近はギターレスのトラックを作る傾向にある僕ですが、この曲もギターレスです。そろそろギターを意欲的に入れるトラックを制作したい衝動が湧いて来つつあるのですが。
聴きどころは、リスナーの皆様それぞれにお任せしますが、僕が自分で思う、思い入れのある要素を少し書きたいと思います。

まず一つは、ドラムとベースとボーカルのコンビネーションです。
ジャズベースがボーカルのメロディと対旋律的に動くような箇所があるかと思います。つまり、ベースラインに着目して聴くと音像の印象が変化するかと思います。味変的な。

次に、Bメロ(「ビルの隙間を覗き込んだらオレンジ色の東雲」から始まる)で転調して、Cメロ(サビ)で元の調に復調するという要素です。サビに繋がる発展性、情景のふわっとした変化を調の変化で表しています。何となしに聴いていると転調を感じないかもしれません。転調ありきで作ったわけでもないですし、自然な成り行きを意図しています。

Cメロ(サビ)では、心が晴れていくことと、そこには少しの憂いが内包されていることを表現しています。いかに心が晴れようと、前を向いて過去を振り切ろうと、憂いはワインのオリのように少しずつ溜まって消えません。それを少し携えて自分の持ち物にして、僕は一人の個として旅立ちます。
また、憂いとともに、かつて築いた人との絆の一部もまた自己の一部になるのです。

「寂しさと孤独は違う」ともラストで歌っていますが、これは孤独を肯定するものです。寂しさを伴わない孤独もあるのです。それは自らポジティブに選び取るものです。寂しさを過去に置き去って、孤独のみを連れて行くというイメージでしょうか。別れた人達とそれぞれ前を向いて別の道を行くのなら、寂しくはないのです。そのことはラスサビ前のDメロでも示されています。が、そのように明確に割り切れるものでもないことを、ラストで「僕に言い聞かせて」と歌うことで表現しています。

間奏のピアノソロは、ジャズからの影響が濃く出ています。
前半4小節と後半4小節とで、リズムが違い、調性の捉え方も少し変わっています。敢えてアボイドノートを用いることで、生きることの曖昧さを表現しました。と、書くと薄っぺらくも思えますが、僕なりに考え抜いた帰結です。

書き出すとキリがないので、この辺りにしておきますが、何度も聴くことでいろいろな要素への認識を得ることが出来るような楽曲になったのではと思います。
キャッチーの逆を行く要素と、キャッチーを意図した要素とが同居するような楽曲を目指しました。





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