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愛のカタチと赦しの是非ー映画「そして、バトンは渡された」感想ー

久しく投稿が空いてしまいましたが、ぼちぼち元気にしています。
先日、2021年公開の映画「そして、バトンは渡された」を見てみました!

*以下内容のネタバレを含むのでご注意ください。
*なお、原作未読、称賛のみとも限りませんのでその点もご了承ください。

正直なところ、本作の事はずっと気になってはいたのですが、俗にいう「お涙頂戴」作品なのかな、っていう若干の抵抗感があったんですよね。
良い作品を見て涙を流すこと自体は決して嫌いではないんですが、「あなたもきっと涙する!」みたいな、いかにもな「泣かせ」演出には冷めてしまうタイプなので、、、そういったネガティブな印象からなかなか見れずにいました。

でも、冬ドラマで永野芽郁さん、田中圭さんの出演作品を見て、お二人の演技、お姿、どちらも素敵だなと思っていたタイミングだったので、これを機にお二人とも出ているこの作品を是非見てみたいと思って。
意を決して(?)見てみました。


雑感

結論としては、「お涙頂戴演出」が全くないわけではなかったですが、それだけではないな、とも感じました。
きちんと内容に厚みがあって、登場人物それぞれの物語や心情が丁寧に描かれていて。その上での「感動演出」だから許せる、というか。
「泣かせ」演出に泣かされた、というよりは、ちゃんと物語に感情移入して素直に泣けた気がしました。

原作は読んでいないので、どのくらい原作と異なっているのかは分かりませんし、「エモーショナルな感じにしすぎ」という原作ファンの意見があることも存じています。でも、少なくとも映画だけ見た自分としては、十二分に満足できる作品でしたし、色んなことを考えさせられる作品だなと思いました。

「親たち」の愛に思うこと

テーマ、とても難しい作品ですよね。
梨花さんの言動を美化して良いのか、
泉ヶ原さんや森宮さんの愛は本当に純粋な「愛」だったのか、
見ていてすごく悩みました。

それぞれの人物に感情移入できないわけではないんです。
皆不器用で身勝手で、好きになれないところもあるけれど、でも自分なりの信念を持って必死に生きている感じもして、嫌いにはなれませんでした。

梨花さんの言動も、身勝手なものだったけど、私も優子ちゃんと同じように、彼女に怒る気にはなれませんでした。でも、優子ちゃんの人生を思うと、「仕方なかった」で済ませてはいけないような気もして。

再婚相手の父親たちもそうです。性的に搾取したり、その他何らかの思惑から惰性的に面倒を見たり、そういう物語も多く読んだことがあります。だから、彼らがどれだけ優しそうに見えても、その愛が純粋なものなのか、私は彼らを信じ切ることが出来なくて。
優しくて、平和主義で、「優子ちゃんの父」であろうと必死だった森宮さんを嫌いにはなれません。多分世間的には「いい人」です。
血のつながりがないからこそ、父親とは何か、どうあるべきかって沢山悩んだでしょうし、彼が優子ちゃんをずっと見捨てなかったから、彼女も精神的に安定した大人になれたのかな、と思います。それに、優子ちゃんが森宮さんを見て料理人を志したのだとしたら、彼女が心から森宮さんを慕い、信頼していたことは確かです。
でも、彼の愛が「父性」だったのか、私には分かりませんでした。

優子ちゃんの赦しの是非

優子ちゃんが「親たち」にされたことを赦し、感謝を伝える描写も確かにハッピーエンドとしては良かったです。優子ちゃんの周りに彼女を愛してくれる沢山の大人がいて、愛に囲まれた結婚式のシーンはとても美しくて。
でも一方で、どこか暴力的にも見えました。
なんだろう、本当にこれで良いのだろうか、って。
もちろん、「自分の人生はこれで良かったのだ」と思うことが、受け入れることが、優子ちゃんにとっては最も幸せな考え方だったのかもしれません。自分の人生に絶望したところで、失った時間は取り戻せませんからね。
それならば、この大人たちの「おかげ」で今があると思った方が、幾分か救われるのかもしれません。
でも、身勝手な大人たちに「みぃたん」の平穏な暮らしが奪われ続けてきたのもまた事実で。その責任は、罪は、たとえ優子ちゃんが赦しても、一生赦されるべきではないような、そんな気もしました。

早瀬賢人は信用に値するのか

最後に、早瀬君との結婚、私は二人の今後がすごく心配になってしまったんですよね、、、
漫画から飛び出してきたかのような、キザで優しい子ではありましたけど、所詮バイト生活の短大卒と、ピアノは弾けるけれどまだ何者でもない元音大生の夫婦、じゃないですか。夫婦って「好き」って気持ちだけではやっていけないと思うし、それは梨花さんを見ていれば痛いほど分かっているはずなので、この二人、大丈夫かなぁと、、、
まだ若い2人が、特にこれまで沢山苦労してきた優子ちゃんが、これ以上苦しまない人生であってほしい、と願ってしまうエンディングでした。
まさしく「親たち」と同じ気持ち、だったんでしょうか。
先の見えない人生を、期待と不安を両方抱えて歩みだすのが、まさしく人生なのでしょうか。森宮さんもそんな気持ちで、「バトン」を渡したのかな。

総括

そんな感じで、2時間越えの映画は久しぶりに見ましたが、限られた時間の中で、1人の女性の人生をあれほどのロングスパンで描くとは思ってもいませんでした。優子ちゃんを軸にした作品のように見えて、梨花さんが裏主人公のようにも思えて。梨花さんの生き様が優子ちゃんにきちんと受け継がれていたラストは、圧巻でしたね。

何となくの印象で避けてきてしまっていた作品でしたが、このタイミングで見られて良かったです。原作も今度きちんと読みたいです。

それでは、今日はこの辺で。




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