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第11話 カピちゃん、ロボ君に会いに行く。~その3~

「『お金』というものは、人間が作り出した仕組みの1つなんだが、これが厄介なものでね。人間は『仕事』をして『お金』をもらうと、その『お金』を色々なものと交換することができる。『お金』は食べ物や、家や、遊びや、病気やケガの治療にお金を使うことができる、非常に便利なものなんだが、そのお金を手に入れるために、人は嘘をついたり、たくさんの動物や人を殺したりすることがあるんだ。だから、お金の使い方には十分に気を付けないといけない。この輪廻の森ではお金の使い方についても学んでもらうから、カピちゃんもよく勉強して欲しい。」
と、銀色と鳥は言ってカピちゃんの目をじっと見つめました。

「ええ・・・『お金』ってなんだが厄介なものなんですね・・・私に使いこなせるかなあ・・・」
と、カピちゃんはなんだか自信が無さそうに言いました。『仕事』や『お金』など、よくわからない単語がたくさん出てきたので、カピちゃんは生まれ変わって人間として生活するのが大変そうだなあと思い始めました。

「あの・・・私は必ず人間に生まれ変わらないといけないんでしょうか?私としては、またカピバラに生まれかわるのでもいいんですけど・・・。」
と、カピちゃんは生まれ変わって人間として上手くやっていく自信がなくなってきて、おそるおそる銀色の鳥に聞きました。

それを聞いて銀色の鳥は大きく溜め息をつくと、カピちゃんの目をじっと見ながら少し悲しそうな声で言いました。
「世の中には変えるのが難しい流れというものがあってね、カピちゃんが人間に生まれ変わることになったのもその流れの1つなんだよ。たくさんの動物たちの悲鳴が変革を求めている。ワシら森の精霊は、その悲鳴に応えないといけないんだよ。」

(変えるのが難しい流れというものがある・・・私が人間に生まれ変わることになったのもその流れの1つ・・・)カピちゃんは銀の鳥が言った言葉を頭の中で何度も反芻しました。
「・・・そうなんですね・・・カピバラに生まれ変われないのは残念ですけど、変えられない流れなんですね・・・。」
と、カピちゃんは残念そうに言いました。

「カピちゃんは次の生では人間に生まれ変わることが決まっているけど、その次の次の生ではカピバラに生まれ変わることができるかもしれないよ。そこまではまだ決まっていないからね。たから、次の次の生でカピバラに生まれ変わっても良いように、カピバラを含む動物たちの状況をもっと良くして欲しいんだ。人間に生まれ変わったら、動物たちの状況を良くするチャンスは、たくさんあるからね。」
と、銀色の鳥はニコっと笑ってカピちゃんに言いました。

「そうですね!次の次の生でカピバラに生まれ変わっても良いように、人間に生まれ変わったら動物たちの状況を良くしたいと思います!」
と、カピちゃんは少し元気を取り戻して言いました。

「カピちゃんがわかってくれて良かった。輪廻の森には他にもいくつかルールがあるんだが、もう日が暮れてきたので、残りはロボ君の家で話そうか。ところで、カピちゃんは空を飛んだことはあるかい?」
と、銀色の鳥はカピちゃんに聞きました。

「空を飛んだことですか??もちろん無いですよ!!」
と、カピちゃんはびっくりして答えました。

「では、今日が空を飛ぶ初体験になるね。ロボ君の家まで飛んでいくから、私の背中に乗りなさい。」
と、銀色の鳥は言うと背中をかがめました。すると、その姿はどんどん大きくなり、背中はカピちゃんが乗っても大丈夫なくらい十分な大きさになりました。

「この上に乗るんですか?大丈夫かな?落っこちないかしら?」
と、カピちゃんは驚いて大きな声で言いました。

「ゆっくり飛ぶから大丈夫だよ。それに、落っこちてもカピちゃんはもう既に死んでいるから、さらに死ぬことはないよ。」
と、銀色の鳥は少し可笑しそうに言いました。

「・・・それもそうですね。では、背中に乗ってみます。」
と言ってカピちゃんは大きくなった銀色の鳥の背中に乗りました。銀色の鳥はゆっくりと飛びたつと、どんどんと空高く舞い上がりました。カピちゃんたちが居た森の木々がどんどん小さくなっていくのが上から見えました。

「綺麗!なんて凄い景色なんだろう!!」
と、カピちゃんは感極まった声で言いました。遠くの方で、オレンジ色の太陽がゆっくりと水色がかった地面の方で沈んでいくのが見えました。すぐ下には色とりどりのたくさんの家が並んでいて、色々な動物たちが蟻のような大きさで動いていました。

「あの水色の地面はなんですか?」
と、カピちゃんは銀色の鳥に聞きました。

「水色の地面?ああ、あれは海だよ。この輪廻の森は島の中にあるんだ。だから、海に囲まれているんだよ。」
と、銀色の鳥は言いました。

「『海』ってなんですか??」
と、カピちゃんは興奮しながら銀色の鳥に聞きました。

「海っていうのは、巨大な池みたいなものでね。そこにもたくさんの動物たちが住んでいるよ。今度海に行ってみようか。」
と、銀色の鳥は言いました。

「行ってみます!ぜひ『海』を見てみたいです!!」
と、カピちゃんはさらに興奮しながら言いました。そして、動物園から勇気を出して出てきて良かった、とカピちゃんは思いました。『車』にぶつかったり、よくわからない『学校』というところに行くことになったり、人間に生まれ変わるという変な課題を押し付けられたり、困ったことがたくさん起こりましたが、動物園にいたら絶対に空を飛ぶことも、こんな凄い景色を見ることも、『海』に行くこともできなかっただろう、とカピちゃんは思いました。

~第12話につづく~

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