挫折の先にある素敵な世界

私の趣味はレザークラフト。休日に、手縫いで革小物やバッグを製作している。

レザークラフトを始めてかれこれ5年近くになる。きっかけは大学卒業後の販売の仕事だった。大学を卒業して就職先が決まらず、いわゆるニートになってしまった。就職難で、就職先が決まらずに卒業式を迎えると、失業式と揶揄され、とてつもない屈辱を味わうこととなった。

ゴールデンウィーク明けに契約社員として、銀座で販売の仕事を始めた。レザーケア用品の担当になった。この頃の私は新社会人で革製品を買うお金もなく、全く興味が持てず、それでも知識を身に付けなくてはいけないことが正直苦痛な毎日だった。それでも働く場所が見つかっただけでも有り難いと思い、自分なりに何か収穫があれば、と必死だった。

そこで、隣の売場にあるレザークラフト用品に関心を持った。もともとモノ作りに興味があり、道具を買って本を見ながら始めてみた。しかし、想像以上に難しく、すぐに教室へ通い始めた。

簡単な革小物が作れたらいいと思い通い始めたが、すぐにレザークラフトの世界に夢中になった。将来仕事にしたくて新幹線や飛行機で遠くから通う人も多く、レベルが高い。きっと、この教室へ通わなかったら私はとっくにやめていたと思うが、教室へ行くたびにみんなの作品の完成度の高さに刺激を受け、もっともっと上手くなりたいと思える。素敵な世界に出逢えた。

何より、始めて良かったと思える一番の理由は、日常生活でのストレスを発散できること。モノ作りに集中していると、嫌なことを忘れられる。趣味を通じて出逢った仲間は年の差なんて関係なく明るく楽しく接することが出来る。

大学を卒業して難なく就職出来ていたら、この趣味には出逢えなかった。非正規社員は立場が弱い。経営不振になれば、人員削減の対象になる。冷やかな目で見られる。それでもがむしゃらに生きていたいと思った。そんな自分を悲観的に考えずに、そういう状況下でも成長したいと。

挫折の中で大切なものに出逢えた。