noteを読んだりバズった動画を見たりした

 最近noteを読むのが楽しい。もともと俺がnoteを始めたのは「俺がエピソードを次々に披露していくから楽しむといい」という尊大な態度で、そんな当時の俺など骨折すればいいと今は思う。noteの最大の魅力は読む方にある。

 頑張っている人、悩んでいる人、明るく生きていこうとしている人、世の中を世間と違った目線で見ている人、日常を面白おかしく語る人、感動を共有してくれる人、などなど。書いている人の人となりが伝わってきてすごく面白い。
 今日すれ違って、恐らく今後、友達になるような機会も無いような人も、もしnoteをやっていてURLを教えてくれたら一瞬で友達になって今すぐ一緒にラウンドワン(地球で一番楽しい施設)とか行けるのにと思う。

 俺は結構見た目に特徴があって、全身に赤いペンキを塗った333mの塔だから、すれ違ったらすぐわかると思うけど、普通の人間は塔じゃないので街の中で誰がnoteをやっている人なのかわからないのが残念だ。
 墨田区に似たような芸風のやつがいるらしいんだけど、あいつの方がエピソード強いんだろうか。少なくとも身長は向こうの方が高いらしい。

 それで俺は、俺のnoteを読んでくれる皆さんのことを友達だと思ってるから、みんなは俺のこと友達だと思ってないと思うけど、「東京タワー」だと思ってると思うけど、それはいいとして、友達に語るものと思って話すんだが、恥ずかしい話だ。

 noteを巡って知らない人の記事を読んでいたんだが、興味深い語り口だった。面白いなと思ってだんだん読み進めていくと、最大限ボヤかして言うとジブリの『耳をすませば』みたいな状況にある高校生であることがわかった。うらやましいな。

 時系列に沿って読み進めていくとどんどん状況が「良い感じ」になっていく。それで今では、『耳をすませば』の終盤の屋上のシーンみたいな状況にあることがわかった。つまりこう、そういうことだ。読んでる俺はといえば、屋上の出入り口から2人の会話を覗いているボンクラどもいただろ。あれだ。
 でも今回の聖司くんはフランスには行かないのだ。ただのハッピーエンドじゃないですか。

 コングラッチュレーションズ。いやあ、良かった良かった。素晴らしい。そうだな。オッケーオッケー。いいじゃん。
 いやいや、嫉妬とかはしてないよ全然ほんとほんと。ノーダメージ。
 ノーダメージ。ノーサイドの精神。ラガーマンだから俺たちは。
 ノーダメージ。

 そう。

 たまにどういうわけだか内臓に深刻なダメージを負ってることないか? なんかわかんないんだけど。原因はわかんない。なんか俺は今ね、内臓を中心に回復不可能なダメージを負っている。それで俺は腕を組んで、じっくり空間を眺めたあと、友達にそういうことがあったよって話を聞いてもらおうと思ってこれを書いてる。

 Youtubeショートを連続で見ていたら、あれは面白いな、砂で作った型に溶けたアルミを流し込んでスパナを作ってる動画とかついつい見てしまう。ポンポンとスクロールして色々なジャンルの動画が流れていく。すると、「映っちゃっただけかな、と思ったら」というタイトルの動画が流れてきた。

 NiziUの「縄跳びダンス」が流行ってたときがあったが、ちょうどその時期だ。

 放課後の学校だろうか、廊下が後ろに伸びている。カメラがメインで映しているのはこれから縄跳びダンスを披露するであろう一人の女子高生だ。タイトルの意味はよく分からんが、ダンスをする動画か。

 NiziUの「Make you happy」の陽気な曲とともにダンスが始まる。普通のダンス動画だ。すると、男子生徒が教室のドアから出てきてしまう。廊下に映り込んでしまうのだ。

 男子生徒は「誠実な剣道部」みたいな感じの長身のやつだ。良い奴そうだ。彼は廊下でダンス動画を撮影してるのに気づいて、わざとらしく迷惑そうな顔をする。

 迷惑そうな顔を保ちながらカメラのある方に向かって近づいてくる男子生徒。そこを通らないと帰れないのだろう。「まったく、こんなところで撮影なんかして」という顔をしながら避けて通ろうとする……、と見せかけて! 「笑ってほしっい〜」のところで女子生徒の前に躍り出てキレキレの縄跳びダンスを始めるのだ!

 これにはびっくりした。タイトルはそういうことだったのか。

 女子生徒は男子生徒の後ろから「ひょこり」と姿を現し、最後は2人で息を合わせて縄跳びダンスを披露する。

 そういう動画だ。そしてこれはめちゃくちゃバズっていた。

 五臓六腑のうちの四臓六腑がやられた音がした。なんだこれは。なんだこれは。

 俺が何のイベントも無く、やけにスムーズに家に帰って『ゴーマニズム宣言』とかを熟読している頃、放課後の学校ではこんな「青春」そのものが繰り広げられていたのか? あの頃はYoutubeショートもtiktokも無かったから知らなかっただけで! おいおい、だめだ全身から血が吹き出している。東京タワーが真っ赤な理由が発覚したぞ。

 無念だ。同級生と一緒に縄跳びダンスしてバズるだと? そんなことに相当する幸せな出来事など俺の人生で経験したことないぞ。一発で俺の人生の全てを超越してきたじゃねえか。よーし、わかった。もういいよな!? 誠実な男子生徒よ。もう十分だよな。あとの人生はたくさん寄付とかをして生きていってくれ。ユニセフとかあしなが育英会とかに。寄付してくれ。そうしないと帳尻が合わないんだ。俺と。

 人はどうしてもいつかは死んでしまうものだが、そのときは天国の門の前で神様と、色々とこれまでの人生についてのミーティングがある。罪深い者は煉獄の炎で罪を焼かれることになっているのだ。神様の右手には人生の全てが記録された一冊の本が持たれている。
 「どうだった? 生きてみて」
 「ええ、大変なこともありましたけど、おかげさまで結構楽しい人生でした」
 「それはよかった。それじゃあミーティングを始めます」

 「では次18ページ。なになに? 『同級生と縄跳びダンスしてバズった』? おぉ、そうなの?」
 「あぁ、高校生の頃ですね。あったなあそんなこと!」 
 「そうなんだ。楽しかった?」
 「楽しかったです! 一緒に練習して、本番は緊張しました。青春だったなあ……」
 「そっかそっか。それは良かった。楽しかった、と」

 神様は手元にメモをする。

 「普通人生で経験できる良いことを100とするじゃん。これはもうすでに5兆は行ってるよな」
 「そんな行ってます?」
 「そりゃそうだろ、序盤でそんな良いこと普通ないんだぞ。後ろのあいつ見てみろよ」

 後ろには俺がいる。

 「あいつなんかなぁ! 終わってるぞ。青春なんかゼロだぞゼロ」
 「はあ」
 「もう十分だよな。てことはあれだ、寄付とかしたんだよなその後の人生で」
 「え、寄付ですか? たまに駅前とかで100円入れたり……」
 「いやちげぇよ。まさかPS5とか買ってないよな?」
 「え、PS5買いました」
 「ああほんとだ、26ページに書いてあるな。君あれか、同級生と縄跳びダンスしてバズった上に、PS5まで買ったんか」
 「えぇ? まあ趣味で……」
 「そのぶん寄付しろよ! ユニセフとかあるだろ。あしなが育英会とか」
 「いやぁ……、数万ですよ?」
 「だめだ。強欲すぎる。PS4で十分だろ。煉獄で罪を償ってもらう。はい次、あ、お前はデブだからだめだ。煉獄で罪を償ってもらう。はい次」

 こうなるぞ。……ならねえよ!

 まぁ冗談で、俺は全ての人に幸あれと思っている。幸は多ければ多いほど良い。

 神様に与えてもらうもんでもないから、きっと自分で掴み取るものなんだろうな。俺もダメージを負ってしまった内臓が治ったら頑張ることにするよ。

 今となっては良い思い出である。

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