見出し画像

辞めそうな部下をやる気にさせたマネージャーの関わりとは?

こんにちは。
me:Riseキャリアコーチの井本(いもと)です。(>>コーチ紹介インタビュー
 
日本ではプレイングマネージャーが8割と言われている中、ご自身も現場を持ちながら、限られた業務時間の中で部下の育成に力を入れているマネージャーの方も多いのではないでしょうか。
 
育成施策として、丁寧な1on1の実施や業務のフォローなどを実施していながらも、なかなか思うようなスピードで部下の成長が見られないことや、中には急に退職の話を切り出されるという経験をされた方もいらっしゃるかも知れません。特に6月・12月・3月は転職市場が盛り上がる時期なので、マネージャーとしては部下のケアを強化したい時期でもあります。
 
今日は、まさに部下が今にも転職をしそうな状況だったところから、自社で前向きにやりがいを見出していくまでを伴走した、あるマネージャーの部下への関わり方についてご紹介します。
 

 (クライアント様のプライバシーを守るため、設定を変更してお伝えします。)

建設不動産会社に務める30代後半の男性、矢田さん。(仮名)
 
矢田さんは8名の部下を持つマネージャーです。
矢田さんが務める会社では、現場でバリバリ活躍してきた生え抜きの方がマネージャーに昇格することが多く、矢田さん自身も現場で実績を上げてきたお一人。お客様思考が強く、丁寧かつ着実なお仕事ぶりでお客様からの信頼も厚かったことから社内評価も高く、他のマネージャーと比べると若くしてマネージャーに就任されました。
一方、組織拡大に伴い入社してきたメンバー層は、できるマネージャーの指示に応える、よくも悪くも「受け身」の方が多かったそうです。
 
そこで比較的メンバーに年齢が近い矢田さんは、組織からメンバー育成への期待の言葉をかけられ、ご本人も従来の育成方法に縛られず、自分なりのグループづくりや部下育成をしたいと考えられ、コーチングに参加されました。
 
コーチングを実施する中で出てきた矢田さんのグループビジョンや育成キーワードは「自主性」「連携」
 
メンバーの特性を考えると、従来のように完全自立し実績を上げていくスーパーマンを生み出すのではなく、自主的に動くことと足りない部分はチームで補ってチームや組織で成果を上げていく姿が良いのではと考えられました。
 
その後は、その理想的な姿を一緒に描きながら、解像度を上げていきました。

(井本)
「自主性や連携が上手く取れたグループになれた時、何を成し遂げていたいですか?」

(矢田さん)
「そうですね。部で良かった取り組みを表彰する文化があるのですが、そこでグループとして表彰されていたいですね。それこそ個人ではなくチームで実績を上げる取り組みとかを表彰されたいです。」

(井本)
「自主性や連携が生まれているチームでは、どの様な言葉が飛び交っているイメージですか?」

(矢田さん)
「〇〇さんはどう思う?どうしたい?/私に何かできること(サポート)はある?/こんなことなら私も一緒にできそうだけどどう?という言葉をお互いに言い合えていると良いですね。」

キーワードを軸に矢田さんが理想とするグループの姿を考え、具体的なシチュエーションを例に上げながらメンバー同士や矢田さんとメンバーのコミュニケーション、具体的数値含めた目標もお話していきました。
 
数回のコーチングで今後のチームや育成の方向性を掴んだところで、矢田さんは行動に移します。

メンバーひとり一人との打ち合わせの時に、個々がどんなことであれば能動的・自主的に動くのか、興味があるのかを打ち合わせの中で探っていったそうです。毎度アクションの振り返りをする度、部下の個性を理解し、メンバーからの信頼も得ている様子が私にも伝わってきていました。

 
まさに着実に、矢田さんらしく前進されている最中。

事件が起きます。

リーダー候補として特に丁寧に接してきた岸さん(仮名)の様子がおかしい。

岸さんが目標としていた他グループのリーダーの退職が知らされたのです。

 
具体的に退職を考えているかどうかは確認していないものの、尊敬していたリーダーと食事へ行っていることは分かっており、そこから様子がおかしくなったと話す矢田さん。
 
実はこの岸さんは、2〜3年後には(独立なのかは分からないけれど)自分の力で仕事をしていたいと語っていたのです。メンバーの中でも自主性が高かったことから、リーダーにしたいと矢田さんは考え、最も期待していたメンバーだったのです。

(井本)
「矢田さんは今、どんな事を考えているのですか?」

(矢田さん)
「今辞められたらこれまでの頑張りが崩れてしまいそうな気がするのでどうしようと考えが巡っています。うちの会社でできることをアドバイスしたいし、岸さんにはまだまだできることがあるんだから、落ち込まずに頑張ってほしい。
退職したリーダーを超えるような働きが彼ならできると思う。と本人に伝えたいけど、それを伝えたところでうまくいくのか分からない。」

そういって、岸さんに対して“〜したい”“こうあってほしい”という思いが溢れてきました。
 
そこで私はこんな問いかけをしました。

(井本)
「今、岸さんが何か助けを求めているとしたらどんなものなのでしょうか?」

(矢田さん)
「(しばらく沈黙)
 目標を見失ってしまってどうしたらいいか分からない。 
 ここから抜け出す方法があるなら助けてほしい。と思っているのかな」

そう口に出しながら、斜め上を向く矢田さんから次の言葉がでるのを私は待ちました。

(矢田さん)
「あ〜、そうですね。
 きっと彼は困っているのですね。退職したいとかどうこうの前に。
 (といってそのまま斜め上を向き続ける)
目標を取り戻すというか、改めて考えたいと思っているんだな、きっと。」

(井本)
「矢田さんの中で今後やることが見えてきているご様子ですね。
 具体的に取っていきたいアクション、あえて取らないアクションがあるとしたら何でしょうか?」

(矢田さん)
「これから岸さんの気持ちを確認しながら、目標を一緒に考えてみます。
できれば、先のことを見据えながら今どう頑張るのかを話したい。
取らないアクションは説得ですかね。」

その後のことは、その後の振り返り時にシェアくださいました。
その際、アクションを取る上で最も意識したことを1つ教えて下さいました。

『最後は必ず質問をすること』

矢田さんから岸さんへ今後どうしたい?と聞いても「分からない」と答えることが何度かあったようです。
 
普通(無意識)に会話をしていたら、
 
「この方向が岸さんにとって良いと思うよ」

とアドバイスしていたし、鼓舞するような言葉をかけていたと思うと語る矢田さんでしたが、今回は説得しないと決めていたので、
 
「こういう方向性は岸さんがやりたいといっていた方向性と合うんじゃないかなと私は思ったけど、岸さんはどう思う?」
 
と提案しながら岸さんの考えを聞いてみるというやり取りをしたそうです。
その他にも、岸さんが答えに詰まった場面では矢田さんなりの考えを
 
『提案しながら、最後に「どう思う?」と質問することで岸さんの気持ちを聞く』
 
ことを繰り返したとのこと。
 

そうした会話を重ねることで、岸さんの目標が明確になっていったようです。

そして最後に

(矢田さん)
「色々話をしたけど、これからこのグループでリーダーを目指してやっていくことはどう思う?」

(岸さん)
「是非やりたいです!」

となり、退職の方向には進まずに今の仕事にやりがいもって取り組んでくれているのだとお話くださいました。
 
 
私はあまりのスムーズな対話に正直驚き、振り返りの中で矢田さんに伺いました。

(井本)
「ここまで上手く対話できたポイントは何だったのでしょうか?」

(矢田さん)
「井本さんがいつもセッションで
「解像度上げる」「具体的なイメージ」の質問をしてくれていたので、
    私もそれを意識してやったのは効果があったと思います。
 
後は、提案というか私から〜はどう?って言ってくれたことが嬉しかったと岸さんは言ってくれたので、そこもきっとポイントですね。
実は、岸さんと話をしながら“甘いな”と感じてしまう場面があって、そんなんじゃダメだよと言いかけたのですが、我慢して本当良かったです。笑」

そしてこう語り続けてくださいました。

(矢田さん)
「自分でもここまで上手くできたことは過去なかったので、メンバー育成への自信になりました。主力リーダーをあと1人育てたいので、候補メンバーとの1on1でもやってみたい。」

半年以上かけての矢田さんとのセッション。
私も2つ学んだことがあります。
 
 
・目先の課題解決だけに走らないこと
今回は、退職可能性があるという部下に対して、退職しないように働きかけたのではなく、“将来”の岸さんの“目標”を考え、そのために今できることを提案しながら話しをしていったことで、退職の方向性も回避できました。
 
・最後は相手にボールを投げること
上司と部下の関係性では、ついつい言いたくなってしまうものですが、そこをぐっとこらえ、相手に主導権を持たせる。このやりとりこそが、主体性にも繋がるのだと思います。
 
 
私自身、前職でモヤモヤしていた時に転職を考えた時期がありました。
その時は、直属の上司ではなかったものの、異変を感じた別の上司が私の将来を一緒に考えてくれる時間を取ってくれたおかげで、その後ライフイベントによる退職まで思い切りそこで仕事をすることができました。あの時、転職していたら、やりきったというより逃げた経験になってしまって、絶対に後悔していたと思います。
 
この記事は、部下を持つ管理職の方へはもちろんのこと、その方々を通して部下となるスタッフの方々のより良いキャリア形成にお役立てできればと願いながら書かせていただきました。
 
この記事が、少しでも皆さんのお役に立てると嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。



🔔オンラインキャリアコーチングサービスme:Riseでは、コーチによる無料カウンセリング(15分間)を実施しています!

・「いつかできたら…」「もしチャンスが来たら…」と受け身の人生を送っていることに不満
・やりたいことはあるけど、やり抜く力 GRITが弱くて、すぐ挫折しがち
・現状のキャリア、人生に何か変化を加えたい
・思い描く未来がありながらも、なかなか舵を切れない
・仕事も、人生もつまらないまま終わりたくない
と思っている方

プロのコーチが伴走してもらいながら、行動してみませんか?

🔔me:Riseのニュースレターで、キャリアデザインに関するコンテンツやキャンペーン・イベントのご案内、ニュースレター読者様限定のme:Rise主催セミナー割引などの最新情報をお届けしています。
ご希望の方は、ニュースレター登録(無料)またはme:Riseのホームページ内の登録ボタンからご登録ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?