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読書メモ「副業の研究」(副業している人ってどういう人? の話)

「「副業」の研究:多様性がもたらす影響と可能性」
川上 淳之

副業関係の記事や読み物をみると、副業へのハードルがすごく低くなっている印象がありますが、実際のところは就業規則で副業禁止の会社も多いし、「本当のところ、どういう人が副業している・できているんだろう?」と思っていました。それで手にとったのが本書です。

副業をまじめに観察した本

本書は、副業のやり方など副業の指南書ではありません。
著者の川上氏は、現在は研究者として定職を得ていますが、定職を得るまでは非常勤講師として複数の学校で授業を持ったり、研究プロジェクトの一員として仕事をしたり、毎日あちこち駆け回っていたそうです。

忙しくも充実した日々で、いろんな仕事を掛け持ちする副業生活は、自身のスキルも高めてくれており、副業の効用を研究したらおもしろいんじゃないかと思ったのが、研究の発端だったそうです。

母親の現実的な一言で副業を見る眼が変わった

著者は何気なく母親に、こんな感じで副業の研究をするんだと話されたそうです。

「一見異なるような仕事の経験同士が影響し合い、副業を持つ人たちのスキルを高めるのではないか?」

それを聞いた母親は、ふ~んと一言
「世の中、そういう副業ばかりではないんじゃないの?」

その母親の一言を聞いて、著者は「そもそも副業とはどういう働き方なのか、誰が副業を持っているのか?」というそもそも論をしっかり実証してみることにしたそうです。

副業とは多様である

副業という言葉からは、なんとなーく起業とか独立とかスキルアップとかそういう前向きな印象がありますが、一つの仕事では生計が立てられないからアルバイトを掛け持ちするのも副業に該当します。

著者は、
「収入のための副業について考えるときには、本業の仕事の待遇や余暇の持つ価値について考える必要がある。スキルを求める副業については、そのための副業であることを自己認識し、レビューをしながら進めるほうが効果的である。副業を持つことは私たちの幸福感を高めているが、同時に、余暇時間が短くなることで失われるものも考えなければならない。」
と副業の保有動機や仕事の形態から副業を研究することにしました。

副業には二面性がある

研究から、副業には、収入が低いことで保有されるものと、収入が高いことで保有されるものの二面性があることがわかったそうです。

政府が実施している統計のなかに副業に関する数値もありますが、そこでは両者が混在しているので、そこをわけてみていかないと副業の実態を見誤ると。ごもっともです。

副業をしている理由は?

著者が統計数値を再分析したところ、副業している人の3分の2は収入目的でした。収入を増やしたい、1つの仕事だけでは生活が営めない、ローンがある等の理由です。残りの3分の1は収入以外の理由でした。自分が活躍できる場を広げたい、能力を活用したいなどの理由です。

副業している人の本業は?

パート・アルバイトが最も多いことがわかりました。自営業、起業者も多く、いっぽうで正規の職員・従業員は少ない。

まだまだ副業を禁止している企業・団体のほうが多いですから、定職のある人にとっては副業のハードルは高いということでしょう。

本業の収入と労働時間と副業はU字の関係がある

U字関係というのは、労働時間が短い人と長い人に副業している人が多く、平均的な労働時間の層では副業している人は少ないということです。

つまり、労働時間が短い人というのは自営などで複数の仕事をしているけれど就業時間のような時間的な拘束がないから相対的には労働時間が短くなるのではないかと思いました。いっぽう、アルバイト等で仕事を掛け持ちしている形の副業者は、必然的に労働時間が長くなります。

副業の目的によって幸福度は異なる

収入目的で副業している方は、幸福度が低いという結果が統計的に出たそうです。そうですよね、日中はここでバイト、夜はここでバイト、労働時間が長く、睡眠等の休憩が十分とれなければ生活も厳しいはず。

また、副業している人がみな本業のスキル向上につながるわけではないということもわかったそうです。副業すればスキルアップでき、起業や独立につながるわけではないのです。

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本書は「副業」について真面目に研究したものなので、副業について淡い期待を持っている方には少々現実的すぎる話ばかりで、もう少し夢のある話があっても・・・と思われるかもしれませんね。

でも、私自身、20年以上務めた企業を退職し、副業生活を始めてもうすぐ10年になりますが、仕事に費やす時間と収入とのバランスを考えると、企業でサラリーマンしていたときのほうがコストパフォーマンスは高いと思います。

それでも副業を続けているのは、精神的な自由度の高さと世の中的な定年となる60代以降への備えになると考えているからです。

副業に関心を持っている方は、自分はどうして副業が気になるのか、どんな副業が自分にはあっていそうか、等を考えるうえで、本書は何かのヒントを与えてくれるかもしれません。

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