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「世界で戦う強い組織とは」ポーターズ西森康二社長へインタビュー

テーマ「世界で戦う強い組織作りとは」
日本・海外という概念に囚われずグローバルマーケットで挑戦し続ける企業CEOにフォーカス。
外国籍人口比率2%の単一民族国家日本発グローバルで戦うベンチャー企業の“強い組織作り”についてインタビュー。今後の展開とビジョンとは、そしてどのようなキャリアフライを遂げるか深堀する。

株式会社ポーターズ 代表取締役 西森康二氏にインタビュー
2001年8月株式会社ポーターズを設立。企業のマネジメントを支える一貫した考えのもと、人材紹介ビジネスを手がける企業向けクラウドサービス「PORTERS HR-Business Cloud」を展開。アプリケーション・プラットフォーム「HR Apps Platform」の提供を開始するなどより充実したサービス展開を手がける。


空飛ぶ青春時代を経て起業家の道へ

Career Fly大野理恵(以下、大野):本日はよろしくお願いいたします。インタビューに備え西森さんのリサーチをしたのですが、プロフィールが表にでておらずヴェールに包まれております(笑)。西森さんのバックグラウンドを教えてください。

ポーターズ代表取締役西森康二氏(以下、西森氏):中学時代は勉強ができるタイプでした。進学校に通っており、そのまま高校へ順調に進学する予定でしたが、若干素行が悪く少し道を変更しました(笑)。自身の興味が数学と物理などの理数系分野だったこともあり、大学もその視点で選びました。在学中はハンググライダーに夢中になり、空を飛んでいました。結構真面目に取り組んでおり、インストラクターの資格を取得し、日本選手権に出場するなどの活動をしていましたよ。

大野:素晴らしい腕前なのですね!大学卒業後は就職?それとも起業ですか?

西森氏:リクルートへ新卒として入社しました。
実は、就活に苦労しまして。大学から推薦をもらうことができず、就活を積極的にしないまま最終学年を向かえてしまった。それから、100社以上に応募を試みるもなかなかうまくいかず、焦っておりました。そんな中、当時理工系学生を積極採用していたリクルートから内定をもらうことができました。人事の方から、私の採用は本当に最後の枠で、とてもとても悩んで決めたとのこと後日談で聞きまして。ぎりぎりセーフですね。(笑)私の人生はいきあたりばったり。ヤンチャして好きなだけ空を飛んでそのままリクルートにポンッ!と入る、みたいな感じでした。

大野:会社勤めで一番記憶に残っていることは?

西森氏:食品製造メーカーの受注は今でも記憶に残っています。大手パン製造現場における人材採用から定着支援までを大型受注しました。同案件獲得により、2年分の売上は達成してしまいまして。(笑)ただ、この案件の状態ですが、工場長は決まっていましたがそれ以外全く何も決まっていない状態でした。つまり採用担当も不在、ゼロから作っていく必要がありました。

そんな状況でしたので、当時の上司に提案したのは、私自身の出向です。プロジェクトの事務局として必要なことを全て現場で対応する、失敗できないプレッシャーとともに旗振り役として参画しました。

右も左もわからないまま出向となったため、まず最初に着手したことは「パン作り」でした。工場内で生産ラインに入り、パン作りを経験することで、製造そのものを学ぶ。パン作りはおしゃれで楽しい印象ですが、実際は違いました。パン生地を1センチ余分に絞り出すと原価が上がってしまいます。たった1センチの誤差が原価を倍にしてしまう。このようなインプットから、製造ラインスタッフに求めることとして、「細やかなことを正確にこなせること」を採用条件にいれなくてはいけない、など人材採用定義に結び付けたりしていました。

大野:現場を知ることで、人材獲得における考え方や戦略などへ活かしていったのですね。

西森氏:当時は採用したあとの受入から定着に至る制度設計や教育プログラムなども整備されていませんでした。そこも一から作り上げました。知らない分野は自分なりに調べあげ、企画し導入する。そして、運営してみるを繰り返していました。このプロジェクトを通じて、”お客様の成果にコミットし、実際に結果をだし満足してもらう”経験をしました。工場が回るためにマネジメント側の支援を全て行い、それが稼働して結果がでる。それに対して、お客様が満足してくれることはこの上ない喜びでした。この原体験が、サービスに対する礎となっています。

人材紹介業の発展を読みサービス開発で成果を出す


大野:そして、7年間のサラリーマン生活を終えたのですね。そのままポーターズを立ち上げたのですか?

西森氏:いえ、その後は個人事業主として、起業/創業支援コンサルティング会社でお世話になっていました。もともと、こんなサービスで事業をやろう!とか、起業して社長になろう!みたいな志があったわけではなく、実際に成り行きで今があります。

大野:そちらの会社では何をされていたのですか?

西森氏:起業支援をしていると、起業後の人材採用に関する相談があります。実際にニーズがあり、人材紹介部門で仕事をすることになりました。前職の経験から、求人開拓は担えると考え参画したのです。

当時、人材紹介業はリクルート、インテリジェンスが牽引していました。この2社を脅かすようなエージェントは存在していなかったです。それ以外のエージェントは、元人事経験者が立ち上げた会社が中心でした。とりあえず、脱サラしてできることを考えた時、人事経験で培った人脈を活かしてできる仕事=エージェント業として立ち上げるケースが圧倒的だったのではないでしょうか。この業界を盛り上げていこう、労働人口減少に歯止めをかけよう、という思いを持ち人材紹介業に取り組んでいた方は少なかったと思います。なんとなく、人脈活かしてマッチングさせて自分たちは食っていこうみたいな。
ちょうど2000年手前、職業紹介に関する規制が緩和されました。それから、年間1000単位で職業紹介事業を行う事業所が増えてきました。これを機に、マネジメントをしっかり勉強した方々が参入するようになってきました。このような流れから、”産業として発展していくのではないか?”と感じるようになったわけです。これまでにないバリューを生み出す会社も増えていくであろうと予測しました。

大野:その見立てが、現存する貴社サービスへと繋がりますか?

西森氏:はい、人材紹介の仲介とは、究極の情報取扱業です。
情報と情報が結びつくことでお客様を満足させるサービスです。情報をどのように取り扱うか、さらにはマッチングさせることが要となります。情報量が多くなる、またその情報を扱う組織が大きくなればなるほど結び付きづらくなります。それを解決できるようなシステムは存在しないのか?と考えるようになりました。実際に当時自身の仕事においても利用ニーズはあったことも理由のひとつです。当時、リクルートが年間数億かけてシステム運用をしていました。インテリジェンスは、これからシステムを作る、他社はパッケージを作ろうとしているような時期でした。ただ、それ以外のシステムは存在しませんでした。

存在しないなら作ってしまえという流れで、システム開発に着手するわけです。

大野:なるほど!HRビジネスクラウドの前身サービス誕生ですね!

西森氏:もう一つ、立ち上げた理由があります。これは今でも忘れられないエピソードです。
当時、携わっていた人材紹介部門がかなり順調でした。立ち上がって3ヶ月後に売上 1000万円で順調なスタートを切り、経営層からチーム組成して売上拡大をしたい相談がありました。そこで、フルコミッションの外部コンサルを収集しチームを形成しました。当時お昼時に、コンサルの方々がいつも100円マックを食べているので、「マックが好きなんですね!」と悪気なく伝えたことがありました。その私の発言に対し、彼らは「お金がないからだ!」と怒って私に言うわけです。(笑)
フルコミッション成果報酬で契約している方にとって、成果を出していなければ報酬はゼロです。当時、精力的に活動していたものの確かに数字に結びついていませんでした。そこに疑問を持ったわけです。

大野:情報と情報が結びついておらず、システムの必要性を感じられたのですね。

西森氏:原因は明確でした。フルコミッション制度のもと活動しているコンサルは、成約させたいため情報を自分の中でに溜め込みます。
例えば、登録したAさんを他コンサルへ情報開示しない。Aさんの経験、能力、希望職種などの情報。これが、機会損失につながるわけです。情報が流通しないことに対する危機感を感じました。コンサルが活動している間に、彼らの持っている案件や求職者の情報が自動的にマッチングされるシステム開発の必要性が高まった出来事でした。
システム導入後、100円マックを食べていたコンサルの方々が、年間最大7000万円の売上を生み出すようになったのです。

システムビジネスに可能性を感じていたので、当時の社長に事業化に関する提案をしたのですが、リスクが高いと言われまして。であれば、自身でやろうと決めました。

ポーターズは”いい人”が集まる組織


大野:ここからポーターズの歴史が始まるわけですね。2001年に貴社設立をされました。ここから組織の話を伺います。設立当初、組織を作りの理想はありましたか?

西森氏:正直に申しますと、今やるべきことをやるみたいな考えだったので、特段理想みたいなものはなかったかもしれません。その時その時に必要なことをやる、自分で作っていく技術屋さん的なタイプであるためです。私はきっと世の中のマネージャーといわれる人達の中に入ると、全然ダメなタイプだと思います。
今でこそ、マネジメント分野では壁に当たるため、いろいろ本を読んだり勉強はします。

大野:20年経営をされている中で組織のあり方や方向性も変化します。現在貴社はどのような人材が集まっていると言えますか?

西森氏:弊社にとって望ましいのは、二つの要素を備えている人材です。
一つは、実行できること。
経営側の要望要請を理解して、すぐ実行できる人であることです。ただ、それだけだとその人に重要な仕事を任せられません。

その上で二つ目は、ゴール設定できること。
自ら課題を発見する、または自らゴールを設定してそこに到達するために行動する。

他にも付け足すと3つあります。

「いい子」であることです。
第三者のために何かをする、そこに価値観を持っていることです。
仕事において、自分以外の誰かを想定して一つひとつの業務に取り組む姿勢や態度があること。何かの議論の中で、”これはお客様の何を解決するためなのか”という視点に立つことができる人です。

勉強熱心であること。
自分よりも絶対に上のレベルのものが存在し、今自分より上のレベルへ行くために勉強しようと考えるスタンスがあること。

最後は、未来志向です。
今よりも良い結果を出していく思考性です。
例えば、100m走を10秒で走るなら、次は9秒台を目指そうとする。1人お客さんができたら次は100人を目指そうとすることで、未来志向をどんどん拡張させていくことができる人がいいですね。

これらを持ち合わせている方を、採用の段階でできるだけ見分けるように取り組んでいます。

大野:見極めが上手くいかず失敗したことは?

西森氏:過去失敗したことは、2つあります。
ひとつは、「自身のスキルアップ」に傾倒してしまう方を採用したときです。転職理由は、”自分自身のスキルアップ”であり、業務を通じて今以上に能力を高めていきたい。その思いが強い方は、自身の仕事がお客様のため、あるいは誰かのため、という視点が薄い場合があります。
弊社は、誰かのために仕事ができるいい人集団であるため、その輪を乱すことになりかねない。

次に、承認欲求が強いタイプの方を採用した際も上手くいかないことがありました。能力は高い人に多い傾向でした。自分がやったことや成果に対して、誰かに認めてもらいたい、褒めてもらいたい思いが強い方は周りに悪影響を与えてしまうこともありました。このような経験から、上述した5つの要素を持ち合わせている方をできるだけ採用するようにしています。

プロジェクト型組織形成によりベストな人材配置を実現する


大野:社員の方々の能力開発に関して、意識していることはありますか?

西森氏:仕事一つとっても、なぜこれをやるのか?なぜこれが必要なのか?を共有するようにしています。人は、自分がいいな、面白いなと感じることに一生懸命取り組みます。なぜの意味を考え、自分なりに”いいな”と思ってもらいながら、仕事に取り組んでもらうような投げかけをします。

また、”西森ジャッジ”を押し付けないように心がけています。
私自身、結構核論までかなり細かく描くタイプです。ただ、そのように指示出すだけだと、より良い発想を生み出す社員が育ちません。より良い発想力を持つ社員を創造するためにも、対話を重ねるようにしています。私自身はこう考えている、あなたはどう思う?と、互いに対話を重ねる中で、社員から”であれば、こうしませんか?”という提案がでてくるよう接しています。

また、スキル向上は社員全員が意識していることであると思います。ただ、自分のキャリアのためのスキルアップであってはならない。スキルアップは第三者に何かを与えるためにされるものであると私は考えます。ここを理解した上で、スキルアップに努める社員が常態化していると良いです。今後、組織の形として”プロジェクト型”となることを目指しています。ヒエラルキーで配置がなされることなく、プロジェクト毎にベストメンバーが配置されていく形式です。

大野:一人ひとりが自立し、誰かのための仕事意識を持っていれば実現できる形ですね。ところで貴社は多くの外国籍の方々が在籍しています。上述された組織作りに外国籍社員の力は引き続き必要ですね。

西森氏:今後も国籍関係なく弊社が探し求める人材を積極的に採用します。

特に、採用した外国籍社員の共通項として、”いい仕事”がしたいと思い入社してくる人材が多かったです。また、わざわざ不自由な環境(言語や文化の相違がある)に飛び込んでくる姿を見ると、受け入れる側としてはそこの不自由を取り除くことが必要となります。そこは日本国籍の社員と異なる部分かもしれません。コミュニケーションにおいても、外国籍社員と日本国籍社員は異なるところがあります。日本人のように1言って10わかる、の様なことは通じません。10理解できるように、0-10まで全て説明しないとわかってもらえない。ただ、そこはわからないと意思表明をきちんとしてくれます。

このコミュニケーションを重ねることで、互いに思っていることを伝わるまで言葉で交わし、違う考えもあることも理解できます。
ある日、自分の会社なのに全く自分の会社ではないように感じたことがあります。外国籍社員の異なる価値観に触れることで、”こうも違うものか”という感覚に陥りました。

いいものは良いという価値観がASPサービス提供により培われている


西森氏:我々はASPサービス提供者として、ベストプラクティスが良い、それに見習え、という感覚を持っています。それは、外国籍社員の雇用にも通ずるところではないでしょうか。良いものは良い、足りない点はオリジナルで対応していく考え方が活かされているかもしれません。

大野:日本企業の多くは、外国籍社員雇用に及び腰です。弊社にてご支援する企業様の中にも、外国籍社員の採用要件はN2以上、日本企業での就業経験なくてはダメ、日本居住のみ受け入れますといった、今の組織に似た外国籍人材の採用を希望する要件が散見されます。

西森氏うちはこうだ!という考え方は思い込みでしかないです。
いいものは良い、と評価する発想も必要ではないでしょうか。
弊社もこれまでに多くの外国籍社員を雇用する中で成功も失敗も繰り返しています。
日本国籍の社員と異なる点としては、
①コミュニケーションの仕方
②給与交渉
③上昇志向
です。
①のコミュニケーションは上述したとおり。②に関して、採用段階で外国籍の方々はしっかり給与交渉をしてきます。これは彼らにとって当たり前のため、交渉時に互いに納得するまで話をする必要があります。③に関しては、チャレンジ機会に蓋をしないことです。
特に、外国籍ITエンジニアに関しては、より難しいものを作れる技術を身につけたい志向があります。一方、日本のエンジニアに関しては、プログラミングスキルのデベロッパーとしてどこが限界を感じている。そこに違いがあるため、外国籍エンジニアに対する仕事や機会の与え方は工夫のしがいがあります。

大野:マネジメントに工夫が必要ですね。限られたプログラミング作業のみ与えているとなかなか満足してもらえない。

西森氏:はい。過去にそのようなケースで辞めてしまった方もいました。
そのようなエラーを繰り返し、弊社側に負の要素があればそれを取り除くなどして組織の再編をしてきました。今となって、開発運用において意見を闊達にしてくるのは外国籍エンジニアの社員です。日本語で一生懸命説明してくれるわけです。

大野:西森さんにとって、外国籍社員雇用でインパクトがあったことって何ですか?

西森氏:本当に、残業しないことです!(笑)

フランス国籍の社員だったのですが、決められた就業時間の中できちんと仕事をしていたのですが。それ以外は本当に残業しない。そこに時間を費やす価値がその社員には一切ないわけです。そんな価値観があるのだと大変勉強になりました。

大野:外国籍社員の受け入れのため気にした方が良いことはありますか?

西森氏:宗教のこと。ホリデーのことなどは日本人には理解できないこともあるので、そこは知って理解し尊重してあげなくてはいけません。大事にしていることが明確にあるので、何を考えて仕事をしたいのかを知っておく事がが互いのために必要です。

まずは採ることから始める

大野:最後に、外国籍社員雇用を始めようとしている企業へアドバイスをお願いします!

西森氏:まずは、「採ること」です。外国籍社員の採用をやってみましょう。
採るといろいろ起こります。採用することでわかることがあります。それが心地よければ継続する、心地悪ければ止めれば良い。採用のための準備に時間をかけてやるより、すぐに採って受入ながら互いによいやり方を模索すれば良いと思います。

日本国籍社員と異なる点としては、入社してこの業務やっといて、のような投げ方ではなかなか活躍してもらえません。まずは、企業のゴール設定、向かっている方向性などをきちんと共有し、外国籍社員自身の目標設定も共有し握っておく。このプロセスは必ずしておくと良いでしょう。

大野:素晴らしいお話をお聞かせいただき有難うございました!マネジメントアドバイスも大変参考となります。外国籍社員とともに強い組織となるポーターズ社の動向がこれからも楽しみです。

*この記事は、大野の個人アカウント(https://note.com/careerfly_rie/n/n79cd6d445eee)で過去書かれた記事をリメイクしてお届けしています。

<キャリアフライ株式会社>
「雇用ボーダレス」社会実現を目指す人材サービスエージェンシー。
https://career-fly.com/aboutus/


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