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【ケアまち座談会vol.3】「ケアと応答する建築」開催レポート

10月24日21:00-22:20、オンラインコミュニティケアまち実験室のイベント【ケアまち座談会vol.3】「ケアと応答する建築」をオンラインで開催しました。

今回は、軽井沢のほっちのロッヂやかがやきロッジを手がけた建築家の安宅研太郎さんをお招きして、「ケアと応答する建築」をテーマにお話を伺いました。

【登壇】安宅研太郎さん 建築家/株式会社パトラック代表
【進行】稲田・密山・守本 ケアまち実験室ラボマネージャー



ご登壇いただいた安宅研太郎さん

インプット|ケアの場が生まれるプロセス

かがやきロッジ -みんながちょうどよく居合わせられる空間-

かがやきロッジには、2015年に声をかけていただいて関わりはじめました。

僕が関わった当初、かがやきさんは住宅とその横の元アンティークショップがつながっている不思議な建物にぎゅうぎゅうに人が入って仕事されていて。
これからの在宅医療は地域の人たちや患者さん、患者さん家族、元患者さん家族、色んな人の支えの中でこれからの地域医療を考えなきゃいけない。あと在宅医療の在り方も国内外含めて文化を伝えていかなきゃいけない、研修をたくさん受け入れたい、でも今の建物ではそれができない。といったところで声をかけていただいたんですね。

(新しくかがやきロッジをつくるにあたって)
在宅医療自体が、お医者さんもいるけど看護師、介護士、音楽療法士、理学療法士、歯科衛生士、いろんなプロフェッショナルが代わるがわる関わることで、街の中で入院に準じたような環境をつくるっていうことで。
ボランティアや地域の方も色んな人数で色んな活動をするだろうというのは当初から話にあったので、どういう風な距離感でみんなが居合わせても大丈夫にするかっていうのを考えていました。

かがやきさんの場合は、真ん中に大き目な吹き抜けのリビングをつくってその回りに大小の空間をつくりました。それぞれが閉じないで、少しずつ中の様子が見えるような、同時に居合わせる良さをいい距離感でつくろう、というのを考えていました。

かがやきさんの話を聞いている内にも自分たちの事業もどんどん拡大するような話が出てきていたので、かがやきさんのオフィスゾーンとシェアゾーンのせめぎあいが起こっても大丈夫なように、溢れたら増築できるように、というようなプランも考えたつくりにしています。

かがやきロッジの中心にある吹き抜けゾーン。
あちこちに小窓があり、少しずつお互いの様子が見える空間になっている。
写真左:かがやきキャンプ、写真右:かがやきロッジ


かがやきキャンプ -たくさんの感覚刺激を楽しめる空間-

かがやきキャンプは、医療型特定短期入所(日中の保育)と医療型短期入所(夜間の宿泊)とメディカルフィットネスの複合施設です。

このプロジェクトが始まるときに、のちにかがやきロッジ施設長になる藪本さんが「障がい児にいい刺激を量的に与えることで成長を促していきたい」ということをはっきり仰っていました。
藪本さんはソフト的な形で色んな什器とか遊具とかで刺激をどう与えていくかっていうのを仰っていたんですけど、じゃあ建築的に空間的にはどう刺激を与えられるかっていうのを考えながらつくりはじめました。

全体を回遊できるし、小さくも回れるようにして。
特にバギーに乗っているとちょっと視線が上に向いているので、そんなときに変化が楽しめるようなつくりがいいのではと。
そのルート上の天井がアップダウンしていたり空間が細くなったり大きくなったり、照明の変化をつけたりしています。

この施設の目玉はプールですね。リフトがついていて、プロジェクターで壁面に映して、最近話題のデジリハができるようになっています。体の筋肉が足りなくて動けない子も、体が大きくなった子も、活動をサポートできるような。プールでデジリハができる世界初のスペースですね。

ほっちのロッヂ

「かがやきロッジ」と「かがやきキャンプ」の間に「ほっちのロッヂ」というところをつくったんですけど。
ほっちのロッヂはサービスする側/される側とかケアする側/される側を超えて好きなもの得意なものを通して一緒に過ごそう、ということを当初から考えているので。スタッフなのかスタッフじゃないのかとかはあまり違いなく、一緒にほんとにいる場所になっています。


ダイアログ|ケアと応答する建築

かがやきロッジの日常から見えるケア

密山:
今年の4月から、かがやきロッジの社屋がある会社に来ています。
実際にかがやきロッジにいると、色んなことが起きている場所、それが可能になる場所。ほっとくと何か生み出しちゃう人たちを受け止めている場所だなあと思います。事前の打ち合わせの時に「様々な出来事が同時発生しながらも心地がよい場をつくるように意識しました」と安宅さんが仰っていて、そんなことを建築が可能にしていたんだ、というのが驚きでした。そんな場所をどういう風につくっているのかお聞きしたいです。

稲田:
冒頭の図を見ていると、空間は連続しているけど間に余白の空間も挟んでいるのかなと思いました。また別の視点でこれらの空間のご意見があれば聞きたいです。

安宅さん:
特別な方法があるわけじゃないんですけど。
例えば十人くらいで打ち合わせしてたりする横に一人で来ちゃったとか。そういう場面になっても一人で来た人が「自分がここにいてもいい」って思えるかどうか。そういう場所が見つけられるような距離感をつくれてるかな?というのはそれぞれの場所でシミレーションしてますね。

それから、かがやきロッジだとリビング周りに地域の人もスタッフの人も一緒に過ごしているんですけど。
最初のころにかがやきロッジの院長から「ケアする側がケアされなきゃいけない」みたいな話を聞いて。スタッフがケアする人というだけではなくてスタッフもケアされなきゃいけない。大事にされなきゃいけないし尊厳をもって扱われなきゃいけない、ということだと思うんですけど。
スタッフもそこに登場する人物の一人としてフラットに扱われていて、それは設計の話だけじゃなくて実際の運営で一人ひとりが大事にされている。その総体が空間に表れているのかなという感じがしてます。

それを設計側でやっていたこととして考えると、オフィスゾーンとリビングゾーンを、違いはあるけど差はつけないというか。大事さは同じくらいでつくるというか。同じくらいの力加減で同じくらい大事な場所として設計していて、それが運営の仕方ともうまくつながっている感じがします。結果的にスタッフを含めた色んな人が思い思いに過ごしているから、自分も安心してここにいてもいいんだなって感じられるのかもしれないですね。

密山:
これって建築だけじゃなくて、例えばワークショップをやるときに、ありあわせの空間の中で十人の場所をしっかり作るけどスタッフの場所は端っこにつくるとかやりがちだなって思って。イベントをする人って多いと思うのでそこにも言えることなのかなと思って聞いていました。

ケアの場をどう体得した?

稲田:
ケアの場を体得するために、お施主さんや関わる人たちとどう対話してきたのでしょうか?

安宅さん:
設計を通して聞くっていうのが大きいですね。
その場所でどういうことが起こるのかなってシミュレーションして、不思議に思ったことは打ち合わせで聞いて。
ほっちのロッヂをつくっている時も、自分でシミュレーションしたのを持っていって、うちはここは要らないって言うので外したりとか。お施主さんとのやりとりを通して学んでいます。

密山:
かがやきロッジ、かがやきキャンプ、ほっちのロッヂ、それから幼稚園とか保育園とかも手掛けられてきて、それぞれのお施主さんが言っているものを安宅さんを介して建築にしたらこれだけ違うものが出来ましたよ、というのが見れた気がします。
建築することでケアが見えるというのがあるのかなと思いました。
ありがとうございます。

かがやきロッジのイメージラフ

おわりに|

ケアまち実験室では、今後もアート、建築など、様々な方を登壇者としてお招きし、座談会を行っていきます。ケアまち実験室のメンバーになると、ケアまち座談会への参加費が無料になるほか、ケアまち座談会アフタートークへの参加(Slack)、ケアまち座談会アーカイブ視聴も可能となります。
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