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8年前に 3年ぶりに夜勤に入った話~re:夢想転生

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僕は以前、『最新福祉脳!?夢想転生』というブログをやっていて、驚くなかれ、業界でもずいぶんと読まれたらしい。業界ナンバー2のブログ(自称)である。なのでこのブログ自身は『最新福祉脳!!双龍天羅』である。蒼龍天羅をもじっており、北斗最終奥義で上下左右一切存在しない拳である。天は人の上に人を作らず。なのである。んで、そんなに読まれたらしいブログなら(平均1日3000PV越え)焼き直しても大丈夫だろうと思い、書きため、書き直している。読み返すと難解で、ずいぶんと知識レベルが斜めに走っていたと思う。介護の現場にいるともう、脳みそのベクトルがどこかに飛ぶんですね。上も、下も、右も、左もないほどに。

1. 8年前の話

さて、いい加減に物を書けって言われるから、かくんだけど、実のところ、書いていないのではなく、色んなものを書いている。そいつは、ブログよりももっと真面目な文章なんだけど、真面目に書くと、あまり面白くないな。書いては消して、書いては消して。

だから、この場所は楽しいよな。

この場所にいるのはみんなのおかげと考えてみたり。真面目に書いた文章は、僕の文章よりももっと素晴らしいものが沢山ある。だからそいつを見てくれればよろしい。

さて、僕は、昨日、3年ぶりに夜勤に入った。異動の時期は人出が不足する事がある。小規模事業所のキモは、人材マネジメントにあるように思える。僕が夜勤に入るよりも、日頃いる馴染みのスタッフが対応した方がよっぽど、本人の為だと思うが、そうも言っていられない台所事情なのだ。

ユアハウス弥生は小規模多機能型居宅介護事業所である。宿泊室は5部屋。多い時では5人。中には誰も泊まる人がいない日もある。特別養護老人ホームの夜勤に比べると、利用者一人当たりにかけることの出来る時間は遙かに多い。しかしながら、これを楽な夜勤だと思ってはいけない。時間があるということは、出来る事が多いということだ。

そんなわけで、夜勤をしたんですよ。

その日は4人の方が宿泊されました。時間ごとに飯塚の仕事を見て行きましょう。ああ、最初に言っていきますよ。ヘルプマン!としての腕は中庸である。と。スタッフのほうが遙かに高度な技術と、遙かに強いなじみの関係を持っていると考えていただきたい。

これは、5月1日の飯塚の一日である・・・。

11時。仙台方面を見て停めてあった車を郡山に取りに行く。さて、ここから何時に家に着くことやら。そんなことを考えながら、ドライブする。途中、パーキングエリアでカレーパンとコロッケ、メンチを買い、再び東京に向かう。

14時。東北自動車道を抜け、扇大橋から家に。あと30分。がんばれ!飯塚。

14時30分。かみさんに愛していると伝えて布団に直行。17時に目覚ましをセット。

17時半。眠い目をこすってユアハウスに到着。

2.仙台帰りで夜勤スタート~頭はピーナツバター

18時。終礼に出る。さて、ここから夜勤の始まりである。

『ご飯、いつ食べます~?』なんて話しをしながら、ご飯の用意。日勤のスタッフが用意してくれているようで、みんなで取りに行く。

19時半。服薬確認。ふむふむ。実際に薬を目の前にして、思う。書類で書いているけど、実際に見ながらじゃないと覚えられないよな~。これも、現場の強みだよな。ケアマネも所長も現場に入って現場で感じる事は重要な事だ。

20時。テーブルに座っている二人と話。ちなみに、さくっと書いてあるが、会話は何度かループをしながら、少しずつ進行方向に螺旋を書くように進むのである。
『仙台から帰ってきたんですよ。3月に地震があって。現地にいる人と何が出来るか話し合ってきたんです。』僕は、写真を見せながら説明する。
『えらいわね~。』

『あら、これって、私の弟みたいに見えるわ。』
避難所にいる人が、彼女の弟に似ていたようである。
『松林のところに住んでいたのよ~。』新潟出身の方が話す
『松林の手前がへこんでいて、そこに住んでいたから、みんな大丈夫かしら?』
『新潟は日本海側だから、津波の心配はないと思いますよ。』
『松林の海、思い出すわ~。』
『海の女ですわね。いつ、東京出てきたのですか?』
『若い頃。みんな兄弟は東京にいるのよ。』
『さっき言っていた弟さんは、どこにいるの?』
『弟なんていたかしら?』
・・・
僕は先ほどの写真を見せる。
『ほら、この方、弟さんに似ているって・・・。』
『あら?これ、弟じゃない?』
『(笑)ここは、郡山の避難所です。福島県。○○さんって、ご出身どこでしたっけ?』
『新潟なのよ。新潟市。』
『ああ、じゃあ、都会ですな。ビルばかりでしたか?』
『ビルばかりは東京でしょ?新潟も海沿い。松林があってね・・・。』

そんな、記憶を紡いでいく会話。うん。僕は、こんな仕事が好きなんだよな。

すると、向こうから、ご家族の写真を抱えた方が寄ってきた。
『これは、なんか、小さい子供で、誰の子供か分からないんだけど、可愛くて、きゃーってなっちゃう。』
『この子は、○○さんに似ていますね。ああ、家族写真だ。これが、息子さん?これが、お嫁さん?』
『そうそう。ねじを巻いていかないとね。』
『いつも、家までお送りすると、出て来てくれるのが、このお嫁さん?』
『そうね。そうそう。』
『すると、この方が、お孫さんだね。』
大学生くらいの方を差して伺う。
『そうなのよ~。』
『これって、いつ撮った写真だろう?ああ、5年前。まだ、息子さんもお若いですな。髪の色とか。』
『そうね~。』
『んで、この小さい子供の写真は3年前。』
僕は、二つの写真を並べて聞く。
『抱いているのが、このお孫さんだね。』
『そうねえ~。』
『だとしたら、曾孫さんかねえ~?』
『そうねえ。可愛いわよね~。』
『曾孫さん、可愛いねえ。』
・・・
3年前も同じような会話をして、この人と過ごしたなあ。などと、考える。
世もふけつつ、さて、さて、寝るか。となった21時。

着替えようかねえ~?なんて話す。
『何で、誰も迎えに来ないのかしら?』
そんな声が飛んできた。
『お嫁さんが入院明けで、きついみたいよ。』
『弟がいるでしょう?』
・・・弟さんはどこにいるのか良く分からないんだけど、先ほどの会話の中で、弟=身近、安心だと考えていらっしゃるのだろう。
『弟さんは、新潟から出てこられて、どこにいらっしゃったの?』
『東京のどこかね。』
『今、ここは、根津だけど、近かったのかね~?』
『ここから都電で30分くらい。』
『もう、都電、走っていないよ。でも、都電で30分なら、早稲田とか、三田とか、千住とかかね~?』
『でも、ここからは少し遠いのね。』
『お嫁さんが、すぐ近くで今日は家にいるみたいですね。・・・もっとも、入院していたから、きついみたいだけど。』
『どこか悪かったのかしら?』
『足の水を取ったみたい。』
一緒にいらっしゃったほかの方からも声がかかる。
『足の水って取るの痛いのよね~。』
『あれ?足に水が溜まっていたんだ』
『そうなのよ。膝が痛くてねえ~。』
・・・すると、ご心配されていた方は、
『んじゃあ、誰も迎えにこないってこと?』
『明日の夕方4時くらいに迎えに来るって書いてあるよ。ここに。』
僕は、明日の予定表を彼女に見せる。
『本当だ。じゃあ、明日まで待つしかないのね。』
『まあ、時間はこっちから追いかける事が出来ないからね~。』

そんなわけで、皆さん、パジャマに着替える。
『私だけで寝るのは怖いから嫌だわ。』
『どうしたんです?怖いことってありました?』
『分からないところで怖い。』
『じゃあ、電気つけて寝たらどう?』
『それじゃあ、寝れないじゃない!!』
『んじゃあ、近くにいればいい?』
『一緒に寝て欲しいの。』
『そうしたら、大問題になってしまう。おいら、かみさんがいて、かみさん怖いから。』
『それは、怖いんじゃなくて、常識よ。何言っているの?まったく。』
『そこの和室で仕事しているし、そこのキッチンでご飯作っているから、見に来てもいいよ。』
『そうね。そうするわ。』
・・・その後、彼女はゆっくり寝たのであった。

3.久々だと、本人の今をわからない。

先ほどの写真を見せに来た彼女。
彼女とは、5年のお付き合い。オープンしてすぐにユアハウスにいらした方だ。当時からひどい短期記憶障害と、会話の成り立ちからすると、少し組み立てる能力に問題がある方である。もっとも、この5年間、進行は非常にゆったりとしている。
『パジャマに着替えましょうかね。』
僕は、ずっしりと重いリハビリパンツを見て少し後悔した。
以前は、ご自分でトイレに行ってご自分で済ませていたものだから、今もそうなのだと思い込んでいた。
『ごめん。これって、大変だったんでしょ?』
もちろん、彼女の現状認識は難しい。
すぐさま、一緒にトイレに行って、履き替える。その間にトイレで出す。
・・・ああ、我慢されていたんだな。我慢⇒失禁、我慢⇒失禁で重くなったリハパンを見て、非常に反省したのである。つまり、その『我慢』の時間帯に気づくことが出来なかった。これが3年ぶりの夜勤の抜けたところである。

3人はパジャマに着替えて寝たのだけれど、もう1人、リビングに残っている。
『パジャマに着替えますか?』
『いい。ここで寝る。』
まだ、22時。じゃあ、ここでもう少しゆっくりしていただくか。

22時半。明日の朝食作り。僕の料理の腕前は非常に高いレベルにある。
『美味い』『見た目が美しい』事を重要視している。
そして、5人分の朝食を作るのに、2時間はかかる。
再現性はない。料理は芸術である。

時間の多い夜勤だからこそ出来る事。
食材は切っていただいている。あとは、僕が腕によりをかけるだけだ。

3.本人の中の以前の飯塚(柿の木のお兄さん)は、死んでいる。あべし。

23時半。
先ほどの残っている方のところに行く。
『向こうにお部屋がありますよ。よろしければ、ご一緒しますが、いかがですか?』
『ここで寝る。』
・・・寝ていないじゃん。

ああ、そうか。

この方とは、4年超の付き合いである。
来た当初は僕のことを『柿の木のお兄さん』とほれ込んでくれていた。
(この話は、いつかしてあげよう)
そして、3年前に『柿の木のお兄さんは死んだ。』
といっており、彼女の中の僕の幻影はいなくなったのだけど、
『ヒゲの男は嫌い。』
と常々言っていた。

仙台帰りの僕の顔は、それはひどい熊のようで、
彼女にとっては、『イケテイナイ』顔だったのだろう。
僕はひげをきれいに整え、もう一度チャレンジする。
『横になるお部屋があります。ここだと、腰も痛くなるけど、どうですか?』
『いや。ここで寝る。』

・・・
ご飯を作り終え、2時。
もう一度、彼女のところに行く。
『柿の木のお兄さんの所に来ています。お部屋を用意してくれたようで、横になれるみたいですよ。』
『お部屋に行く。』

短期記憶障害があるからこそ、人のイメージって大事だよな。安心感っていうか。
31歳でユアハウスをはじめ、今年はトシオトコ。36歳になる。
人のイメージって残酷だよな。
自分は自分の中でしかないのだけれど、20代のときはスムーズに行ったことが、おっさんになると上手く行かない事ってあるだろう?もっとも、おっさんだから上手く行く事もあるけど、一度上手くいったからずっと上手くいくなんて事はない。自分の成長とか、老いに適合しないと、自分が世の中を納得できないよな。

4.小規模多機能は仮眠とれるよ。~宿泊人数少ないからね

さて、さて、書類を書くかあ!
と臨んだ3時。
それと共に、睡魔が襲ってくる。
こいつはまずい。

各部屋の状況を確認する。
大丈夫。
じゃあ、少し寝ますよ~。

ふと、目を覚ますと4時。
各部屋の状況を確認し、シャワーを浴びる。コロンを叩く。ウィンク1つでこの世を渡る。
そう!こいつはニューヨークだ。などと、本気で笑えないギャグを考えながらすっきりする。

明日の朝の寝覚めがよくなるように、アロマデュフューザーをセット。ペパーミントのオイルを少々振りまき自分もサッパリ。

さて、夜明けを待つか。
玄関周りを掃除して、ゴミを荒らしやがるカラスをにらみつけ、でも、ここで攻撃したら復讐が怖いので目の前で陵辱されるゴミを後ほど片付けようと考えながら、ほうきで素振り。
さて、今日もいい日でありますように。と考えていると、6時になった。

ここから起き出す方の朝の身だしなみを整える。
鏡の前で納得いく自分になってもらいましょう。

7時半までに、殆どの方が起きだし、飯塚スペシャルなご飯を召し上がる。
『美味しいわよ。これ。』
・・・、いや、マジで、嬉しいよな。
『可愛いわね~これ。』
・・・、それは、雪ウサギといいます。
玉子焼きをケーキのようにカットして、カニカマでウサギのように装飾しました。
出汁に浸して、カニカマを降り積もる雪のようにちりばめました。
『これって、ネズミ?』
・・・おいっ!!

8時、出勤してくる日勤の仲間を頼もしく思い、『夜勤終了!』と思う。
これって、結構充実してね?仕事だけど、良い感じ。朝っぱらから、コーヒーでも飲んで散歩したい気分だよな!
『所長、外の掃除したってあるけど、ゴミが散らかっているじゃないですか!』
・・・ああ、カラスめ!!

ユアハウスも含めて、3泊4日で家を空けた僕は、かみさんに電話をかける。
『終わったよ~。』
『早く帰っておいで~。』
『分かった~。』

しっかり仕事すると、爽やかだよな。
かみさんの仲も良くなると思う。
今月はあと2回の夜勤が待っている。

というわけで、充実した仕事を送った飯塚でしたとさ。
おしまい

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