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「英語さえできれば、、」なんて嘘

青年海外協力隊として
ベリーズの少年院に派遣されて10か月目。

課題は現場に山積みなのに
大した変化も起こせず
時間ばかりが過ぎ、焦り

それでも,
まあ出来ることを一つ一つ
やってやろうじゃないか
という覚悟を決めたころ。

ある改革者が配属先にやってきた。

ザ キャリアウーマン!って感じの女性で
今まで会ったベリーズ人の中で一番
しっかりしている気がした。

彼女は配属された最初の1か月ほどで,
施設内の問題点を洗い出し,
次の一か月で手際よく改革案を作り上げた。

その内容はかなり的を得ていて,まさに私がこの10か月間「変えたいな」「おかしいな」「よくないな」とウジウジ思っていたところにガッツリ、メスが入れられたものだった。

彼女の掲げる改革案がうまくいけば,
間違いなくこの少年院はよくなると思った。

しかしその一方で
手際よく改革の足掛かりを見つけていった彼女の様子を見ていて,正直すごく嫉妬した自分がいた。

だって私がやりたかったことを
そのままパッと形にしちゃったから。
10か月もかかって何もできていない私が
すごくアホくさく,ノロマに見えた。

それに言葉の壁で本当に悩んだ10か月だったから,「英語ができる」だけでこうもスムーズに改革が進められるものかとも思った。

だったら日本から片言のボランティアを
派遣してもらうのではなく,
優秀な現地人を必死に探すべき
だったんではないかとも思ってしまった。

すっかり自分の役割を奪われた悔しさから
また「なんでベリーズに来たんだろう」という負のスパイラルに巻き込まれ,配属先がいい方向に変わろうとしているのに,なんだか素直に喜べない自分がいた。

なにはともあれ,

彼女の改革案はついに

全職員に周知され,
いよいよスタートすることになった。

しかしこの改革案は,
この配属先で何年も働いてきた人にとっては,かなり不愉快なものだったに違いない。

だって,簡単に言えば「ちゃんと働こうぜ」という内容だったから。これまで,給料が発生するのが不思議なほど働いていなかった同僚にとっては,とんでもない「ハードワーク」を強いられることになった。(大したことはないのだけれど)

そんなこともあって,
彼女の改革案に対して,過去の不満とこれまで仕事をちゃんとしていなかった言い訳が山ほどぶつけられた。

こんなに正しいことを言っているのに,あんなに反論があるなんて驚きだった。だって反発する理由なんて「面倒くさい」くらいしかないと思っていたから。

改革といっても,例えば「時間割をちゃんと把握しましょう」「授業を時間通りにしましょう」「生徒を選り好みせず,担当している全員にちゃんと授業をしましょう」「仕事を休む日は自分の生徒用に課題を置いていきましょう」のような当たり前のことを彼女は要求しているだけだった。

面倒くささだけ我慢してもらえれば,だれもが納得する「正しいこと」(そんなにハードルの高くない)だと思っていた。

私も,自分の英語力がインプルーブしたら,これらの当たり前のことをちゃんと指摘しよう!そう思っていた。

でも実際は,彼女の正論にあらゆる角度で同僚たちが食らいついた。中には滑稽な言い訳もあったけど,たとえ日本語だったとしても私はうまく答えられないなと思う意見もいっぱいあった。配属先の抱える問題がそれほど,単純なものでなかったことも分かった。

「時間を守る」という一見簡単なことができない理由が「面倒くさい」以外にもいっぱいあったことも分かった。それらにちゃんと対処していかないことには,そんな簡単なことさえ実現しないということも。

そんな反論の嵐の中で
彼女は的確に問題点を整理して
解決策を提案した。(本当に彼女は頭がきれる。)それに強行突破という感じでもなく,ある程度意見も聞きながらという姿勢が一部の同僚たちに「やってみるか」と思わせることに成功したようだった。

あくまでも「改革案」を貫き通す姿勢ながら,「チームワーク」という言葉を連呼し,協力を求めた。

まさに改革の「適任者」だった。

彼女のその様子を見て,
自分が恥ずかしくなった。

英語さえできれば、、、」なんて言い訳していた自分が滑稽に思えた。あまりにも散々な現状に対する言い訳を探していただけのダサいセリフにしか思えなかった。

英語がたとえ堪能だったとしても,私の力でこの改革は難しかったなあと,素直に言語能力以外の部分での自分の力不足を認めざるおえなかった。

これまで、「言語さえできれば,伝えられる知識や技術はある」「言語さえできれば,同僚に馬鹿にされずに済む」「言語さえできれば、、、、」と思っていたが,それはとんだ思い上がりで,そもそも自分には言語能力に加えて別の能力が山ほど不足していたことに気付いた。

「改革する」ということがどれだけエネルギーを必要とするかを理解していなかったし、10か月もかかって、配属先の問題の本質も見抜けずにいたことも分かった。

そんなこんなで,
英語さえできれば、、」なんてのは
とんだ嘘だったことに気づかされた。

じゃあ今から,このポンコツな私が配属先のためにできることは何だろうと考え直してみて,思ったのは「彼女の改革の一番の支持者になること」。

自分にはできなかった改革だけど,
近い感覚を持っている彼女の改革に
一職員として全面協力すること。

小さなことのようだけど,味方がいるってきっと心強い。改革案に従って,職員のいいモデルとして一生懸命働くこと。これがすごく大事なように思えるので,2020年は彼女の改革を全力で応援することにする。陰ながら。

そしてもう一つ,
言葉の壁を言い訳にしない」という目標も2020年に掲げようと思う。

「言葉ができたら、、、したい」と言いながら
「言葉ができないから、、、しない」という
選択を重ねてきた自分を変えたいという思いから。

なんでも
言語のせいにするのはやめようと思う,
そうすると自然と
言語以外の自分の不完全さが見えてきて
時にしんどいけど,
そここそ伸び代なんじゃないかと思いたい。

言語力不足以外に目を向ければ
1年2か月後にきっときっと
言語だけじゃない部分も成長して日本に帰れる気がしてきた。

10か月もかかっちゃったけど,これは
私にとって凄くいい気づきでした。

かなり時間はかかったけど
なんだか一皮剥けたかな、多分。


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