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【クウェート#36】プラダを着た犬 他

11月12日 (日)

放課後、日本・台湾・ウクライナの学生でペットショップに行った。

今月分の料金を払い忘れていたので携帯を止められてしまったが、なんとか集合できた。幸先がよい。

ウクライナのマリアの話で興味深かったのは、「自分の大学では、良い成績をもらうために教授にお金を払うこと」の常態化しているという話だ。

ウクライナの汚職についてのニュースは聞いたことがあるが、教育機関にも腐敗があるとは想像していなかった。



今日はZUEというペット用品店に来た。

といっても、ペットの食べ物などを買いに来たわけではない。
なんでも、ここでは動物と触れ合うこともできるらしい。

入場料は4.4KD。博物館や美術館よりはやや高価だろうか。

館内はちょっとした公園のようだ

ふれあい体験でメインとなる動物は犬である。

犬は宗教的には忌避される動物である。しかし近年は欧米の影響等もあり、犬を飼う人も少なからずいる。大型のスーパーには、犬用の餌コーナーもあるくらいだ。

店が飼う犬は6匹で、それ以外にも客の犬を預かっている。
それらの犬をすべて遊ばせているらしい。

灼熱のクウェートにおいて、外で遊ばせるのは困難だ。だからこそ、室内に擬似的な公園を作ったのだと思う。ブリーダーのもと、室内でのびのびと遊ばせられるのは、飼い主からしても魅力的なはずだ。

またこれらの犬は、「ふれあい体験」で客を寄せる材料にもなる。
なかなか良いビジネスだ。

それにしても、犬がプラダの服をまとっているのはクウェート的な光景である。

PRADA
2匹の子猫へのお土産も買った。

ZUE周辺のレストランに行くことにしたが、やや治安が悪そうに見える。

私とニート先輩以外はみな女性だが、我々はどう見ても頼りない。
何かあったら二人が囮になり、他は逃げるということになった。

何かジョークを言ったとして、台湾の学生からの評判が良かったとしても、ウクライナのウケが悪いということが多々あった。文化の違いを感じる。

アベニューズモールに寄ってから帰宅した。
携帯の料金も払えたので一安心。

アベニューズモール
ニューダランスを大人買い。

アベニューズでは、少し気が早いかもしれないが、日本へのお土産としてサンダルを三足買った。

購入時、奇妙な体験をした。

サンダルに値札がついていなかったので、レジの人が値段を確認しに行ったものの、5分経っても彼は帰ってくることはなかった。

彼を探しに別の店員が出かけ、行方不明になった。
また彼を探しに別の店員が出かけ、消えてしまった。
レジ一帯から従業員が消え去り、にわかに客は騒然となる。

10分ほどして三人が仲良く帰ってきたとき、私とニート先輩は、揃って首をかしげるより他になかった。

クリスマスが近い

寮に帰ると、日本人とサイ、サイード、ムハンマドが仲良くお菓子を作ってた。

新しい机が来て以来、フラットはたまり場になりつつある。


歯磨き用の枝

他の日本人学生からもらったシワークで歯を磨いてから寝た。
アナス曰く、強く磨きすぎとのことだ。

ハディースでも礼拝前とかに磨くことも

塩辛いような、独特な風味だ。枝をかんでブラシ状にして使う。
独特な味ゆえに、ひと噛みするだけで唾液が止まらなくなった。


11月13日(月)

今日で、クウェートに来てから2ヶ月目。

市民カードを手に入れるため、学校を休んだ。
2ヶ月記念なのに学校を休むというのも、なんだか締まりがない。

「市民カードの手続きがあるので、休みます」
と教授に連絡するのにも慣れてきた。

私とルームメイト、マレーシアのサイードは、今日ついに本物のカードを手にすることになる。


カード発行センターまでは、寮のバスを貸し切って移動した。
バスの運転手はインスタ見ながら運転している。

バングラデシュ出身らしく、ベンガル語で話しかけたら大変喜んでいた。
「ダッカでは空が大気汚染で汚かったんだ」とベンガル語で言ったら、笑ってくれた。

世界遺産シュンドルボン

喜びのあまり、運転中なのにスマホをいじって、写真を見せてくれさえした。運転に集中してくれ。


センターは人でごった返している。

係員は、手続きをオンラインで行うように懸命に促していた。

もっとも、何時間も待たされた挙句、そのように言われて素直に従うわけもない。
多くの労働者たちはその場にとどまった。

カード発行センターのようす

われわれはすべての手続きを終えているので、5分ほどでカードを入手できた。
なんだかあっけない。

カード発行機
市民カード。不携帯だと逮捕される恐れもある。

夜、ルームメイトはサッカーをしに行った。

今日はナイジェリア・チームとの試合だったらしい。
圧倒的なフィジカルとバイタリティーに衝撃を受けたようだ。

私にとって衝撃的だったのは、靴を持っていないプレイヤーがいたことである。

「靴履いたらゼッテェ強ぇよあいつら.…..」

この言葉を生涯忘れることはないだろう。

私は、サイードとクルアーン24章32節ついて2時間くらい話していた。

新しい洗濯機が導入された。ようやくランドリーの混雑が解消されそうだ。

11月14日(火)

ルームメイトが寝言で、(おそらく教授と)アラビア語で会話していた。
もう末期だ。

今日は試験だ。

しかし得点の集計をろくにする気配はなく、問題の答え合わせをしたらそれで終わりである。
日本の「試験」という概念とは似て非なるものである。

どう考えてもサラダとして提供すべきではないトマト

夕食のトマトは、硬くてフォークが通らない。

観賞用以外ではいかなる用途も見出しえないトマトは、ボロネーゼへの佳麗なジョブ・チェンジを遂げた。

料理とはまこと偉大な営為である。

今日からコンロを2個使えるようになった。

11月15日(水)

雨。

教室はガラガラだ。

授業開始直前の様子

全くもって日本の秋と変わらない、肌寒い日だ。

レベル2のクラスでも、抜き打ちテストがあったらしい。
授業で扱っていない単語ばかりで、阿鼻叫喚の様相だったそうだ。


昨日書いた日記が、note公式に取り上げられていた。

良い気分だ。

うれしい

夜8時。

雨脚は強くなる一方だ。日本でも「豪雨」と呼ばれるレベルの雨である。

雨により、明日の公立学校は休校となった。

寮はちょっとした浸水被害に見舞われた。

学生たちはこぞって外に出て、雷雨の様子を録画している。

私も外に出たところ、空から靴下が降ってきた。日頃の行いの報いなのか。

浸水しながらも、寮の卓球大会・ビービーフット大会は挙行されることとなった。
ショーマストゴーオンの国家である。

ビービーフット部門
卓球部門

意外と手の込んだ大会で、事前にトーナメント表が掲示されていただけでなく、メダルや参加者用のごはんなども用意された。

大会参加者用に、パンやお菓子も用意された。案の定、恐らく参加しないであろう学生たちに食い荒らされてしまった。
成績上位者は、クウェート大学のシンボル付きメダルを授与される。

私は事前に参加申請をしていなかったが、飛び入りで卓球大会に出場した。

トーナメント表を無視して参加できるのは、いかにもクウェートらしい。

何人ものクラスメイトが応援してくれている。負けるわけにはいかない。

相手はインドネシアのムハンマドなる学生だ。小太りで弱そうなおじさんである。

ところがどうしたことか。彼は卓抜した選手だった。
私は為す術なく負けてしまった。

あろうことか先ほどまで応援していた友人たちは、一転して私を「敗北者」呼ばわりしはじめた。

私の頬を伝ったのは雨漏りの水なのか、それとも涙か。


大会を主催したのは、アブドゥルバーリーなる、大学のスチューデントカウンセラーだった。

オスマン帝国時代に「オールドバーレーン」から移住してきた造船業の一族出身の彼は、威厳のある老人だった。

彼によると、このような大会を定期的に開催しているという。
次は負けるわけにはいかない。

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