アメリカかぶれ2

事前に日本でアメリカで行きたいショップを調べておいた。行きたいショップは
1、ブルックスブラザーズ
2、ルイヴィトン
3、Jプレス
4、フローシャム
だ。
洋服とカバンと靴そして日本では手に入らないもの。多分高くて買えないけれども行って見てみたいと思っていた。なにしろ軍資金は800ドルなのだ。当時は1ドル280円ぐらいだったので円換算すると20万を越える。アメリカ20日の旅費も30万ぐらいだったので合計50万超だ。よく親が出してくれたものだと感心する。しかし大学卒業祝いにと出世払いで気持ちよく出してくれた親には一生頭が上がらない。これからは親孝行に励む事を心に誓いながら、、、
さて行きたいショップは全部サンフランシスコにある事は持ってきたポパイ創刊号に出ていた。
ブルックスブラザーズとJプレスは支店がある。ルイ・ヴィトンはマルムラゲージというお店で扱っている。フローシャムの靴はやはり直営店があることがわかった。住所もゲットして万全完璧だ。

事前にお金の使い方の計画も立てた。出来るだけものを買うために節約する。特に食べ物は高いものは食べない。交通費もバスとか安いもの。近いところは歩く。だからホットドッグ、マクドナルド、ピザ、ホットケーキ、ドーナツばかり食べてた。それでもどこでもなんでもおいしくて安かった。アメリカは美味いぞ。ただアイスクリーム屋さんがやたらそこらじゅうにあって食べたくなってバニラを注文したらやけに黄色いなと思いながら食べるとバナナだった。
どうやら僕の英語も通じなかったみたい。

旅行の日程を確認してみた。ISAという旅行会社のアメリカ語学研修の旅という事だけど研修はオプションでそれを取らなければ完全フリータイムになる。バークレー2週間その後ロサンゼルス3日ハワイ2日で帰国という日程だ。だから学生だけでなくかなりご年配の方もけっこういておもしろかった。後でこのご年配の女性のおかげでまたアメリカの素晴らしさを体験できる事になるのは後述するけど、アメリカならではのあり得ない体験でますますアメリカかぶれになる最初の出来事だった。

サンフランシスコのブルックスブラザーズは今回の旅の1番の楽しみだ。地図を頼りに調べていた住所に着くとそこは8階建ての古いビルだった。これが憧れのブルックスブラザーズかとビルの周りを一周してショーウインドウをチェックしてから正面玄関の重いドアを開けた。
客はまったくいない。一階はシャツ、ネクタイ、セーター、靴などが並ぶ。セーターを見ていると店員が声をかけてきた。なんと初老の紳士である。指に大きなカレッジリングをはめている。前から欲しかったシェトランドのクルーネックセーターを出してもらった。サイズは38。いろんな色があって迷ったけれどモスグリーンに決めた。買ったついでに上の階は何があるのか気になったので拙い英語で聴くと理解してくれてとても親切に教えてくれた。
二階はジャケットやスーツ三階はオウンメイクというオーダー専門の階だった。四階から上は工場すなわちここでオーダースーツとかを作っているのだ。この時買ったセーターは今も大事に保管してあるのは言うまでもない。

マルムラゲージはチャイナタウンに向かう坂の途中にあった。サンフランシスコは東から西に向かって上り坂が多い。しかも半端ない急坂で路駐するクルマもハンドルを切った状態で前輪が縁石にぶつかるように駐車する事が義務つけられている。この坂の競り上がったところにマルムラゲージはあった。思ったより小さい店でショウウインドウにいろんなブランドのカバンが並んでいる。ルイヴィトンはそんな中で異彩を放った存在感があった。同じ形でサイズは3種類あったうちの1番小さい機内持ち込みのできるサイズを見せてもらった。完璧なシルエットに魅了されたけれど今回の総予算の半分が吹っ飛ぶ。値段に躊躇していると名前の刻印をサービスしますと
の店員の甘い言葉に買う決心をしてしまった。一生物はこうして僕のものになった。KOBAYASHIの刻印が今でも当時の事を思い出させてくれるのだ。

ルームメイトは英語講習のオプションをとっているらしく朝早く出ていってしまうのであまり話す機会が取れなかった。その日は珍しく「小林さん観光に行きませんか?」と話しかけてきた。どこに行くのと聞くと「ヨセミテです、行きましょうよ」と誘うのでどうやって行くのと聞くと団体で一緒に来た年配の女性が現地の学生さんと友達になりヨセミテにクルマで連れて行ってくれるという話らしい。その女性は1人だと心細いから一緒に行きませんかと誘われたというのだ。学生さんは2人の女性でその中に男1人ではちょっと恥ずかしいというので僕を誘ってくれたのだ。
じゃあ行こうかという事になり翌日早朝僕たちは5人で旅に出た。
ヨセミテまでは約200キロの旅である。運転手はサンディという20歳のUCLAの学生で友人のマリアに会いにバークレーに来たのだ。マリアはカリフォルニア大学バークレーで美術を専攻している。都会の広いフリーウェイからいつのまにか片道1車線の田舎道になる頃ヨセミテの入り口の小さな町でサンディはモーテルの前にクルマを停めた。どうやら今日の宿泊の予約をしに行くらしい。この旅は一泊なのかと初めて気付いた。おばさんやルームメイトも知らなかったらしく驚いた。何も着替えとか持ってきてないぞ!町で道を聞くために声をかけただけで友だちになり翌日ヨセミテに連れて行ってくれるという不思議な成り行きはアメリカらしいのか?僕はこういう体験をするうちにどんどんアメリカにハマっていった。

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