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優秀で自信のない子どもたち【前編】

熊本で勉強を教えない学習塾「はらっぱ探究室」を運営するトミマツシホです。このnoteでは、はらっぱ探究室の様子や私が日々「学び」について考えていることを書いていきます。

PISA2022ランキングが発表され大々的に報じられていますね。日本は3分野とも全て世界トップレベルに位置していて、日本の子どもたちは素晴らしく優秀なのだと感じ入っていたところです。

国立教育政策研究所が出しているレポートをもとに、私なりに読み解き、いくつかの私見とともにこれからどのような学びが必要なのかを考えてみました。(長くなったので2回に分けます)


そもそもPISAって?

義務教育修了段階の15歳の生徒が持っている知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを測ることを目的とした調査。読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野について、2000年以降、おおむね3年ごとに調査実施。各回で3分野のうちの1分野を順番に中心分野として重点的に調査。

国立教育政策研究所レポートより

社会経済文化的背景と平均得点

調査結果を見て一番に感じたのは義務教育段階での日本の公教育の水準はものすごく高いのだということです。この調査でなされた社会経済文化的背景とは以下の通り。

◆社会経済文化的背景(ESCS;Economic, Social and Cultural Status)PISA調査では、保護者の学歴や家庭の所有物に関する生徒質問調査の回答から「社会経済文化的背景」(ESCS)指標を作成。この値が大きいほど、社会経済文化的水準が高いとみなしている。ESCSの値の高低により生徒を4群に分け、3分野の得点との関係などを分析。

国立教育政策研究所レポートより

平たく言うと、子どもの成績(数学的リテラシー)と親の学歴や収入に関係があるかどうかの調査だと理解しています。この結果を見ると、日本の子どもたちはESCE水準が一番下の1/4の層の数学得点が国際的にみると高いこと。また、一番下の1/4の層と一番上の1/4の層との差がOECD平均よりも小さいことが分かります。つまり、日本は世界的にみると親の学歴や収入の差が子どもの成績の差に比較的繋がりにくいということです。どの子どもにもまんべんなく、しかも高いレベルでの教育が行き届いていることを意味しているのではないでしょうか。

レジリエントな国

次に着目したのは日本が「レジリエントな国」と認められた点です。

OECDは、①数学の成績、②教育におけるウェルビーイング、③教育の公平性の三つの側面について、2018年調査から2022年調査にかけての変化に着目し、その結果から「レジリエントな」国・地域を分析。
PISA2022に参加した81の国・地域のうち、この3つの側面全てにおいて安定又は向上が見られた国・地域は、日本、韓国、リトアニア、台湾のみであり、OECDは、これらの国・地域を「レジリエントな」国・地域としている。

国立教育政策研究所HPより

実は②の教育におけるウェルビーイングが安定的もしくは向上していることに少し驚きました。なぜなら私の想像していた教育を取り巻く環境というのは、不登校の数の増加、過熱する低年齢での受験、先生たちは疲弊し、子ども大人双方にとってつらいものというイメージだったからです。この調査結果から(個別具体の問題は山積しているけれども)全体として教育環境はよりよくなっており、今現在は子どもたちのウェルビーイングな環境が徐々に醸成されつつある過渡期にいるのだと考えを改めました。

実生活との結びつき

上の2項目は良いところに着目しましたが、逆に課題と思うところも2項目ありました。まず一つ目は実生活との結びつきです。

○日本の生徒は、OECD平均に比べて、実生活における課題を数学を使って解決する自信が低い。また、数学を実生活における事象と関連付けて学んだ経験が少ない。
○日本の数学の授業では、数学的思考力の育成のため、日常生活とからめた指導を行っている傾向がOECD平均に比べて低い。

国立教育政策研究所HPより

あーー。わかるーーー。そうだろうなーー。と思いました。私が20年近く前に受けた教育を思い返してみると、数学は主に抽象的な概念をなぞり、問題をひたすら解き、テストを受けるというようなものでした。この結果を見て、今も昔とあんまり変わっていないのかな。よく「学校の勉強は社会で何の役にも立たない」とかいう大人がいますが、学生の頃から実生活との結びつきを基に考える癖がついていればそんなこと言う人いなくなるんじゃないかなあ。
わたしは建築の仕事もやっているのですが、建築物を作るのはまさに数式の塊です。
ガウディの建築が美しいのはカテナリー曲線という数式で表される曲線を多用しているからで、物理的数学的にまさに理にかなった美しさなのです。とかなんとか数学の先生が教えてくれたら楽しいのになあ。


自信のない子どもたち


そして一番気になったのは、子どもたちの回答が「○○に自信はあるか」の設問はほとんどOECD平均より低くなっていることです。控え目なのかはたまた国民性なのか、どうやら自信がなさそう。興味関心はあるものについても、その能力について問うと自信がない。その根っこはどこにあるのかなぁ(かなり深そうな根かもしれない)。このことについて別の調査を引き合いに出しながらもう少し考えてみようと思います。

2につづく。

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