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ため息193:賢い漁師

漁師の精神

IT業界、セキュリティ関連企業経営者から聞いた話

漁師は釣れなければ狙う魚を変え、漁具を変え、場所を変える。いつまでも同じ所にじっとしていて、「魚がいないね」と嘆いているだけではだめだ。

自前の漁具をもたない漁師
たしか落語で、二匹目のドジョウをねらった長屋の八つぁんが、前日降った雨の水溜りで釣り糸をたれる話があった。仲間から釣りをしているときにいい話が来たのを聞いて、早速自分もいい思いをしようとする話であったかもしれない。

海の近くに住んでいた頃、土曜日に下見をして釣れているところを見つけると、翌日行ってみることがよくあった。結果はいつも期待はずれ。そこで、いつも道具を車に積んで下見にいき、釣れているところのとなりで仕掛ければ釣れるだろうと考えた。
ところが、実際に道具を積んで、生餌を準備すると、客観的になれなくなる。いろいろなポイントをまわって釣れているところで始めるという余裕がなくなる。いつでも始められる環境になったとき、見物人ではなくなる。プレーヤーとして、真っ先に自分が狙った場所で、店を広げてしまう。道具がなければ見物ができるが、道具があると見物ができない。
サラリーマンは、自前の漁具をもっていない漁師なのかもしれない。ツールが提供されていないときは、潮時を見たり下見したりする余裕がある。いったん漁具を手にすると、借りていられる時間目いっぱい使おうとする。網元もそれを期待しているだろ
う。

賢い漁師
賢い漁師がいた。漁具を支給され船頭になったが、思うような釣果がない。懐が浅い網元は、燃料を制限し、餌と仕掛けに注文をつける。網元から任されたが、燃料不足で漁師は自分の狙う漁場まで行くことができない、餌も仕掛けもミスマッチだ。海老で鯛を釣ることを期待されていないかのようだ。偶然、大物がかかったら今度は横展開しろという。

そこで、後任の漁師を網元に紹介してこの漁師は船を降りた。
漁具がなくなって初めて、漁師は漁場を見回し、潮を見ることができた。潮時を見た漁師は、再び漁具の調達を始めた。今度は、環境に加えて網元の技量に重点を置いて、漁具を調えることにした。話を聞きつけて、仲間が集まってくる。
漁師は釣れなければ狙う魚を変え、漁具を変え、場所を変える。いつまでも同じ所にじっとしていて、「魚がいないね」と嘆いているだけではだめなのである。

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