Amy (エイミーワインハウスドキュメント映画)

先日グラミー賞の授賞式がありました。
最優秀アルバム賞はケイシー・マスグレイヴスのGolden Hour。
早速Spotifyでチェックしてますが、こんなことが出来るんだから誰もCD買いませんよね。ストリーム再生でも利益が入るようになっていますから、こうやって聞くことで少しでもアーティストの足しになればと思います。
透き通った声と聞きやすい爽やかな楽曲という印象です。

ここ数年は誰が受賞したかも覚えておらず全然追えてませんが、今から15年くらい前熱心に追っていた時期がありました。

オルタナティブなアーティストが好きな僕はいわゆるセレブ系のアーティストが嫌いですが、受賞者の中にはきちんと骨のある音を鳴らすアーティストもいる。それに気づいてからは毛嫌いするのはもったいないかなと思ってチェックするようになりました。

「受賞アーティストなのでとりあえずアルバムレンタルして聞いてみるか」
不純な動機ではありますが、聞くようになったアーティストが何組かいます。
ロック系は受賞するような作品は大抵先に聞いていたので、主にポップス系が多いような気がします。

Avril Lavigne
Michell Branch
Norah Jones

このあたりはグラミーがきっかけで聞くようになったアーティストです。
もっとも個人的に当たりなのが、

Amy Winehouse

彼女の曲をカバーしても絶対にかっこよくはならない唯一無二の存在感。あの歌は彼女にしか歌えない。
彼女の受賞アルバム Back To Blackは本当に名盤です。
普段こういう音楽を聞かない僕にも十分とっつきやすいちょうどよいポップさ。ただようオルタナティブ感。音楽的成熟度の高さ。そしてあのオールディーな雰囲気、たまらない一枚です。

洋楽通の方はご存知の通り、彼女は2011年の7月に27歳の若さで亡くなっています。

その彼女の生き様を追ったドキュメントがこのAmyという作品。
こんなマニアックな作品まで取り扱ってくれるAmazonPrimeにまずは感謝。

■悲しいほど自分に正直
「リハビリには行きたくないわ」という曲がヒットした彼女。
ドラッグ・アルコール依存・拒食症に苦しんでいました。

彼女の音楽は聴いていましたが、それ以外の私生活に興味はなくどういう人物かは知りませんでした。歌詞から判断するに、破滅思考型の典型的なアーティストタイプなのかなと思っていましたが、ドキュメントを見た限りやはりそんな感じの人物です。

間違った人と恋に落ちた。
恋に落ちた相手が正しい方向に導くことができない人だった。
側から見ればそうですが、彼女にはあの薬物中毒の夫が最高の存在だった。仕方のないことでしょう。

カートコバーンの時と本当によく似ている。過剰な成功が繊細な人間を傷つける。
あの時もそうでしたが、周りの人は無力です。
弱さは誰にでもあり、それを超える強さを自分の中に築かない限り、必ず破滅します。

ドキュメントの中でもニュースキャスターやお笑いの人?が彼女をバカにし、断罪していますが、弱さ、繊細さの奥にある才能をリスペクトできない人はそういう反応しかできません。あの人たちは彼女の音楽を聴いてはいませんね。

僕個人としても生き方はリスペクトできませんが、作品や歌声は本当に最高です。
今回のドキュメントをみて痛々しいほど彼女の辛さ、弱さがわかりました。彼女は生きるということに成功しませんでしたが、唯一残した強烈な作品をこれからも聴いていこうと思いました。

■人は人を救えない
ドラッグはダメ、酒もダメ、タバコもダメ、全てやらない僕はそう思います。
僕は常にローなのでハイになっている人全般を危ない奴だと認識します。
中毒性のあるものは必ず人生を破滅に導きます。法律には触れてないけど明らかに失敗している人を多く見てきた。もちろん自分にもそういう一面がないわけじゃない。
やっている人は人の言うことなんか聞きゃあしない。それもよくわかっている。
だから誰にもアドバイスはしない。

実際病んでる人は多いし、もし可能なら力になってあげたいとも思う。
救ってあげたいと思う。
「あの人がこの本読んだらいいのに、あの映画見たらいいのに」
「この考え方ができたらあの人変われるのにな」
そう思うことが多いが、思いが届くことはない。届いても余計なお世話だと一蹴されるだけ。
自分で気づいて、自分で変わろうと心から思わないと人は変わらない。中毒はそれすら不可能にする。
その悲しさをこのドキュメントは突きつけてくる。

彼女の人生を美化するつもりもない。
ただし作品は本当に素晴らしい。何年聴いても飽きがこない。
文字通り命を削って創り上げた芸術作品。
それだけは言っておきたい。

「なんかオシャレな洋楽ない?」って聞かれたら必ずエイミー勧めてますよ。

ありがとうございます。有意義なことに使います。