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26年ぶりベスト8!「キセキの世代」が辿った軌跡/高校野球ハイライト特別編・甲西

主将の佐々木倖稀にエースの伊藤航太。リードオフの前出千弥に主砲の大野圭輔。いぶし銀の溝口太一にムードメイカーの渡邉洸明。2009年以来となる夏のシード権を獲得した甲西には、中学の軟式クラブチーム「甲賀セントラル」の出身選手が実に6人もいる。それも全員が3年生で、全員が1ケタ背番号。

ただ、中学で主将だった伊藤は「本当に誰も誘っていない。最初は高校で野球を続けるかも悩んだくらい」とさっぱりした表情で振り返る。1つ上にも1つ下にも同チームの出身はゼロ。熱い約束を交わした選手たちが同じ高校に集い、がむしゃらに甲子園を目指す…というマンガのような青春ストーリーではなかった。

それでも、偶然の再集結は良い流れを生んだ。「セントラルのメンバーが集まるらしい」との話を聞き、身体能力抜群の外野手・奥村竜也やリーダーシップが取れる捕手・内田貫太が甲西への入学を決意。本気で甲子園を狙う2人を加え、戦力と熱量が一気に増す。こうして私立にも見劣りしない、甲西高校野球部版「キセキの世代」が誕生したのだった。

最終学年となった今年の春は監督の異動をはじめ、大きな不安を乗り越えての県大会ベスト4。滋賀短期大学附属も彦根総合も逆転で破る戦いぶりだった。第4シードとして臨んだ夏は光泉カトリックを総力戦で撃破し、能登川にも逆転勝利。実に26年ぶりの滋賀大会ベスト8進出を決めた。私立相手の3勝も十分に誇れる成果だ。

「集まったのは偶然だけど、地元の高校で私立を倒そうと一生懸命やってきた。中学から仲の良いメンバーと強い絆を持って戦えるのは幸せだと思う」(佐々木倖稀主将)。甲子園ベスト4の「ミラクル」から38年を経て、何かに導かれるかのように甲西高校に集った選手たち。小さな「キセキ」がいま、少しずつ大きくなり始めている。

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