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アニサキスは何がしたいのか?【読みサバ】6尾目

サバ好きのみなさん、今日も元気に楽しくサバを食べていますか?!
もちろんボクも、「今日も元気だ、サバが旨い!」毎日を送っています。

しかし、過去に2度、そんなサバ愛を試されるような手酷い裏切りを経験したことがあります。

その名はアニー

そう、彼女(?)はサバの体内に棲む寄生虫、アニサキスなのです・・・。

※演出上、擬(女)人化していますが寄生虫は無性生物です。

折しも「サバを食べたら当たってしまい、検索でこの記事が出てきたので」読んでくださっているという方も、もしかしたらいるかもしれませんね。名前だけはわりと知られているアニサキス。このアニーがいるサバを生で食すと、アニーは人間の体内に移り、激しい腹痛を引き起こします。ボクも今までに2度ほどやられました。

人間の体内では生きられず、1週間もすると死んでしまうため自然に治癒すると言われています。実際、放っておいたら1週間で治りました。しかし、痛いものは痛い。できれば一生出逢わないでおきたかったよ、アニー・・・。個人差がありますので、こりゃダメだと思ったら病院で診てもらってください。

防ぐ方法はあります。アニーは一定温度でしか生きられないので、とにかく生では食べないこと。火を通す、冷凍する、そしてよく噛んで食べることです。60℃で1分以上加熱、-20℃以下で24時間以上冷凍で死滅します。恐れることはありません。

いや待てよ?
たしかサバを刺身で食べる食習慣がある地域もあったよね?と思った方、これはサバやしもよく聞かれるんですよね。
わりと知られているのは、福岡の郷土料理「ごまサバ」。他地域の人は「ゴマサバ」というサバの種類を指すと思いがちですが、「ごまだれで和えたサバの刺身」です。非常に美味です。

こんな食べ方がなぜ可能かというと、アニーには種類があって、主に日本海側のアニーは宿主が死んだ際、内臓から筋肉へ移動するものが少ないためだと言われています。ですから、その種類のアニーの生息域では、サバを刺身で食べる食文化が経験的に受け継がれてきたのでしょう(サバやし見解)。

具体的に言うと、こんな種類です。

●アニサキス シンプレックス(Anisakis simplex)
当たりやすい。太平洋側に多い。温度が上がって内臓から身に移動する個体は10%ぐらい。

●アニサキス ペグレフィ(Anisakis pegreffii)
当たりにくい。日本海側に多い。温度が上がって内臓から身に移動する個体は0.1%ぐらい。

(注意!)

従来日本海側には少ないと言われていたアニサキス シンプレックスについて、令和に入ってから行われた調査では、日本海のマサバに含まれていたアニサキスの筋肉内からは99.3%、内臓からは79.4%がシンプレックスが検出され(サバの99.3%にアニサキスがいたわけではありません)、従来と異なる調査結果となりました(アニサキス汚染実態調査及びリスク低減策の評価に関する研究 令和元年~3年)。

海はつながっており、魚の群れは移動します。温暖化の影響もあるかもしれません。基本はいるかもしれない、と考えることが重要です。

アニサキスの種類と食文化 太平洋側と日本海側
https://osakana.suisankai.or.jp/health_safe/4966

魚食普及推進センター

もうひとつ、たまに聞かれるのが「養殖サバにはアニーはいないのか?」ということ。これには、サバやし見解として「ほぼいないだろう。だから刺身でいただけますよ」とお答えしています。

(注意2!)

養殖魚はアニサキス食中毒が限りなくゼロに近いと言われることもありますが、天然種苗を太らせた養殖サバは天然同様注意が必要。ただ、人口種苗で陸上養殖のサバは100%問題なしです。
重要なのは①養殖される前の種苗(稚魚)、②エサ、③育つ場所の3つです。
アニサキスは食べたものから移ります。どのような餌を食べて大きくなったか、稚魚が天然か人工のどちらかだったかで確率が大きく変わります。

養殖魚にアニサキスは、いない?餌や種苗(稚魚)から考える!
https://bit.ly/3PVpjUo

魚食普及推進センター

さて、このように我々サバニストを翻弄し、時に戦慄させるアニーですが、ボクは常々思うのです。彼女(?)は一体、何がしたいのだろうか?と。

Wikipediaによると、「アニサキスの最終宿主は主にイルカやクジラなど海生哺乳類(種によって異なる)で、成虫はその腸管に棲息する。卵は排泄物とともに海中へ放出されて孵化し、オキアミなどの甲殻類に寄生して第3期幼虫まで発育する。食物連鎖上位の魚類やイカ(種によって異なる)を中間宿主とし、その内臓などでさらに成長する。中間宿主が最終宿主に捕食されると、その消化管から体内に侵入して成虫となる。」とあります。

そうか、アニーは本当はクジラやイルカの体の中へ行きたいのか!
それを人間に捕まり食べられたばっかりに・・・と思えば、なんだかこの小さな生き物が不憫というか、愛おしささえ感じられるような気がします(個人の見解です)。

ちなみにこのアニー嬢、サバを食べたことによる症例を比較的よく聞くので、なんとなくサバのイメージが大きいかもしれませんが、実はサバ限定ではないのです。目的はクジラやイルカの体の中へ行くことなので、要はクジラやイルカに捕食される魚種であればよいわけで、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカ、ニシン、ヒラメ、イナダなどにも寄生しています。
アニーの一生のサイクルから言うと、オキアミを食べる魚はすべて可能性があります。ご注意を!


だがしかし!ここで朗報です!!
先日のニュースはご覧になりましたか?

“刺し身の天敵”アニサキスを1億ワット瞬殺…世界初の機械 アジ切り身1日20万枚処理
https://www.youtube.com/watch?v=reeGJPOb6ws&t=1s

ANNnewsCH

電気の力でアニサキスを殺虫する技術とは、期待大ですね。熊本大学にはぜひ頑張っていただいて、アジ以外の魚(もちろんサバ)にも効果のある実用的な機械を開発していただきたい!と願うサバやしです。


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