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第249号(2023年12月25日) ウクライナ戦争とロシア軍の現状・見通し 国防省拡大幹部評議会報告を読む


【レビュー】2023年度ロシア国防省拡大幹部評議会開催

 12月19日、モスクワの国家防衛指令センター(NTsUO)で恒例のロシア国防省拡大幹部評議会が開催されました。ロシア軍の幹部を一同に集めて軍の現状や今後の方向性について大統領や国防大臣が演説を行う場であり、外部の我々にとっても普段得難い知見を得られる貴重な機会でもあります。
 今回は年内最後のメルマガということで、この国防省拡大幹部評議会におけるショイグ国防相の発言をレビューして一年の締めくくりとしましょう。

<ウクライナ作戦について>

作戦の進捗状況

・開戦前にルガンスク・ドネツク人民共和国が有していた領土の5倍に当たる面積を「解放」。その後の住民投票によってロシア連邦の面積は8万3000平方km以上、人口は500万人以上増加した。
・アゾフ海は内海となり、新たに海軍区(военно-морской район)が設けられた*。
*海軍区の定義ついては国防省の公式サイトを参照。要するに基地の運営・防衛などを行うための軍事行政単位ということのようである。
・ドンバスとの鉄道交通が再開された。クリミアとは1年以上前から鉄道と道路による交通が可能になっている。
・2014年以来、親族と分断されていた約300万人がロシアの「新たな領土」(強制併合したウクライナ四州を指す)に帰還した。
・キエフ政権(ロシア側は最近、ウクライナ政府をこのようにしか呼ばない)への軍事援助を表明している国は54カ国。このうち、実際に武器や軍用装備を提供しているのは15カ国である。
・ウクライナへの外国からの支援額は2030億ドル以上で同国の国内総生産(約300億ドル)をはるかに上回る。これらの援助の大部分は返済しないといけないので、ウクライナは破産したも同然である。
・ウクライナへの軍事援助は、戦車・歩兵戦闘車・装甲兵員輸送車計5220両、固定翼機28機、ヘリコプター87機、無人航空機2万3000機、火砲システム1300門(うち、M777、カエサル、パラディン、クラブで494門)であった。155mm砲弾及び122mm砲弾は100万発供給された。
・防空システム、長距離ミサイル、多連装ロケットシステムはNATOの軍人たちが直接操作している。我々はこれらのシステムによる攻撃が行われる際、アメリカ、ポーランド、英国の軍人たちの通信を傍受している。
・NATO諸国の軍事用・軍民両用宇宙機410機がウクライナ軍のために用いられている。
・6月4日、ウクライナ軍は外国軍の指導の下で大規模な反転攻勢に出たが失敗し、多大な損失を被った。損害の規模は、軍人の死傷者15万9000人、固定翼機121機、ヘリコプター23機、戦車766両(うちレオパルト37両)、その他装甲戦闘車両2348両(うちブラッドレー50両)であった。
・ロシア軍の侵攻以来、ウクライナ軍の損失の規模は、軍人の死傷者38万3000人、戦車・歩兵戦闘車・装甲兵員輸送車1万4000両、固定翼機553機、ヘリコプター259機、野戦火砲及び多連装ロケットシステム8500門に及んでいる。
・ウクライナはこれまでに9波の動員を実施し、現在は10回目が行われているところである。この際、兵役に適さない者まで動員されている。
・ウクライナ側の傭兵はほぼ排除された。1427人のポーランド人、466人の米国人、344人の英国人を含む5800人以上の過激派が殺害された。
・ウクライナで特別に残虐な行為を行なった戦争犯罪者103人が殺害された。

軍需生産能力の向上と軍事インフラの整備について

・最高司令官の命令により、軍の装備再編と軍人の社会保障のための前例のない措置が実施されている。
・軍の所要に応えるため、軍需産業の生産能力は4倍に増強され、24時間体制で操業している。
・2022年2月時点と比較して、戦車の生産は5.6倍、歩兵戦闘車は3.6倍、装甲兵員輸送車は3.5倍、無人航空機は16.8倍、砲弾は17.5倍となった。
・ウクライナ作戦の実施地域では部隊の任務に見合った量の弾薬が供給されている。
・最高司令官の命令によって調整センターが設置され、国家防衛発注(GOZ)の履行状況が管理されている。
・修理部隊・修理小部隊の生産性が1.5倍向上した。特に複雑な作業に対応するため、軍需産業の運営する修理工場が作戦地域内に270箇所以上設置された。これによって装備品の修理・稼働率は2.5倍以上改善された。
・最高司令官の決定に基づき、前線部隊の防護性を確保するために要塞線が建設された。
・2000km以上の戦闘接触線に沿って、7000kmの地雷原、150万個の対戦車障害物「ピラミッド」(いわゆる「龍の歯」)、2000kmの対戦車濠、1万2000kmの鉄筋構築物、3000箇所の小隊陣地、掩蔽壕*4万5000箇所、装備品用壕1万5000箇所が建設された。
*блиндаж: 研究社露和時点では「掩蔽壕」となっているがいまいち自信がないので正解をご存知の方はご教示いただきたい
・地雷原の縦深は最大600mであり、これは通常の基準の2倍である。
・軍の建設部隊、工兵部隊、鉄道部隊による途方もない共同作業が行われており、その82%は完了した。最高司令官の決定により、国営道路公社と連邦構成主体の民間専門家も関与した。

ウクライナ作戦の軍事的な特徴について

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